↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
その聖女、ゴリラにつき  作者: 時任雪緒
第4章 学園生時代

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

89/139

4-6 武闘会1

翌日、セラドン伯爵令息が話しかけてきた。そういえば手合わせをしようと話したのだ。昨夜義父からあった話もあるし、丁度いいかも。


「それなら相談なのですが」

「うん?」

「実は私、結婚相手探しも兼ねて学園に来ているのです」

「へえ?」

「それでですね、私は私より強い殿方と結婚したいのです。セラドン伯爵令息のお名前で、力自慢の殿方を集める事は出来ますか?」


セラドン伯爵令息は、ぷッと吹き出した後、「いいよ、面白そう」と引き受けて下さった。

それを聞いていたニコール様やジョナサン殿下達も話に入って来て、これはもうイベントにしてしまおうとなった。

生徒会のクインシー殿下と取り巻きの方々にも許可を貰い(巻き込み)、「近衛騎士シヴィル・ホワイト辺境伯令嬢の結婚相手は誰だ!?第1回夫探し武闘会」が開かれる事になった。

最初は剣術大会となるはずだったのだが、私は騎士や剣士に拘りはないので、殺す以外は何でもアリにしたのだ。


このイベントには、予想外に申し込みが殺到した。騎士団や魔術師団からも多くの申し込みが来たらしい。学園生限定にするつもりはなかったので、一般参加者も受け入れることになった。別に皆が皆、私と結婚したい訳では無い。

たとえ優勝出来なくても、ここでそれなりの活躍をしたら、自分もモテるかもしれない、どこかのご令嬢が見初めてくれるかもしれない、武門からスカウトが来るかも、昇格できるかも、力試しをしたい、と思ってのことらしい。


イベント当日は天気にも恵まれた。2月に入って寒さが厳しくなり、雪の心配もしていたが快晴だ。

このイベントは主催が生徒会に移った事から、社交界でも話題になって、保護者や興味を持った人達が観覧に来ている。

ちなみに参加者があまりにも増えたので、今日までに予選があって、参加者は3分の1まで減らされていた。それでも本戦は20名近い。

ここで学園生の多くは振るい落とされてしまったので、次からは学園と一般参加者は部門を分けようということになった。最早大会の趣旨は私の夫探しではなくなったけど、これはこれで良いと思うのよね。

私が結婚相手を見つけた後でも、この大会を継続するなら必要な措置よね。ゆくゆくは武闘会を国営のイベントにしたいとジョナサン殿下が言ってたし、その方がいいと思うの。


「今日は天候にも恵まれて、大会日和だな。予想ではどうか、解説のグレイ伯爵」

「そーですねー。正騎士や魔術師もいるので、1人くらいはシヴィルに勝てるといいなーってとこですかねー」

「うん?厳しい評価だな」

「まぁね。シヴィルは強いですよ。殿下の想像以上にね。並の攻撃魔術は平気で避けますからね」


実況のジョナサン殿下と解説のグレイ伯爵の声が、拡声魔術で会場に響き渡る。

ジョナサン殿下は面白がって実況に名乗りを上げてくれた。グレイ伯爵は渋々言われて引き受けたので、ヤル気なさそうな感じだ。ホントよく引き受けたな。


「さぁ、それでは改めて大会ルールを説明する。本大会はトーナメント形式の勝ち抜き戦だ。勝ち抜いた上位3名のみが、シヴィル嬢との直接対決をする権利を貰える。勝敗は審判の判定の他、敗者からの宣言、意識喪失も敗北となる。シヴィル嬢は騎士だが、求めているのは強さだ、正道邪道問わない。どのような手段でも勝ちは勝ちだ」

「でも殺すのは禁止ー。周りに被害が出るような大魔術も禁止ー。一応僕が客席に結界張ってるけどね」

「グレイ伯爵の守りがあるなら、観客は安全だな。出場者は怪我をしたら、聖者聖女の治癒を受けることが出来る」

「誓約書書いてるから、怪我しても文句言わないでねー。負け犬の遠吠えとかダサいのはモテないからねー。でも対戦者が死んだらアウト。殺した奴はフツーに連行しまーす。これ決闘じゃないんでー」

「それでは皆の者、正々堂々戦ってもらおう。まずは、シヴィル・ホワイト近衛騎士と、第1騎士団長子息ザカライア・セラドン伯爵令息のデモンストレーションだ」


わぁっと歓声が上がる闘技場の中心に、私とセラドン伯爵令息が足を運ぶ。私は近衛騎士の制服である、濃い紫のジュストコールと瑠璃色の騎士服、セラドン伯爵令息は第1の従騎士の水色の騎士服だ。

まずは貴賓席に一礼し、四方の観客席に礼をしたあと、セラドン伯爵令息と距離を取って向き合った後一礼。そして同時に抜剣。


「君と手合わせしたかっただけなのに、ここまで大事になるとはな」

「私の都合に巻き込んで申し訳ございません」

「いいさ。これはこれで面白い」

「ふふ、お手並み拝見と行きましょうか」

「望むところだ」


私達が構えた直後、審判の教師から「始め!」の合図がかかった。

合図の直後にセラドン伯爵令息が突進してきた。その速度は並の騎士より遥かに速い。流石に強化スキル持ちなだけある。

でも、私よりは遅い。元同僚のザック隊のメンバーよりも遅い。あと足運びが雑だし、振り下ろす剣の角度が若干ズレてる。さてはスキルに驕ってるわね、昔の私を見てるみたいだ。

従騎士とはいえ、皇都の第1じゃこんなものか。やっぱり北部の方が強いのでしょうね。


私がヒラリとかわすと、減速したセラドン伯爵令息はすぐさま横薙ぎにするが、それもかわす。


「 シヴィル嬢がかわしきった!でも何がなんだか!」

「ザカライアの袈裟懸けからの横なぎを普通に避けただけですね。あんなもん、シヴィルにとっては準備運動っしょ」

「あっ!何か砂埃が!なんだ!?」

「シヴィルが反転攻勢に出て、ザカライアを剣風でぶっ飛ばしましたね。これはもう勝負ありですね」

「なにっ!?もうか!」


闘技場の壁際まで吹っ飛ばされたセラドン伯爵令息を見て、審判が「勝者!シヴィル・ホワイト!」と宣言した。

それまでしんとしていた闘技場が、途端どよめきに包まれた。


「お、驚いた。シヴィル嬢があれほど強いとは……」

「じゃなきゃ最年少騎士になんかなれないでしょ」

「それはそうなのだが、これ程とは……」

「そもそも、騎士になるってのは並大抵じゃないんですよ。しかもホワイト辺境伯領の第3で、人間よりも遥かに強い魔物と死と隣り合わせで戦い抜いて、小姓の時から最前線を任されてんだから。シヴィルが弱い訳がないじゃないですか」

「頭ではわかっていたつもりだったが、セラドン伯爵令息をここまで翻弄するとは驚いた。これはシヴィル嬢の夫の座を掴むのは、余程の力量が求められるな」

「そーでしょーね」



2人の実況と解説を聞きながら、デモンストレーションが終わった私は、また挨拶して下がった。セラドン伯爵令息は係の学生に担がれて下がっていた。大して怪我はさせていないけど、念の為後でお見舞いに行こう。

下がった後はジョナサン殿下の隣に腰掛けた。基本私は剣術解説、グレイ伯爵は魔術解説なので、この後は私も解説に入る。なんかドキドキするね。


私が下がった後は本戦開始なので、ジョナサン殿下が1回戦の出場者のプロフィールを読み上げている。


「お疲れ様」


ふと、グレイ伯爵が小さな声で労ってくれた。ちょっと意外に思った。グレイ伯爵に合わせて、小さく囁きながら返事をする。


「ありがとうございます」

「君さ」

「はい」

「ホントに結婚相手探してるの?」


どういう意味で聞いているのかは、そっぽを向かれているのでわからない。でも、私と彼の関係は、もう終わっているのだ。私は正直に答えた。


「まさか」

「えっ、そうなの?」


ビックリして顔を向けたグレイ伯爵に、私はおかしくなって笑った。


「周囲がうるさいので、黙らせたかっただけですわ。恋愛はしばらくは懲り懲りですわね」

「……あっそ。君に弄ばれる男共に、心底同情するよ」

「なんとでも。これも美人の宿命ですもの」

「うわ、それ自分で言う?」

「貴方の方がおわかりなのでは?」

「……」

「はいはい、そこまでだ」


ジョナサン殿下が手を叩いて話を打ち切った。私は素直に返事をして、会場に視線を戻す。ジョナサン殿下が拡声魔道具を引き寄せる。


「さて、デモンストレーションでシヴィル嬢の強さは見ていただいたところだ。シヴィル嬢のお眼鏡にかなう猛者が現れるのか、これから楽しみだな」

「ですねー。魔術師なら発動速度、威力だけでなく、到達速度や精度も問われるかな」

「騎士や剣士の方には、膂力や速度だけでなく、技術や応用力にも着目したいところですわね」

「さあ、それでは張り切って参ろうか!第1回武闘会、第1回戦開始だ!」


ジョナサン殿下の宣言で、大会が始まった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。