でたとこクエスト 日常パート②
日常パートです。
俺の挑発が功を奏したか、完全にブチ切れモードの一縷が「ううー」と威嚇するように唸っている。
迂闊に目を合わせるとヤられるので、微妙に視線を外しつつも、俺は一縷の一挙手一投足を見逃さないように注意する。
一方的に睨みつけられること数秒、先に動いたのは一縷だった。
一縷は「うわーん」と、これみよがしなウソ泣きをすると、事もあろうか、雪乃へと抱きついたのである。
その予想外ではあるが、凄まじい効果を発揮するであろう、その一手に俺は思わず「くっ!」呻くと、一歩を後退った。
おのれ! 卑怯な!
これでは迂闊に一縷へと攻撃できない。
というのも、雪乃は美人なのだ。
美人な上、性格も良く、しかも巨大なオッパイ、略して巨ッパイの持ち主ともなれば、男なら誰だって心惹かれて当然ではないだろうか? せめて、付き合えないまでも、嫌われたくないと思うのが本音だろう。
とはいえ、下心だって満載なのである。
だっていつだって可能性はゼロじゃないのだから。夢見たっていいじゃない。
だが、忘れてはいけない。10代男子はいつだってハイパーエロ男爵であると同時、プレパラートよりも砕けやすい繊細なハートの持ち主でもあるのだ。
マズイぞ。このまま一縷を放置していては危険だ! 俺が一方的に悪者にされてしまう!
もし、雪乃に嫌われようものなら、俺はショックのあまり、血を吐いて死ぬ自信がある。
俺が内心でアタフタしているのを知ってか知らずか、一縷は雪乃の巨ッパイへと顔を埋めると、俺の非道(でっち上げ)を雪乃へと報告する。
「雪ちゃん先輩ィ。わたし、もうお嫁に行けないよう。ギーのエロイ目に汚されたー」
「ううーん。もうなぁに。一縷ちゃん? よく分からないけどギー君ならちゃんと責任取ってお嫁さんにしてくれると思うよ?」
雪乃は身じろぎすると、一縷の頭を撫で撫でしつつ、恐ろしいことを口走った。
なんで、俺がこんな子猿と結婚せにゃならんのだ?
「イヤだー。ギーの嫁になるぐらいなら、象の肛門に頭突っ込んで、そのまま窒息死する方がマシだよぅ」
おい。そんなにか? そんなにイヤか? さすがの俺でも傷つくよ一縷さん?
軽く凹む俺を尻目に「何だよ。お前らチョー楽しそうだな」と、不満そうに声を上げたのは憲吾である。
「特にギー。俺を抜きに浮かれるのもそれまでだ!」
そう言うとなぜか、俺に「ビシッ!」と指を突きつける。
「いやいや。んな格好した『お祭り待ちきれない感』満載のお前に言われたかねぇよ」
唸るようにそう返した俺の表情は多分げんなりしていたと思う。
駄目だコイツら。
そもそもこの集まりは、残り僅かとなった夏休みを後顧の憂いなく、徹底的にハシャギ倒すため企画された勉強会である。
だが、結果は惨憺たる有様だ。
みんな誰かがやってくるだろうと思い込み、それを写す気満々だったせいで、結果誰一人として宿題をやっていないという、ベタ過ぎる夏休みの宿題「あるある」をやらかしていた。
そもそも学年の違う一縷は戦力外だし、憲吾に至っては、なぜか今さら、夏休みの予定を立てている始末。
なぜにお前はオナ○ーの時間まで記入しとるのか? アホの子か? アホの子なのか?
3人寄れば文殊の知恵とか言うが、アホは3人集まっても夏休みの宿題を終わらせる知恵すら出んらしい。
それどころか、アホは集まると相乗効果でアホが加速するらしいのだ。
「ユキノー。俺にもハグさせてくれー」
「いいよー。ケンちゃん。こっちおいでー?」
「ダメだよ雪ちゃん先輩。これって普通にセクハラだよ!」
「ええい! そこを退け一縷。そこには俺、未踏破のマウントオッパイがある!」
「うるさい! バーカバーカ! 雪ちゃん先輩のオッパイ略して、雪ッパイの所有権はわたしにある!
お前みたいなヘンタイはギー共々、ワキガな体育教師のワキにでも仲良く左右に分かれて収まってろ!」
憂える俺をそっちのけで、何やらギャーギャー騒ぎ始める3人。
何か置いてけぼりにされてないか、俺?
いや、別にいいんだけどね。
俺はとりあえず、立っていても仕方ないからと、畳の上へと座り込み、ちゃぶ台へと頬杖を着く。
「今日も平和だねー」
とか、それっぽく呟いてみた。
多分、次で異世界です。多分。




