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マキナ習得①

 異世界の勇者。

 魔王化。

 つい最近、私の村にも勇者と魔王が誕生している。

 勇者と魔王のバーゲンセールとか勘弁してほしい。

 面倒ごとは勘弁だけど、此奴には訊かなくちゃいけないことがある。

 異世界マーシナリーがどうなったのか。

 私が初リンクした時、確かに聞こえた救済の声。

 森を一撃で沈めた優男と変態を見れば容易にある結論へ至る。


「異世界マーシナリーはアンタ達に滅ぼされたの?」


 ヘラヘラと笑みを浮かべていた変態の顔が一瞬だけ硬直する。

 異世界マーシナリーの名を知る私を不穏分子として見なしたのだろう。


「貴方、何処でその名を?」

「知りたければ私を問い詰めるしかないわね」


 馬鹿正直にマーシナリーの情報を聞き出そうとしても無駄に終わりそう。

 だったら、マキナの力を引き出させるのみ。

 戦闘を通してマキナの習得できればいい話だ。

 そうすれば、HEROの力でマーシナリーと本格的に繋がることができる。


 私の言葉に対して先程あった軽口はない。

 ただ静かに音も無く、空中へと飛翔する。

 その間にサクラが情報を伝えてくれる。

 

「敵の推定レベルは700。勝敗としては五分五分だと判断します」

「私のレベルは200なんだけどね」

「戦闘経験と他世界の力を利用した場合の試算値です」

「それだったら訂正してほしいな」

「訂正ですか?」

「マキナでこの変態を倒す!」

「また馬鹿なことを言っているのですが……。まだ、マキナは習得中でしょう?」

「わ、私は本気だよ?」

「五日も修行して、活路を開いたのはミャン様のみ。私の主人は(笑)です」

「もっと詳細に非難してよ! (笑)……とか雑過ぎるでしょ!」

「何はともあれ勝算ありなら別に構いません。具体的な方法を提示して下さい」

「相手の攻撃を受けて覚える!」


 心底、呆れた様子のサクラ。

 ライフで受けるわけではない。


「上手くガードしつつ、感じ取るしかないかなってね」

「了解しました。私はサポートするのみです」


 空中で静止する相手を見据える。

 破壊した機械兵の残骸がふわりと浮かび、変態へと急速に集まっていく。

 全身を覆う様に鈍色の塊達。


「フハハハッ! さあ、私の真の姿で殺してあげる!」


 まるで何とかライダーシリーズみたいな感じね。

 独特なのが棘にも似た刃が関節部分に装着されていること。

 勇者の仲間でありながら、世界に仇名す存在。

 ダークヒーローってところかな?

 あの優男が本当に勇者であればの話だけど……。


「行くわよ! わたくすぃ、突貫!」


 来た。

 頭から私へと急降下してくる重武装変態。

 その初手は左手から繰り出される平手打ち。

 ビンタだ。

 しかも妙に艶めかしい動きで気持ち悪い。

 それを高速の右左右の三連打で軌道を変える。

 高速の突貫とレベル差から生み出される一撃。

 最初から連撃を用いて渡り合うと決めていた。


 滑空攻撃をうまく迎撃したことにより、地に右手をつきバランスを崩す変態。

 何故か乙女座りの状態へと移行する。

 誰もがチャンスと思う場面だが、本能がそれを拒否する。


 座る動作が余りにも自然過ぎたからだ。

 何かへと繋がる動作。


 左手が自然と此方の喉元を突く動きで伸びてくる。

 躱す。

 乙女座りをしていた右脚が不意に伸ばされ、足元を払う動きに変化する。

 躱す。

 足払いの動きで遠心力を得ながら、各関節に付けられた刃を叩きつけてくる。

 躱す。


 遠心力の回転を利用し、自然と立ち上がりの姿勢に入る変態。

 踊りの中に攻撃を混ぜ込んだ動き。

 読みづらく厄介だ。

 地球にも踊りと格闘を混ぜたカポエイラとかいう技があったような気がする。


「踊りを主体とする攻撃ってわけね」

「そうよ。わたすぃと踊り狂いながら、貴方は息絶えるのよ」

 

 防戦一方で変態の攻撃を受けていたら、お互いに踊ってる様に見えるだろう。

 踊りだけではない。

 一番に気をつけるべきは、あの機械装甲だ。

 十中八九、先程と同様にブースト機能が付与されているよね。

 しかも足裏だけでなく全身を警戒した方がよさそうだ。

 踊りの動作中にある回転や踏み出しの一歩などにブーストによる加速が加わる。

 攻撃は無軌道、加速もあって、力も遥かに敵の方が上。


「右拳は大丈夫ですか?」

「オーラでガードしつつだったけど、正直痺れてるよね」


 三連撃の初撃は右ジャブから入った。

 その衝撃が思ったより凄まじく、痺れから右拳の感覚が鈍い。

 けれど、マキナを纏った装甲に何度か触れる事が出来た。

 私はミャン錬金術師作成のネジをポケットから取り出す。

 試作品を幾つか貰っていたのだ。

 不慣れなマキナを使い、ネジに力を流し込むと微かな回転が生まれる。


「機械系に力を流すコツは何となく掴めてきたかもね」


 機械の構築は駄目そうだが、出来合いのモノを強化することは可能っぽい。

 なら試してみるか。

 ミャン、貴方の努力をここで使わせて貰うよ。

 たった一つのネジにマキナの力を全力で注ぐ。

 同時に私から放出される銀色の陽炎。

 装甲により素顔は見えないが、明らかに変態の声には驚きが宿っていた。


「どうやら特殊なスキル持ちのようね……」

「それはお互い様でしょ? 油断していると凶弾に撃たれるわよ」

「凶弾?」


 マキナによって高速回転状態となったネジ。

 それをオーラで強化した指先で摘まみ弾丸を撃つ要領で親指を強く弾いた。


 肉体強化を得意とする"オーラ"と機械系を強化する"マキナ"。

 二つのベースによって生み出された簡易貫通弾。

 感覚的に先の機械兵10体を容易に貫く程の威力だ。

 まずは小手調べ。

 どうでるの、異世界の使者!


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