再生2
「この町は変わっていないな。」
町並みを一望出来る丘の上に立つ。
太陽が沈む間際のこの時間帯が一番好きだ。
今日あった事を全て忘れさせてくれる。
「紅葉様!お戻りになられたのですね!!」
俺がこの町を出たのは2年前のことだ。
理由はただ一つ。
全国を周り、陰陽師としての実力を上げること。
当時の俺は父親、『龍神 睡蓮』を越えることが出来ず、苦悩していた。
そんな時、助言をくれたのは幼馴染の兄だった。
家族はもちろん家の者たちにも何も言わずに修行に出たのだった。
今、俺を見つけてそばへ寄ってきたのは、侍従の常田だ。
「どこへ行っておられたのですか!!ご主人様も大変心配しておられたのですよ!」
「あぁ、常田には心配をかけたね……」
彼には幼い頃から、というよりかは生まれた時から世話になっている。
修行に出るときの気がかりとなる点の一つだった。
町に入ると皆店じまいをしているところだった。
顔見知りが多いので、「紅葉様、お戻りになられて本当に良かったです!」「紅葉様、心配をしておりました!」
などと店主たちが話しかけてくる。
言っておくが、「紅葉様」なんて様付けで呼ばれているが、俺は偉くない。
偉いのは「龍神家」というだけであって、「龍神睡蓮」という人物が偉いだけである。
決して俺が強いから呼ばれていたわけではない。
俺の家は町の中にはない。
俺たち陰陽師は本来人目につかない方が良い仕事をする人間だからだ。
霊と一度干渉するとその後、何度も関わる事になる。
霊と関わるのは陰陽師だけでいい。
そんな訳で、俺たちは人目につかない森の中の寺に住んでいるのだった。
「こーよー君帰ってきてたの!?」
様様呼ばれる中で、それ以外で呼ぶのは幼馴染の「薩美 雲雀」くらいだ。
「こらっ!紅葉様であるぞ!!」
常田がいつもの通り注意をする。
「たって同い年ですもん、いいじゃないですかー!…いつ?いつ帰ってきたの?」
「ついさっき……」
「えーー、言ってくれればいいのにー!」
うるさい。
非常にうるさい。
彼女はいつもわーわー騒いでいる。
「あ、荷物持ってあげようか?ほら貸して貸して!」
頼む、という前に勝手に持っていた荷物をぶんどられる。
「おい、ちょっ…勝手に……」
「ねぇー、何かお土産とかないの〜?……つか、何私になにも言わないで旅なんて行ってるわけ?」
雲雀目の色が変わる。
というか、ものすごく睨まれている。
「ねぇ?何?何かあるの?」
(怖い怖い怖い怖い!なんでそんな詰め寄って来るの?!)
「おい、紅葉様に何ということを言っている……」
「あんたは黙って!!」
「ひぃっ!」
常田が思わず後ずさりをする。
「……言いに行こうとは思った。だけど、言ったら雲雀は付いてくるだろうと思ったから言わなかった。それだけのこと。」
「なんで、付いて行っちゃいけないの?」
「霊が取り憑かれると俺が困るから。」
「っ!?」
雲雀が急に目をうるうるさせ始めた。
さも感激したかのような顔つきで、静かに歩き始めた。
「良かった。紅葉が無事帰ってきてくれて、本当に……」
大変いい場面で言うのも恐縮だが……
今雲雀に言ったことは全て「嘘」だ。
「おい、あんた最低だな。」
目の前にいる俺の14代後の瀕死陰陽師に言われる。
「仕方ないだろ、嘘も方便ってやつだ。……つか黙って聞いてろ。」




