桜花爛漫
私達、攻略者が生き残るための生命線。
浮遊剣と黄金の防壁を破壊した者。
スケッチが速筆でキャンパスに文字を書き、皆に見える様に掲げて見せる。
【黄色いの止めました!! (自慢気なスケッチのデフォルメ絵付き)】
金髪少女の力で影響を受けたのは私達だけではなかった。
ラットスパイダーがぷるぷる震えながら、動きを止めているのだ。
ここで、スケッチが何を思ったのかジャンプする。
ラットスパイダーもジャンプする。
スケッチがくるりと一回ターンを入れる。
ラットスパイダーもくるりと一回転する。
最後にスケッチが左右にお尻を振る。
ラットスパイダーもふりふりとお尻を振る。
最後はハッと我に返り、行動を恥じてスケッチブックに顔を隠してしまう。
ラストのお尻フリフリ、スケッチが可愛すぎて鼻血が出そう。
尻より胸の方が揺れ……。
それにしても、どんなスキルなのだろう。
敵味方問わず、影響を与える異能。
気になるのは、ソフィアの浮遊剣の壊れ具合に大きな差異が生じたことだ。
『魔素の隷属化です』
(よく分からないけど、術系能力者に必要とか言われる魔術のモトね)
『地属性全振りの蜘蛛達、浮遊剣も地属性の含有率で自壊率が変化したのです』
(確かにクリスの防壁も地の力を利用していた。それで真っ先に壊れたのね)
『よく観察すれば、雷の浮遊剣も完膚なきまでに破壊されていましたが』
(待て待て、雷と地って反属性でしょ?)
『属性でなく、色で魔素を支配する力なのです』
(黄色を止めた……。確かに地と雷には黄色っぽいイメージがある)
『強力なスキルです。単体の魔素で構成された魔物や魔法は確実に支配されます』
単体どころの話ではない。
ソフィアが昔、言っていた。
錬金術は数多の素材を様々な魔素を利用して、くっ付けているのだと。
錬金術師にとって魔素は素材を維持する接着剤的な役割を持つ。
物質構成に必要な魔素は多数。
一つでも欠ければ、存在を維持できない可能性があるのだ。
ソフィアの浮遊剣を見れば、それが分かる。
雷と地の属性を持つ剣は完全崩壊。
黄色のイメージを持つ魔素を一部利用していた剣にも幾つかヒビが入っている。
錬金術師にとってスケッチは天敵。
今は仲間だけど、敵に回ったら使用可能な錬金術がかなり制限されてしまう。
だが、ソフィアがスケッチを見る目は違っていた。
面白い、みたいな表情してるわ。
目の前に壁が現れるといつも明るくそれを乗り越えていった赤毛の少女。
左腕を失った時もそうだった。
私がソフィアを見つめていると不意に鋭い声が聞こえてくる。
「よくやった。そのまま、止めていろ」
静止した蜘蛛達を飛び越え、刀を構える真面目眼鏡。
60レベル程度の中蜘蛛へ一気に間合いを詰める。
「ここだな」
鼠と蜘蛛の複合体。
哺乳類が持つ命を紡ぐ機関、心臓を一突きで破壊する。
禍々しい黒のオーラを纏う刀身。
瞬間、刺された蜘蛛だけでなく、何千の子蜘蛛と数匹の中蜘蛛の命が消滅した。
そして、一匹の女王蜘蛛は今にも死にそうなダメージを受けている。
次は何の能力ですかね、一体。
委員長が眼鏡を掛け直し、言葉を紡ぐ。
どうやら、解説してくれるようだ。
「《眷属滅殺》は、殺したモノから五親等内に存在する眷属を同時に叩き伏せる」
簡単に説明するとこうだ。
ある人を叩き殺すと、五親等以内に存在する親や子などを一気に亡き者とする。
どこぞの王族を切り捨てれば、一気に王室陥落である。
何だこの極悪スキルは。
コイツ野放しにしてたら、アカン奴でしょうよ。
女王蜘蛛の様子から、ステータスが高ければ耐えられるみたい。
問答無用で完全に殺しきるなら、本当にヤバいスキルである。
桜花爛漫。
華やかなる美少女達の攻撃による舞は、まだまだ終わらない。
強力スキルのオンパレード。
「よっしゃ、今度は私にやらせてよ!」
胸前で両の拳を突き合わせる、茶髪のベリーショート。
次は、君ですか……元気。
一体、どんなチートスキルを見せてくれるんだい?




