159話目
「九州に着いたけど、声が聞こえたのはどのへん?」
「えっと、確認します」
私は目をつむり、声に集中します。声は例えるなら小さな振動のようなもので、何かしている場合はまったく気がつかないほどなので、集中しないと分かりません。
(たすけて・・・おねがい、たすけて・・・)
実際には声ではなく、信号だと思うので、頭の中に響く文字に音はありません。なので、この助けを呼ぶ声が、男性なのか女性なのか、そもそも人間なのかどうかも分かりません。植物の声っぽいので、もしかしたら人間じゃない可能性の方が高そうですけど。
「方向からしたら、長崎県の方角です。方角しか分からないので、距離的にはもっと遠いのか近いのか分かりませんが」
「それじゃあ、移動する前に、軽くこの辺りを調べてから動きましょう。一体、九州が今どういう状況か分からないし」
「じゃあ、あたしが離れた場所を調べるから、リナはこの辺りをお願いね。カエデは一応、声をひろってみて。じゃあ、1時間後に戻ってくる感じで」
「ほいさ」
「分かりました」
簡単にやることを決めて別れます。安全のためには固まっていた方がいいのかもしれませんが、大抵の事には対応できそうなので。
1時間経ち、アヤヒさん達が戻ってきました。
「こっちは何の異常も無かったわ」
「私も特に声に変化はありませんでした」
「とりあえず、目標の人物? はまだ生存してるって事ね。こっちも異常なしよ。ヴァリアントも居ないし、おかしな動物とかも居なかったわ」
「九州にはまだナノマシンが広がっていないって事よね。じゃあ、さっさと目的地に向かいましょう」
私はリナさんにロープを結び、走ります。ヴァリアントが居ないからか、本当に無人の街を駆け抜けます。ただ、台風なんかで散らかった物がそのままなので、道路には何かしら散乱していますが。
「九州に居た人たちってどこへ行ったんですか? 街は無いんですよね?」
「使徒様が作った街は無いだけで、普通の人達が暮らす所はあるかもしれないわね。まあ、それをいいことに使徒化した誰かが勝手に治めてる可能性もあるけど」
「本州じゃ強い使徒がいるから好き勝手出来ないけど、他に力のない人達しかいない場所ならイケるって思った人が居るかもしれないって事か。けど、普通の人を支配しても大したことは出来なさそうだけど」
本州なら使徒化した人たちが重機並みに働いているけど、電気の無い場所で人力でできる事なんてたかが知れていると思う。江戸時代並みの生活ならできるのかな? けど、娯楽が無いところを支配してもつまらなさそうだけど。




