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飯喰う前に、世界を救え!  作者: 海土竜
33/34

バナナを喰らう

 ついに、五十鈴たちは、法皇クライの陣取る屋敷に乗り込む事となった!

 正面から!

 無策などではない。

 念密な作戦が練られたのだ、しかし……。


「俺が思うにだな……」


「えっ? なんだって? 五十鈴さん」


「いや、だーかーらー」


「肉は、おいしいのです!」


「なんだい、おかわりかい?」


「ここに敵がいるとしてだな……」


「それは、すづが食べるのです!」


「すづ! それは俺の皿だ!」


「こっちの肉を食べればいいじゃないか」


「肉が無ければ、皿を食べればいいのです」


「皿など喰えん……すづ、皿は食うんじゃない!」


 飯を食うテーブルの直ぐ側で、巨大牛とのバトルが繰り広げられる店で、まともに会話する事も出来ず、結局正面から突撃する事になったのだった。


「みんな、準備はいいか! どんな強敵が待ち構えているか分からん、気を引き締めて行くぞ!」


「はい!」


 クリスティーナも屋敷を取り戻すとあって、気合十分だな。しかし、何てデカい屋敷なんだ、まるで城、いや、城塞都市! これを取り戻すとなると、何日かかるか分からんが、逆にこれだけ広いと入ってしまえば、見つからずに行動できるかもしれんな……。


「すづは、焼き飯からいくのです!」


「それは長期戦に備えての兵糧だ、行き成り食ってどうする」


「腹が減っては戦は出来ぬなのです」


 ――ピンポーン。


「今のは、なんの音だ?」


「はい、屋敷に入るので、呼び鈴を押しましたが?……」


「これは、まずいぞ……。おのれ、世間知らずのお嬢様め!」


「何者だ貴様ら!」


 五十鈴たちは、押し寄せた衛兵に囲まれいきなりピンチになった!

 ここは、うまくごまかして仕切り直さねば。


「私は、クリスティーナです。この屋敷を取り戻しに来ました」


 もう、言い逃れ出来ねえ!


「すづは、卵焼きに取り掛かるのです!」


「何、焼くだと? ええーい、怪しい奴らめ、捕らえろ!」


 こうなったら、やるしかない!

 五十鈴は腹を決めると、押し寄せる衛兵の前に立ちはだかった。


「どっせーい!」


 だが、五十鈴が拳を振り上げる前に、巨大な拳の一振りで数十人の衛兵が宙に弾き飛ばされる!


「お前は、ひろねぇ!」


 さらに襲い掛かる衛兵に、今度は真黒い墨が襲い掛かる!


「目が、目が見えねぇ!」


「一筆奏上……、五十鈴さん、ここはまかしてもらおうか」


「五十鈴さん、あんたは先に行くべきよ」


「一筆に、盗賊の摩姫まで、……お前ら……、恩に着るぞ、死ぬなよ!」


 五十鈴は、心強い助っ人たちに背を向けて走り出す。

 一度は敵として戦った、彼らの熱い期待を背負い、言葉では語りつくせないほどの信頼と絆の力によって、走り出したのだ!

 もう、彼を止められるものは、どこにもいない!


「ふっふ……、あんなこと言っちゃって……先に進む方が大変なのにね」


「ああ、だが、五十鈴さんには、すづちゃんもついてるしな」


「うむ、あの娘は、うちの牧場にもほしい逸材だ」


「…………五十鈴さん、死ぬなよ」


 ついに、世界の命運をかけた戦いが始まろうとしていた!

 そして、屋敷の廊下を走り抜ける五十鈴たちの前に立ちはだかるのは、バナナだ!

 それも一本ではない!

 一房のバナナが廊下に落ちていたのだ!


「バナナだと?……なぜ、廊下にバナナが……、まさか、罠か!」


「もしゃもしゃ、バナナおいしいのです」


「すづ、拾い食いするんじゃない!」


「あのバナナは、泥棒用の罠です! この屋敷には、数々の盗難防止用の罠が仕掛けられているのですが、あの罠は……」


 ――ゴゴゴゴゴゴ。


 なんだこの音は、まさか……。


「すづ、逃げろ! 釣り天上だー!」


「もしゃ、もしゃ……」


 のんきにバナナを食べるすづの頭上に、石の天井が迫る!


「すーづーー!」


 五十鈴の叫びも虚しく、彼らの目の前ですづは、釣り天上の下敷きになってぺしゃんこになった。

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