234 改変
「わわっマコト! また罠だよ!」
通路全体に赤い光が満ちる。
「また解析で感知できない罠か。本当に面倒だ……なっ!」
エータの上半分を斬り飛ばすマコト。また剣の扱いが上手くなったな。合体技は別枠なのか? それとも別の原因?
何が役立つか分からないし、一応これも覚えておこう。ただでさえ謎が多いんだ。
と、閉鎖された通路に大量にロボが追加された。この次々出てくる感じワクワクするんだよな。俺が。デフォルトだと上から降ってくるだけだったんだが、それを壁からも出てくるようにしたのは完全に趣味だ。他のとこでは地面からも出てきたりする。
「――防御結界!」
「まーくん、こっち!」
通路内を飛び交うレーザーは、並の動体視力じゃ避けられない……はずなんだが。全員上手く躱してるな。やりよる。
「ここなら安全だよ!」
「ありがとう、エリッツさん――」
そいつはどうかな。
「――まずい!」
「マコト!」
罠の起動条件の一つ、不可視の光線。これは他の罠の起動中にも有効だし、今のは通路が追加で少し作り変わるやつだ。
あんな作られた安置に騙されるなんてな。甘い甘い。
「――創造・土壁!」
足場を作って上に逃げたか。だがまああまり意味がない。エータはその程度の高度ものともしないし、今の罠で三角錐も数体追加された。
「迅い!」
「――氷矢!」
そう、エータよりも全ての性能がちょっとだけ上、なんだが、エリッツさんの反応も素早い。着実にエータの脳天を撃ち抜いていく。
なんでご丁寧に頭が弱点なんだかな。もっと分かりづらい場所にしてくれりゃいいのに。機械だし。……いや、機械に見えるだけで実は違ったりするのか?
「お姉さんに掴まって――風衝!」
と、遂に捌き切れなくなったようで、エリッツさんはマコトと共に通路の隅まで跳んだ。
「シエルちゃん! 足止め!」
「はーい――土鎖!」
「ありがと――氷刃!」
薄めの氷の刃が、動きを止めたロボの群れを両断していく。初めて見たが随分スパっと切れるもんだな。
「やった! さっすがエリ姉――」
カチ、という音と共に沈み込む床。
「――うわーん! また罠! もう勘弁してよ!」
いやいや、無警戒で歩き回ったらそうもなるぜ。もう深層だから大量に設置してあるんだ。
ただ、コストとか負荷とかみたいな制限が一応あるらしく、こうも大量に仕掛けられるのは誘引くらいだ。上層では強制転移とかピタゴ〇スイッチ風とか色々置きはしたんだが、情報が流れ始めるともう引っかかるのもいなくなる。手間はかかるが上層だけ数ヶ月に一回くらいのペースでアプデしてもいいかもな。それか踏破人数が一定以上で……とかでもいいか?
「シエル!」
「わっ、わっ、わわわっ!」
四方八方から撃ち出されるレーザーにあたふたするシエル。円錐が出たか。更に速いし、なんならレーザーも一度に複数本撃ってくる。今は起動したシエルにタゲが集中してるらしい。
「シエルちゃん、こっち!」
「う、動けないよ!」
「――創造・雷刺!」
カバーに入ろうにも周りの個体が邪魔で上手く近付けない。雷刺で一体ずつ片付けてはいるが時間がかかりそうだ。
にしても、やっぱりシエルに無駄な動きが増えてる気がするな。マコトじゃ合わせられない。エリッツもリョーガの代わりにはなれてないし、不足を自分で補おうとして失敗してるように見える。
能力的には勝ってても、今まで連携の――戦略の中心にいたのはマコトじゃなかったはずだ。あいつはリーダーの器じゃない。なるとしたって後ろで作戦考えてるタイプのリーダーだろ。今だってエリッツの方が中心で動いてる。
なんだかまとまりがない印象を受けるんだよな。各々の戦闘力は高いが、今ひとつキマってないというか。勿体ない。ほら、シナジー考えずに高レアで固めたパーティって弱いだろ。そんな感じだ。多分。
「大技を使う! シエル!」
「えっ、えっと……魔術障壁!」
「――創造・天刃雷!」
青白い爆発――リョーガの術。雷刺で気付いたか。こいつらが雷に弱いことに。
障壁を解いたシエルに、エリッツが駆け寄る。
「シエルちゃん、怪我はない? お姉さんに見せて」
「大丈夫だよ、って、ちょ、エリ姉! くすぐったいってば!」
あの一撃を受けて無傷ってのも凄いな。不思議な蘇り方をしたとは言え天使に変わりはないか。
「あれ、ボクたちどっちから来たっけ?」
「ううん、困ったね。どこに罠があるか分からないから、あまり動き回りたくないし」
「――解析」
なるほど解析か。まあこういうときにちょっと使うくらいならいい。下方修正済みだしな。
「多分、こっちだね。魔力の痕跡は巧妙に隠されてるけど、素因の流れまでは誤魔化せない」
「おお、まーくん凄いね! そんなことまで分かっちゃうんだ!」
あれえ? 普通に強くねえ??
まさかこいつ、結界関連もいじりやがったのか。そうだとしか思えない。
シルヴァに言えば確認はできそうだが、そんなことさせてる場合でもないか。分かったところでどうせこっち側からのアクセスは弾かれるんだろうしな。
「本当に凄いのはこれからだよ、エリッツさん。――創造・改変」
まず、一行の周囲の壁が消えた。次はその外。次はその更に外。
数秒と経たないうちにすっかり真っ白シンプル空間にされちまった。ただでさえシンプルなのに。
「そして、最後にこう」
マコトが指を鳴らすと、次の階層への転移門が明るく輝き始めた。
「気付いたんだ。罠があろうとなんだろうと、それより先に作り変えてしまえばいい。さあ、先に進もう」
これは……まずいぞ。時間がない。なくなった。たった今。
今のノリで全階層を変えてこられたら、あっという間にここまで辿り着く。止めるにしても何にしても、ただボーっとあいつの攻略を眺めてるわけにはいかなくなった。最早攻略じゃないけどなこんなの。なんだって皆チート使おうとするんだよ。リスペクトが足らんぞリスペクトが。……勘弁してくれよな。




