恋人になりました!
なせが、斎藤さんが私を食事に誘ってくれた。
どうしよう、突然だったのでどんな顔でどんな風にしたらいいのか分からなくなってしまいました。
心臓がバクバク言っている。
昼間あんなにイケメンに囲まれていて何とも思ってなかったのにも関わらず、斎藤さんに限っては例外なようでドキドキ・バクバクが酷く死にそうです。
「佐藤は何が好みだ」
「わ、私は何でも食べます。斎藤さんがお好きな物で」
「そうか、ならば和食でもいいか?」
「はい」
お食事も進み、お酒も戴いたせいもあり少し大胆になっていたのかもしれません。
「斎藤さん、どうして今日誘ってくださったんですか?二人きりって初めてですよね」
「ああ。その、一度、佐藤とは話をしてみたかったからだ」
「私と?」
「ああ、佐藤の周りはいつも誰かが居るだろ。なかなかゆっくり話す機会がなかったからな」
「そうですか?確かに、沖田さんとか暇があるとちょっかい出してきますもんね」
「なっ、総司に何かされたのか!」
「えっ、いや、何もされてません。彼は口が達者なので」
「そうか、ならいいのだ」
「あのっ、斎藤さんは彼女いらっしゃるんですか?」
「いや、いない」
「じゃあ、この際だから本当の事、言いますね!」
「・・・!?」
「私、今日つい”一さん”って言ってしまったんですけどワザとじゃないんです。
いつも心の中だけで想っていたのに、今日に限って口に出てしまっていて。その・・斎藤さんの名前が好きなんです」
「な、そ、そうか。名前が好き、か・・・」
「もっと凄い事、言ってもいい、ですか?」
あーもう、ドキドキしすぎて頭がおかしくなってきた。
どうぜ砕けるなら早い方がいい!そう脳が指令を出している。
「な、なんだ」
「私・・・」
「・・・」
「斎藤一さんが、好きですっ!」
そういって、俯きギュッと目を瞑った。だって、やっぱり怖かったから。
「・・・・」
沈黙が痛い、痛すぎる・・・
「すみません、さっきのはナシでいいです。ごめんなさい!」
「っ// 佐藤っ!」
「は、はいっ!」
恐る恐る顔を上げて斎藤さんを見る。
「今の言葉、修正は受け付けん」
「え?」
「先ほど、俺の事を好きだと、そう言ったな?」
「は、い」
「それを無しにする方向の言葉は一切受け付けない。そういう意味だ」
「!?」
「もしや酒の勢いだけで言ったのか?」
「ち、違います。いや多少はありますけど、お酒の力を借りないと怖くて言えなかったんです」
「怖い?」
「だって、断られたら誰だって悲しいでしょ?大好きな人に好きを伝えるって、すごく勇気がいるっ」
「俺も、佐藤が好きだ」
「へ?・・・うそぉぉ!」
「くっ、俺は嘘は一切つかないっ。佐藤の事をずっと見ていた。屈託のない笑顔、要領の良さ、周りからの信頼、天然な思考回路、すべて目が離せなかった」
ちょっ、最後の天然な思考回路って・・・何かの聞き間違いですかね?
「信じられません。私、片思いだって思っていたから」
「初めてだ」
「はい?」
「初めて通関業務のルールを曲げた」
「あ・・・」
(書類上とくに気になるものは見当たらなかった故、このまま通しておく)
「こんな事は初めてなのだ。俺とて驚いている」
「そ、そうなんですね。すみません」
「ああ、故にあんたに責任を取ってもらいたい」
「せ、責任っ!と、申しますと?」
「俺の、俺の彼女になってくれないか」
「!?」
「嫌、か?」
「嫌なわけないです!だって、先に告白したの私ですよ?嬉しいに決まってるじゃないですか」
「そうか」
そう言って、斎藤さんは目を細めて柔らかくほほ笑んだ
その笑顔に私は釘付けになっていた。
こんな表情するんだぁ。
私たちは彼氏、彼女になりました。
「その・・・」
「はい」
「名前で呼んでもらって構わない」
「え?」
「会社以外では俺の事は名前で呼んでくれ」
「はい! じゃぁ、会社以外では私の事も名前で呼んでくださいね」
「っ、わ、分かった」
「練習です!呼んでみてください」
「・・・碧依」
「はい、一さん」
今日一番の赤面ぐあいです。あなたの事が大好きです!
一さんは、そっと私の手を取って駅までの道のりを歩いていく。
照れ屋なのにそういう所は自然にしてしまうんですね。
こっちが照れてしまいます。
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なぜか遠巻きから見ている二人。
「なあ、総司。斎藤に持っていかれちまったな」
「左之さん見た?一くんの顔」
「あいつら聞いたら嘆くぞ」
「何気に土方さんも気に入ってたしね」
「ま、俺らは見守ってやらなくちゃな」
「仕方がないなぁ、今回は引いてあげるよ」
次の日、
気のせいかな?土方部長がジロジロ見てくる。
しかも、なぜか私の席の隣に立ってる。
「なにか?」
「あ?なんでもねえよ」
えっ、何? あの土方部長がニヤニヤしてる!
ニヤニヤしててもカッコいいんだな、これが。
たぶん彼が会社一のイケメンだろう。
「なあ、佐藤」
「はい」
「お前、男できただろ」
「なっ、なんですとぉ!」
驚いてガバッと席を立ってしまった。
一斉に皆ががこちらを見る。
また、静かに無言で座った。
「な、なんですか急にっ!」
「いや、顔に書いてあったからな」
「ええっ!!」
「くくくっ、おまえ面白いな」
この人、面白がってる。
誰から聞いた?見られたのか?
もうっ!
静かに見守って下さい!
おしまい
ありがとうございました。
これに懲りず、次回作も温かい目で見ていただけましたら大変たすかります。