17
ジェームスとメラニーの婚約は無事に解消された。
公爵家には伯爵夫妻だけが向かい、謝罪をしたそうだ。
慰謝料の提示もしたのだが、公爵家からは丁重に断わられたという。
「公爵家も十分に調査をしないで婚約の打診をしたから、と言われてな。
顔から火が出るかと思ったよ」
「そうよ、調査したらメラニーは選ばなかったと言われたようなものだもの。
本当に恥ずかしかったわ」
両親はぐったりした様子でルイスとケイトにそう語った。
当のメラニーは自分の部屋で軟禁状態だが、癇癪を起して暴れまわっているらしい。
「今更だが、学園の噂も聞いたよ、何を間違えてしまったんだろうな」
「ええ、病院へも複数の令息たちがお見舞いをもってきていたそうだし、他の入院患者から少しづつ噂が広まっているみたいね」
両親がそう言った時、ケイトは自分の責任だと思った。
「ごめんなさい、私が甘やかしたからだわ。
メラニーが助けてって言うと、私は何も考えずにメラニーの為になんでもしてしまって・・・。
仮病で入院するように仕向けたのも私なの。
本当にごめんなさい」
「まあ、甘やかしたお前も多少悪いだろうが、そもそもメラニー自身の持って生まれた性格だろう」
「ルイスはメラニーの噂を知っていたの?」
「いや、学年も違うし、あまり聞いたことはなかったな。
でも、昔からあいつはケイトを上手に使って自分をよく見せていたのは知ってたよ」
「へ?」
「お前は全然気がついてなかったみたいだがな」
兄はそう言ってケイトの頭をなでた。
兄によれば、メラニーはケイトに甘えて見せ、自分がより良いものを選べるようにしていたという。
「そんな」
「まあ、本当にお前に甘えていたんだろうな、始めは。
お前がなんでもメラニーの思うとおりにしてくれるから増長していったんだと思うよ、俺は」
可愛らしくお姉さまと慕ってくれているとばかり思っていたが、『お姉さまって本当に単純で扱いやすいわ~』これが今の本音なのだろうと思うと、ケイトは心がどんよりしてしまった。
メラニーはこのまま学園を退学し、隣国にある女子専用の学園に通わせることになった。
何かしら問題のある貴族の令嬢が完全寮生活で過ごすのだという。
使用人の帯同も許されていないため、メラニーはすべてを自分でしなければならない。
今は別邸に移動させられ、自分の身の回りを一人でできるように訓練を受けている。
自分の部屋の掃除、着替え、湯あみも一人でやらなければならないのは、甘やかされたメラニーにとってつらい生活であった。
「お姉さま、助けて」
見張りの目を盗んできたのか、ケイトが学園から戻った直後にメラニーが飛びついてきた。
「私、隣国なんて行きたくないの、ねえお願い、お姉さま、行かなくていいように何とかして」
いつものようにそう言えば、きっとケイトは助けてくれる、メラニーはそう思っていたが、
「メラニー、私はもう助けてあげられないわ」
ケイトはそう言ってメラニーを探しに来た使用人に引き渡した。
「お姉さま・・・・」
使用人に連れられていくメラニーを見ることもなく、ケイトはその場を後にした。
ケイトに拒絶されたメラニーはすっかり勢いを無くし、隣国へ出立する日までおとなしく過ごしていたようだった。
出発の日、両親は学園までメラニーを送るために先に馬車へと乗り込んでいた。
同じように馬車に乗ろうとしたメラニーは、ルイスとケイトがいることに驚いた。
「お兄様、お姉さま」
「メラニー、頑張れよ」
ルイスはそう言ってメラニーの肩を優しくたたいた。
「メラニー・・・」
「お姉さま」
「元気でね」
「はい、お姉さまも」
「うん、手紙、書いて」
ケイトの思いがけない言葉にメラニーは目を見張った。
「いいの?」
「もちろん、待ってるから」
そう言ってケイトはいつものように優しくメラニーを抱きしめた。
「時間だよ」
馬車の中から父が声をかけた。
それを合図にメラニーは馬車に乗り込むと、涙を拭き、笑顔で手を振った。
「いってきます」 と。
ここでひとまず完結です。
この後後日談など書く予定です。




