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【完結】転生ニートは迷宮王  作者: 三黒
第1章

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25/272

25 忠義

 俺のせい(・・・・)で人が死んだ(・・・・・・)

 いや、正確にはゴーストだ。だがまぁ、ちゃんと生きて会話もできる「人間」だった。


「なんでだよ、なんでノナとお袋が死ぬんだ。なんで」


 レイは虚空を見つめて呟き続ける。迷宮に戻る前からあの調子だ。

 まさか死者が出るとは思わなかった。ただのレベリング。言うなれば雑魚狩りのはずだったのに。

 

「死ぬ必要なんてなかった。死ぬわけなんてなかった……」

 

 詫びる言葉もない。何故あんな強い魔物が湧いておたんだろうか。時空魔術(ディロウ)も効かないほどの。

 

「お前が……お前がレルア様を遣わせてさえいればっ!!」

 

 レイが、部屋の隅に立てかけてある剣をひっ掴む。そして駆け出した――俺に向かって。

 刹那、ギィン! という金属音と共に、レイは剣諸共弾き飛ばされる。

 光る片手剣を構えてレイを睨むは、レルア。

 

「お怪我は?」

「大丈夫だ、ありがとな」

 

 俺が調子に乗って出てなければ二人は救えていたかもしれない。いや、恐らく救えていただろう。ゼーヴェが俺に気を取られることもなかった。

 通信からヤバそうなことは分かってた。勇者とはいえ戦闘に慣れてるわけでもない元一般人が、いきなり実戦なんてのも――無理に決まってた。

 

「仕えるべき主人に……貴様はなんということを……!!」

 

 何やらゼーヴェがキレてらっしゃる。が、これは百パー俺が悪い。

 

「親父はそれでいいのか!? 無能に仕えて、その慢心から家族を殺されて!」

「元より我々は一度蘇らせていただいた身だ。その恩を忘れて切りかかるなど言語道断」

「わからない。生かすも殺すもあいつ次第だって? 俺は嫌だ」

 

 今にも殺し合いそうな剣呑な雰囲気が漂う。参った。「命」が重すぎる。元いた世界と変わらない。

 

「レイ」


 返事は返ってこない。そりゃそうか。家族の仇みたいなもんだし。

 

「お前は、どうしたい」

「…………ここを出て自由に暮らしたいね。また家族四人で、幸せに」

 

 厳しいことを言ってくれる。

 ちょっと待てよ? ゴーストって蘇生できるのか?

 

『迷宮内で死亡した魔物の蘇生は自動で行われる。平均して数時間~数日後に復活する。「死霊術師(ネクロマンサー):500万DP」であれば、その場での即時復活が可能(制限あり)。迷宮外で死亡した場合はいかなる場合でも不可能』

 

 要するに無理と。

 このままここにいるのも苦痛だろうし、使い魔としての契約解除とかできるのかね。

 

『可能。但し、魔力を迷宮に依存していた場合消滅する』

 

 なるほどな。この点は魔力タンクで解決できそうだ。

 

「どうやら『ここを出て自由に』の方だけならなんとかなりそうだ。どうする?」

「さっさとやれ。ノナとお袋が蘇らないのは残念だが、無能にしては上出来だ」

「いい加減に――」

 

 ゼーヴェが魔力を剣として顕現させる。

 

「ゼーヴェ」

「しかし!」

「いいぜ殺せよ。家族よりも忠義が大事なんだろう? 俺は親父の主を侮辱した。殺したいなら殺せ」

 

 レイは全身から力を抜いて壁によりかかる。

 ゼーヴェは、意外にも剣を収めた。

 

「貴様如きに振るう剣などない。どこへなりとも行ってしまえ」

「所詮その程度か。じゃ、お言葉に甘えて」

『使い魔:レイの契約を解除しますか?』

 

 はいを選択。

 レイは無言で転移門(ゲート)を踏み転移していった。

 

「ゼーヴェはいいのか? 確かに蘇らせたのは俺だが、それも元はと言えば俺の勝手だ。遠慮ならしなくていい」

 

 ちょっと睨まれた。

 

「……それは私に対する侮辱ですか?」

「いやいや、そんなつもりじゃ」

「私はロードに深い恩を感じています。一度死んだ身でありながら、再び現世の空気を吸うことができ、仇まで討たせて頂きました」

 

 ゼーヴェが俺の前に跪く。

 

「戦士ゼーヴェ・アーゲンデルト、まだまだ未熟ではありますが――再び命尽きるまで、貴方の剣となりましょう」

「あ、ああ。よろしく頼む」

 

 ほぼニートの俺に格好いい戦士が跪く様子は、恐らく最高にシュールだっただろう。風格ある迷宮王なら様になったんだろうが。

 

「早速何かございますか?」

「いや、取り敢えずは小屋で待機していてくれ。色々あって疲れたからな、少し寝たい」

「承知しました。ごゆっくりお休みください」

 

 一瞬で目は覚めるが、寝た感じはするし疲れも取れる。何より、この現実から少しの間逃げられる。

 そうだ。これは「ゲーム」のようだが確かな「現実」だ。

 気付くのが少し遅すぎたような気もするが、まだやり直せる。そう考えないとやってられない。

 俺はベッドに寝転がり目を閉じた。

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