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偵察者:リン子の視点

 緑の鱗が美しい肉を齧る。

 リザードマンの尻尾をワイルドに食す私、美しいわね。

 王宮で出される小綺麗な料理も良いけど、野性味溢れる生肉もいいものだ。

 

「コボルト達には手を、だ、すな」


 尻尾を失い傷だらけのリザードマンが懇願する。

 周囲には仲間の豚も四体。

 抵抗虚しく五匹とも確保された状態だ。

 ゴブリンを逃がそうと企てていたところをゲッチュしたのよね。


 人質にした数十匹のゴブリンを見る。

 創造した機械兵に見張らせているが何もできないでしょう。

 さて、面白いショーでも始めようかしら。

 機械兵にゴブリンの子供を数匹連れてこさせる。

 子供達の目の前には、救援に駆けつけた四匹のオーク。


「さて、豚ちゃんの皆さん。食事の時間よ」

「何を言っている?」

「目の前の子供達を食べろと言ってるのよ」

「ふざけるな! その様なこと出来る筈がないだろう!」


 大きな声で私に逆らうなんて耳障りな豚ね。

 機械兵の一体に指示を出す。

 赤い一つ目に光が灯り、躊躇することなく牙を剥いたオークの首をへし折った。

 瞬時に骸と化した仲間を青褪めた表情で見る豚達。


「さて、もう一度言うわね。わたすぃが用意したご馳走を食べなさいな」


 ゴクリと大きく息を呑む音が聞こえる。

 一人の豚がガクリと頭を垂れ、リーダーであろうリザードマンに言葉を漏らす。


「すみません、ガイルさん……」

「……誰もお前を責めはしない。どんな選択をしたとしてもだ」

「先に逝くことをお許し下さい」


 敵には従わない、か。

 醜い姿の割に志は立派なモノがあるじゃない。

 オークは自身の武器を掲げて、自滅覚悟の突貫を選んだ。

 今日は大量の豚丼が食べられそうね。


「機械兵達、凄惨に殺してあげなさい」


 七体の機械兵が豚を串刺しにしようと襲い掛かる。

 終わりね、そう思った時だった。

 消えたのだ。

 豚もトカゲもゴブリンも、全て元の場所から消え去った。


「不思議なことがあるものね~」


 私の背後に沢山の気配がある。

 消えた筈の魔物達と強者の気配。


「念の為、ソフィアに転移ナイフを一組貰っておいて正解だったみたいね」


 背後を振り向けば、二本のナイフを曲芸のように回転させる女が一人。

 私には分かる。

 マキナではないが、特殊な力が込められたナイフだ。

 転移という言葉からもそれを利用して大勢を離脱させたのでしょう。

 けれど、遠方に離脱させることは不可能だったみたいね。

 

「リルア殿! かたじけない、本来であれば拙僧が……」

「気にしなくていいよ。ガイル達は一生懸命戦ったんだしね」

「貴方、何者かしら?」

 

 話に割り込んで何者かと問い質す。

 アスガルド王に取り入る為、近隣の魔物処分を買って出たけど思わぬ収穫だ。

 ダーリンにはこの世界のレベルが如何程のモノか調査しろとも言われている。

 楽しかったわね。

 偵察も含めた魔物達の大量虐殺は。

 お陰で雑魚ばかりでしたと虚偽の報告をするところだった。


 直観だけど、目の前の女は相当に強い。

 最高の女である私が女を判断するのだから間違いない。

 私達がこの世界を遊び尽くすのに邪魔な存在。

 勇者であるダーリンも言っていたわね。

 障害となる要素は早めに特定しておきたい、と。

 私の問いに女が口を開く。


「初対面で悪いけど、アンタ気持ち悪すぎ。怪しい人には名乗らない主義なの」

「フフフ、じゃあ、名乗りたくなっちゃうくらいイジメてあげるわ」


 謎アイテムのお陰だと思うが、集団転移した相手を舐めるのは愚の骨頂。

 100体の機械兵全てに命じる。

 死ぬ寸前まで黒髪の女を痛めつけてやりなさい、と。


 一斉に飛び掛かる機械兵達。

 まずは、一突き。

 女の正拳突きが一体を貫通し爆散させる。

 鋼鉄の身体を貫くなんて、大した攻撃力だ。

 しかし、私は見逃さなかった。

 苦悶の表情を浮かべていたわね。


 固い装甲を貫いた時に拳に傷でも抱えたのでしょう。

 あの華奢な身体では骨にヒビが入っても不思議でない。

 更に一体、同じ要領で機械兵が葬られる。

 一際、眉根を歪める女。

 確定ね。

 この女の身体では、よくて30体討伐が限界でしょう。

 

「頑張っているみたいだけど、辛いなら早めにリタイアしてもいいのよ」


 私の言葉に耳を貸さず、女は黙々と機械兵を破壊していく。

 拳で蹴りでと全て一撃の元に機械兵をねじ伏せる。

 このペースでは、拳か脚が壊れていずれ音を上げる筈。


 10体。

 30体。

 50体。

 60体……。


 何かがおかしい。

 相変わらず苦悶の表情を崩さないが、倒すペースはドンドン上がっていく。

 そして、残り30体となったところで、


「もう諦めた……」


 女が突如として敗北宣言をしたのだ。


「ふ、ふふふ……。大分、強がってたみたいだけど拳も脚もボロボロでしょ」

「面倒くさいから、一気に倒す」


 女の身体が一瞬だけ赤いオーラを纏う。

 拳を振り抜いたと同時に全ての機械兵が爆散した。

 何が起こっているの?

 一撃にして多撃。

 凄まじい力が周囲を駆け抜け、空が大地が微かに揺れたように錯覚する。


 女が私の目の前にゆっくりと近付いて来る。

 再び身体に赤いオーラを宿し、瞳は此方を敵として鋭く睨みつけてた。

 こうなったら本気を出すしかないわね。

 脚に装着した機構武具をマキナで強化し、空中を縦横無尽に駆け回る。

 足裏から噴射するブーストを利用し、大気を足場とする空中歩法。


 そして、更に奥の手。

 下半身機構武装化。

 脚だけではなく、私の神秘なる股間を守る様に鉄製の鳥が出現する。

 秘儀、鼓鳥の舞。


「アハハハハハ! この姿となった私は通常時の三倍の、」

「アンタのせいで……」

「は?」


 赤のオーラが右拳に集中する。

 その力は凄まじく放つ気だけで、股間を守る筈の鳥にヒビが入っていく。


「アンタのせいでレベル上がりまくったじゃないのよ!! このド馬鹿!!!!」


 必殺と呼ぶに相応しい一撃。

 私の機構武具が水着が全身の体毛が、赤のオーラにより全て消し飛んでいく。

 

 生まれたままの姿となった私は全身に復帰不能なダメージを受け大空を舞う。

 ああ、私は鳥になったのね。

 身体が回転するのに合わせ視界も高速に変化していく。

 グルグルグルグルグル。

 空、大地、股間、空、大地、股間。

 最後はガツンと頭頂部に衝撃を受け、微睡の中に沈んでいくのだった。


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