196話目
「・・・とは言ったものの、ガキ相手に何をマジになってんだ、うちは」
「・・・はい?」
何この人、急に人の事をガキ扱いするなんて。見た目は一緒くらいだから、この人にはもうタメ口でいいですね。
「そっちこそガキでしょ?」
「はぁ? うちは19ですぅ」
「へぇ。私は25歳だよ」
まあ、精神年齢は15歳のままですが、戸籍上の年齢は25歳になるはずです。今は役所も機能してないので確かめようはありませんが、そういう事にしておきます。じゃないと、口げんかに負けるので。
「嘘つけ! そんな分かりやすい嘘ついてまでマウント取りたいのか?」
「嘘じゃないし。そっちこそ19に見えないし」
「しょうがないでしょ、食べ物少なくて成長しなかったんだし。それに、その胸。絶対小学生だろ。良くてAカップか?」
アイちゃんは私の胸を見て、半笑いしましたね。人の気にしていることを、なんで簡単に口にするんですかね。
「そっちだってAでしょ」
「残念、Bでしたー。はい、うちの勝ちー」
「そんな勝負してないし。ほら、さっさとかかってきたらどう?」
「これだからガキは短気でいけないね。ほら、お姉さんが手加減してあげるから、かかってきなさい?」
「むかっ! もう、泣くまで許さないからね!」
私は口げんかに負けた腹いせでも、胸を馬鹿にされた事でもなく、真剣に戦う事にします。
ギリッ
っと、奥歯に力を入れすぎてしまいました。とにかく、あの人を馬鹿にした態度を後悔させてやらないといけませんね。
「ふっ!」
「あぶねっ! 意外と早いじゃない」
不意打ち気味に左足で踏み込んで右足で蹴りを入れたのですが、躱されてしまいました。さすがにこの距離では無理がありましたね。
「はっ! とぅ!」
「ははっ、早い早い。ほら、こっちだよ」
「くっ、ゴキブリみたいにカサカサと!」
「誰がゴキブリだ! だったら、うちもそろそろ攻撃してやるよ!」
私の手刀も、左の正拳突きも躱されてしまいました。もしかしたら、無法地帯の愛知に居たって言うのも嘘じゃないのかもしれません。
どう攻撃するのかと思ったら、犬っぽく普通に噛みついてきました。でも、噛みつくという事は、急所である顔が近くに来るという事でもあります。カウンターで顔面を殴ってあげましょう。
「ぐっ! あぶねぇ! ちゅうちょなく顔を狙いやがって!」
「おしい。噛みつこうとしておいて、顔を守れるとでも?」
「はんっ。そう簡単に殴れると思うなよ」
アイちゃんが再び噛みついてきたので、今度こそ殴ってやろうと思って拳を出したのですが、フェイントで回避され、腕に噛みつかれました。
「固ぇ! 何だお前、人間じゃないのか!」
「人間だよ。ただ、人より少しだけ固いだけ」
「少しじゃねぇ! うちの牙は、骨だって簡単に砕けるんだぞ!」
「へぇ。その骨、骨粗鬆症だったんじゃない?」
「んなわけあるか!」
思った以上に素早い動きをされ、私は攻めあぐねてしまいました。




