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接客した



逆光でよく見えないけれど、異世界っぽいマントを着た人物がそこには立っていた。


多分、男性。



…だれ…?


って思った。

俺、ここで知り合いいないんだけど。

そいつは店内をぐるりと見渡し、俺をみて目を見張った。


何だ?


俺の顔に何かついてるのか?

俺の顔が悪いのはわかってるから言うなよ。


しかし、よくみたら怪訝な顔をして悪人感の増しているはずの俺顔を通り越して、そいつの視線は頭の上にある棚をまじまじと見つめていた。



後ろに何かあったっけ?


疑問に思ってくるりと後ろの棚を見るとそこにはコーヒーみにあるのはが豆が入った瓶。


ああ、この世界一だとコーヒーはまだ珍しいのか?



「すまない。ここは…食事処か?」



そうだよな。

店っぽい外観、中で作業している人物が窓越しに見えたら…


入ってくる人はいるよな。



納得したけれど、俺は男の問いに少し悩んだ。

ここで答えた返事で俺のこれからが決まってしまう気がして。


男はやたらと真剣な顔で俺の答えを待っていた。

俺は先ほど入れたばかりのコーヒーを暖めたコーヒーカップについでカウンターテーブルに置いた。



「ここは飲み物を提供する場所です。どうぞ?」



追い出すのも悪いしとりあえず席を勧めてみた。

男はこちらを伺いつつ席につき、そろりとカップを持ち上げ、恐る恐るコーヒーを一口。


男は何度か頷き、小さな声でうまいといった。

俺は嬉しくて口の端が弛むのを俯いて誤魔化した。



うん、喫茶店も悪くない。



俺は男の邪魔にならないように、できるだけ静かに行動した。

男の外見は冒険者ってこんな格好かなっていうイメージそのままの服装だった。無駄にガタイが良いのが微妙に腹が立つ。汚くはみえないように最低限に整えられたヒゲがむさ苦しさを増している。

色は瞳もヒゲも髪の毛も綺麗なヘーゼルなのに少しもったいない。

彫りの深い顔は険しく、いかにも冒険者という風情、日本ではまず目にすることのない荒れた風貌だった。


俺が使い終わったパーコレーターを洗い終わると店内には他に音がなくなった。


そんな中で聞こえた男のため息は、ひどく重く疲れの滲むものだった。



そんなときちらりと見た小瓶が光っているような気がして手に取る。その瓶のラベルにはチョコレートとかいてあった。



取り出してみると古地図柄の紙に包まれた一口サイズの小さな板チョコ。



「お疲れのご様子ですね、甘いものは疲れがとれるんですよ」



男の目の前にあるカウンターテーブルと厨房にある仕切りに俺はそっとチョコレートを置いた。



男はまじまじとそれを見て、そろりとそのチョコレートを手に取った。



あれ?もしかして食べ方が解らないのかな?



俺は男の前で同じチョコレートを包みから出してぱくりと食べた。



うん、美味しい。口溶けのいい高級チョコレートの味だ。



俺は自分用に入れていたコーヒーで口の中の甘さを消した。



うん、うまい。



そういえば思わず俺と同じコーヒー出したけど。この人の口に合ったのかな?



次に来る人にはきちんと入れてあげよう。

とりあえず今回はタダにしよう。

コーヒーの価値と一杯あたりの相場が判らないし。



「お代は結構ですよ」



そう言うと男は「いや、それは悪い」とかぶりをふった。


男はコーヒーをぐいっと飲み干し「ありがとう、うまかったよ」とカウンターに金色のお金を1枚置いて店を出ていった。



良かった、値段を決めてなかったから助かったな。


ここのコーヒーの相場が俺には解らないから。



俺は男の置いていった硬貨をひょいと持ち上げようとして失敗した。



「重っ!?」



なんだこれ、ここの通貨ってこんなに重いのか。

こんな小銭をじゃらじゃらもつの大変だ。

それに、これじゃコイントスがやりにくい。


俺はよっと、掛け声をつけてコインを宙になげた。

コインはくるりと回ってずしっと掌に落ちてきた。ううっ重い。



表が出たらここで喫茶店を開く。


裏が出たら冒険者になって日本に戻る方法を探す。




開いた掌の金色のコインの表面には、水瓶を両手に持った人物か葉っぱに囲まれていた。



その裏側には花と何かの獣の絵




これ、…どっちが表でどっちが裏だ?




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