98話目
リナさんのペースに合わせて走り、神奈川の県境へと着いた。県境には、リナさんが言っていたように何人か人影が見える。
「アオイさん、視えますか?」
「ああ。ランク3が3人居るようだ」
「あなた達、よく見えるわね・・・。けど、3人? 多いわね。いつもなら一人か、交代時に二人になるくらいなのに。何かあったのかしら?」
どうやらいつもは一人しかいないみたい。まあ、県境は広いから、一か所にそんなに人を割けないんだと思うけど。とりあえず、その人たちに向かって歩いていくしかない。どうやら向こうも私たちに気が付いているみたいだから、ここで変に動くと警戒されるだろうし。
「あっ、シズカお姉さま!」
リナさんは、県境に居るのが誰か分かったようで、分かった瞬間にダッシュで近づいて行った。私達もそれに続く。3人のうち、左右には普通の身長で、体の一部が変化している女性達。真ん中に2人より頭一つ分大きな、体格のいい女性が居る。その女性は顔が爬虫類の様で、しっぽ出ている。変身後のアイラさんみたい。リナさんがシズカお姉さまと呼んだので、この人はシズカさんと言うらしい。
「ん? 誰かと思ったらリナじゃないか。そっちの二人は誰だ?」
リナさんはそのひときわ大きな女性に話しかけた。どうやら知り合いみたい。女性は、私達を見据えた。爬虫類の瞳と大きな身長が、ものすごい威圧感を感じさせる。
「ちょうどよかったです。この二人、お姉さまに用事があるようなので」
「そうなのか?」
「それで、お姉さまはどうしてここに?」
「ああ。最近この辺りをうろついていた獣を、今ちょうど排除したところだ」
「獣ですか?」
「ほら、あれだ」
シズカさんが横へ顔を向けた方を見ると、誰かが倒れていた。素っ裸で、普通の人にしか見えない。というか、あの姿は・・・アヤヒさん?
「・・・あの人を、あなたが殺したんですか?」
「人? 獣だろ。誰かれ構わず県境を防衛している奴らを襲ってたって話だったが―――」
「じゃあ、あなたがやったんですね?」
「それがどう―――」
「許さない!」
「カエデ、待て!」
「待たない!」
リナさんの制止を振り切り、私はシズカさんへと敵意を向け、近づいていく。
「何をする気だ貴様!」
シズカさんの隣にいた女性二人が、私の敵意を感じて近づいてきた。
「どいてください。私が用があるのはそっちの人だけなので」
「シズカ様には触れさせん!」
2人が私を行かせないように立ちふさがる。
「どいってって、言ってるでしょう!」
私は二人の胸を思い切り押す。それだけで2人は十数メートル宙を浮き、地面を滑る。押しただけなので怪我はしていないと思うけど、二人とも驚いて固まっている。
「ほぉ。ここであたしに逆らうのか?」
「カエデ、落ち着けって! お姉さま、ごめんなさい! この子にはそんなつもりは無いと思います!」
「いえ、とりあえず殴らせてもらいます」
「おいぃっ!」
「このあたしに逆らうとは面白い。あたしの名前は長谷川静香(CVI 室生オウガイ)。来い、相手してやるよ」
「私はカエデって言います。アヤヒさんの仇、討たせて貰います!」
リナさんが慌てて私を止めようとするけど、私はそれを避けてシズカさんへ殴り掛かった。




