バナナを喰らう
ついに、五十鈴たちは、法皇クライの陣取る屋敷に乗り込む事となった!
正面から!
無策などではない。
念密な作戦が練られたのだ、しかし……。
「俺が思うにだな……」
「えっ? なんだって? 五十鈴さん」
「いや、だーかーらー」
「肉は、おいしいのです!」
「なんだい、おかわりかい?」
「ここに敵がいるとしてだな……」
「それは、すづが食べるのです!」
「すづ! それは俺の皿だ!」
「こっちの肉を食べればいいじゃないか」
「肉が無ければ、皿を食べればいいのです」
「皿など喰えん……すづ、皿は食うんじゃない!」
飯を食うテーブルの直ぐ側で、巨大牛とのバトルが繰り広げられる店で、まともに会話する事も出来ず、結局正面から突撃する事になったのだった。
「みんな、準備はいいか! どんな強敵が待ち構えているか分からん、気を引き締めて行くぞ!」
「はい!」
クリスティーナも屋敷を取り戻すとあって、気合十分だな。しかし、何てデカい屋敷なんだ、まるで城、いや、城塞都市! これを取り戻すとなると、何日かかるか分からんが、逆にこれだけ広いと入ってしまえば、見つからずに行動できるかもしれんな……。
「すづは、焼き飯からいくのです!」
「それは長期戦に備えての兵糧だ、行き成り食ってどうする」
「腹が減っては戦は出来ぬなのです」
――ピンポーン。
「今のは、なんの音だ?」
「はい、屋敷に入るので、呼び鈴を押しましたが?……」
「これは、まずいぞ……。おのれ、世間知らずのお嬢様め!」
「何者だ貴様ら!」
五十鈴たちは、押し寄せた衛兵に囲まれいきなりピンチになった!
ここは、うまくごまかして仕切り直さねば。
「私は、クリスティーナです。この屋敷を取り戻しに来ました」
もう、言い逃れ出来ねえ!
「すづは、卵焼きに取り掛かるのです!」
「何、焼くだと? ええーい、怪しい奴らめ、捕らえろ!」
こうなったら、やるしかない!
五十鈴は腹を決めると、押し寄せる衛兵の前に立ちはだかった。
「どっせーい!」
だが、五十鈴が拳を振り上げる前に、巨大な拳の一振りで数十人の衛兵が宙に弾き飛ばされる!
「お前は、ひろねぇ!」
さらに襲い掛かる衛兵に、今度は真黒い墨が襲い掛かる!
「目が、目が見えねぇ!」
「一筆奏上……、五十鈴さん、ここはまかしてもらおうか」
「五十鈴さん、あんたは先に行くべきよ」
「一筆に、盗賊の摩姫まで、……お前ら……、恩に着るぞ、死ぬなよ!」
五十鈴は、心強い助っ人たちに背を向けて走り出す。
一度は敵として戦った、彼らの熱い期待を背負い、言葉では語りつくせないほどの信頼と絆の力によって、走り出したのだ!
もう、彼を止められるものは、どこにもいない!
「ふっふ……、あんなこと言っちゃって……先に進む方が大変なのにね」
「ああ、だが、五十鈴さんには、すづちゃんもついてるしな」
「うむ、あの娘は、うちの牧場にもほしい逸材だ」
「…………五十鈴さん、死ぬなよ」
ついに、世界の命運をかけた戦いが始まろうとしていた!
そして、屋敷の廊下を走り抜ける五十鈴たちの前に立ちはだかるのは、バナナだ!
それも一本ではない!
一房のバナナが廊下に落ちていたのだ!
「バナナだと?……なぜ、廊下にバナナが……、まさか、罠か!」
「もしゃもしゃ、バナナおいしいのです」
「すづ、拾い食いするんじゃない!」
「あのバナナは、泥棒用の罠です! この屋敷には、数々の盗難防止用の罠が仕掛けられているのですが、あの罠は……」
――ゴゴゴゴゴゴ。
なんだこの音は、まさか……。
「すづ、逃げろ! 釣り天上だー!」
「もしゃ、もしゃ……」
のんきにバナナを食べるすづの頭上に、石の天井が迫る!
「すーづーー!」
五十鈴の叫びも虚しく、彼らの目の前ですづは、釣り天上の下敷きになってぺしゃんこになった。




