一服した
とりあえず、明日からこの異世界でどうするか考えよう。
家にもどった俺はまず俺は家の店舗部分にいくことにした。
いくら神?からもらった金があるとはいえ生活したら無くなるはずだし。
異世界でも職は必要だろう。
ギイッと住居と店舗を隔てるドアを開けるとそこには古めかしい喫茶店のような内装になっていた。
さっきは見た時は明るい洋菓子店みたいな店舗だったのに、すっかりリフォームされていた。
なんだこれ。
とりあえずカウンターのなかに入ってみる。
そこには色々と見覚えのあるものがずらりと揃っていた。
瓶に入ったコーヒー豆、ネルドリツプ用の器具やコーヒープレス。
コンロに自火にかけるマキネッタタイプのエスプレッソマシンと手動のミルクホイッパー
、サイフォンまであった。
思わずテンションがあがって色々手に取ってしまう。
うーん、サイフォンは使い方がわからないな。
おっ!イブリックがある。
ターキッシュコーヒーも入れられるのか…異世界なのに何でも揃ってるな。
コーヒー用の器きちんと揃っていた。
並ぶ小さな小瓶の中にはブランデーやウィスキーのような琥珀色の酒に浸った宝石みたいな氷砂糖。
これはあれだな。
ここで喫茶店開けっていう神の啓示に違いない。
とりあえず俺は自分用にコーヒーを入れることにした。
古風なコーヒーミルのネジを回し豆のひきを粗めに設定したらゴリゴリとひく。
今はガツンとした味のコーヒーをガブガブ飲みたい。
そう俺の舌がいっている。
棚からパーコレーターをとりだした。
これはアウトドアとかで使う直火にかけるコーヒーメーカーだ。
じいちゃんちにあったのと同じ。
パーコレーターの中のパーツを取りだし、本体に水道から水を入れ、湯を沸かす。
コトンコトンと火にかけたパーコレーターのお湯がかすかに音をたててきたら、先ほど取り出したパーツのバスケット部分に粗びきのコーヒー豆を入れて蓋をして芯棒を通して摘まむように持ち上げる。
それを火にかけたままのパーコレーター本体にそーっと入れる。
この時お湯がグツグツと煮たってたらダメだ。入れた瞬間に熱湯が吹き出るから。
鍋底が少~しだけコトンっていうくらいがちょうどいい。
本体に芯棒に通したバスケットをセットしたら素早く蓋をしめる。
すると透明なガラスの蓋ごしに、かすかに琥珀色に染まった湯が芯棒を伝って上がってきているのが目で見てわかる。
同時に湯気と共にコーヒーのいい薫りがしてくる。
ガラス越しに見えるコーヒーの色が好みの濃さになったら出来上がりだ。
フィルタードリップとは違ってコーヒー本来の味がガツンとくるのがパーコレーターの魅力。
コーヒー用のカップとソーサー…ではなくその横にあった大きめのマグカップにざばーっと注いだ。
ふーっと息をふきかけそっと一口。
コーヒーの薫りと苦みと酸味と微かな甘味。
山の中のじいちゃんちでいつも飲んでいた味。
はぁ~
落ち着く…
俺はカウンターの中の椅子に座った。
思わず目をとじると自分が酷く疲れているのがわかった。
そうだ、本当に凄く疲れてている。
暖かなコーヒーをのんでいるというのに、胃がひやりとつめたくなっていく。
俺は…地球にもどれるんだろうか?
俺は…ここでどうすればいいんだろうか。
カランカラン
突然、カウベルのような明るい音が響いてカウンターの向こう側、明るい光の入ってくる扉をあけて人が立っていた。