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目の前の男が言うには、私は使徒になるらしい  作者: 湯ノ宮 春
第一章『本の迷宮喫茶』

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27/28

27話『森の奥に佇む店"本の迷宮喫茶"』

 

 アルヴェリア王国、首都の郊外に広い森が広がっている。

 

 その森の奥に、その店はあった。

 

 森の入口にひっそりと置かれた看板。

 

 そこから続く整備された小道を歩くと、見えてくる。

 

 ──本の迷宮喫茶へようこそ。

 

 店の前には、そんなしゃれた看板。

 

「open」と書かれた洒落たプレートが下がる扉を開けると、穏やかな音楽が聞こえてきた。

 

 そして――視界に飛び込んできたのは、本。

 

 どこを見渡しても、本、本、本。

 

 壁に置かれた本棚にはびっしりと本が並び、通行を妨げない絶妙な配置で椅子やテーブルが置かれている。

 

 天井には、不思議な板が張りめぐらされていた。

 

 そこは、ここの住人たる紅大山猫たちの通り道。

 

 運が良ければ、店へと入った客を一瞥もしない自由気ままな猫たちを、真下から覗くことができるだろう。

 

 ――いらっしゃいませ。

 

 そんな出迎えの声はない。

 

 今日の店主は不在のようだ。

 

 店主がいつも座っているカウンターキッチンに、若い女性店主の姿はない。

 

 おっとりした美人店主は、その外見に似合わず面倒くさがり屋。

 

 高額な無人販売機を導入し、高度な防犯魔法や、結界魔法を維持しているというのに、そのすべては……自分が楽をするため。

 

 技術の無駄遣いと呆れた客は、果たしてどれだけいるだろう。

 

 週に数日、しかも日の高い時間しか店番をしない店主は、運が良ければ初来店時に。

 

 運がなければ、数か月して……やっと対面できる。

 

 しかし、訪れる客は誰も困らない。

 

 常連たちは慣れたように無人販売機から魔法カギを購入し、初めて訪れた客は入口の目の前に堂々と置かれた案内板を見て、店の使い方を知る。

 

 二階へと上がると、そこは迷宮だ。

 

 塔のように上へ上へと続く壁に本がぎっしりと詰め込まれ、本棚の役目を果たす壁に沿うように螺旋階段がある。

 

 時折、螺旋階段の横に入れる部屋があり、そこにはゆったりと本を読むことができる空間が広がっていた。

 

 出迎えるもののいない、本にあふれた不思議な店。

 

 静かで居心地のいい店は、今日も静かに客を待ち続ける。

 

 

 

 ──第一章[完]──

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【第一章完結済み作品】
最愛の妻と創る癒しの迷宮〜一度失った君とこの世界で過ごす永遠の時
一度は死に別れた妻と、もう一度生きる奇跡を得た夫。
今度こそ離れないと誓う。
永遠に続く、二人で過ごす夫婦の第二の人生。
(異世界転生・恋愛・夫婦愛・ほのぼのシリアス )

目の前の男が言うには、私は使徒になるらしい
強大な力を持つ使徒になっても、優美が望むのは、もふもふな家族たちと過ごす穏やかな毎日。
(異世界転移系ファンタジー・もふもふ・ほのぼの全27話)


【連載中作品】
聖騎士皇子は今日も、婚約者を甘やかす〜断罪イベント?いえいえ、ただの溺愛イベントです〜
「ルナ、口を開けて?」
始まった断罪をよそに、繰り広げられるあーん。
婚約者にだけ甘い皇子のとろける溺愛劇。
(甘々溺愛系恋愛ファンタジー・悪役令嬢・断罪……?・全六話)
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