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第一話 好き嫌いはいけません

 今日の朝食はスクランブルエッグトースト。

 オーブンでこんがり焼いた食パンの上に、とろ〜り半熟の卵炒めが乗っかっている。卵にはバターと生クリームも混ぜていて、口にとろける濃厚なコクに、塩加減も絶妙だ。

 黒野くろの家の四つ子はちゃぶ台を囲んでふにゃ〜と恍惚の表情を浮かべる。

 庶民的な家庭料理も、長男のベリーの手にかかれば高級ホテルの朝食へ一丁上がり。

 今もエプロン姿でリビング内を慌ただしそうに歩き回っている。


「ラム! 少しでもいいからご飯食べていきなさい!」


「今日は朝一番に旧校舎の理科室使うから………」


「じゃあパンだけでも咥えていきなさい!」


「少女漫画みたい…………はむっ」


「ベリーにい〜! 俺のジャージどこぉ〜!?」


「ソファに置いてます! お兄ちゃんの分も持っていってあげなさい!」


「あ〜い! フウちゃんジャージあった〜!」


「おい、俺のアームカバーどこいった」


「シワがついてたんで昨日の夜にアイロンかけておいたんですよ。ほら、ここに。………あっ、バニラ! 腕章忘れてますよ!」


「お兄ちゃ〜ん、新しいクレジットカードの番号教えて〜」


「ええっと、六………ってミントッ!! 僕のカードで勝手に買い物するんじゃありませぇんッ!! あー危なかったっ」


 長男こと我が家の母は今日も母性に溢れているなぁ、と呑気にトーストに食らいついていると、素早い足音はこちらに迫り来た。


「アイスケ!! サラダ食べてないじゃないですか!!」


「ちっ………バレたか」


 こっそり冷蔵庫の奥に封印したはずなのに。


「好き嫌いはいけませんっ!」


 どんっ! と緑の山の小皿を目の前に置かれた。


「うっ」


 見るだけで、もう口が苦々しく歪んでしまう。


 アイスケは目をウルウルさせ、ちょこんと人差し指を唇に当て、ピンクパンダのジャージを捲って胸元のつるぺた素肌をチラリ。


「にいたん………たべたくないよぉ………」


「ぶりっこしてもダメですっ! 野菜は食生活の中でも必要不可欠ですから!!」


 厄介にも、自慢のぶりっこも兄弟にはある程度の耐性がついてるのだ。

 隣で鼻血を噴き出した四つ子の中のブラコン兄、ユウキを除いて。


「う〜っ、ただでさえ苦いのに生野菜とか罰ゲームじゃん! 修行僧じゃん!」


「誰でも食べますっ! ドレッシングかけてるでしょ!」


「餃子味のドレッシングじゃなきゃやだ」


「そんなもの存在しません! ほらっ、ワガママ言ってないで食べるっ! ディアボロスの名が泣きますよ!」


「それ決めゼリフにすんのやめようぜ!? 俺人界育ちだしっ!」


 結局ベリーの押しに負けて、アイスケはしぶしぶ千切れたレタスを口に入れた。

 苦い。胡麻のドレッシングの甘味に包まれても、すぐに独特な苦味と渋味が口の中で殴り合う。


「はい、いい子ですね〜」


 にっこりと満悦そうに微笑む我が家の母にちゅ、とキスをされ、アイスケは飴と鞭を食らった何ともむず痒い気持ちになった。


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