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秘密だらけの僕のお嫁さんは、大陸屈指の実力を誇るドラゴンスレイヤーです  作者: 甲斐 八雲
Main Story 19

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誰よりも優れた私たちの弟子です

 ユニバンス王国・王都内鎮魂祭会場舞台



 軽い足取りで舞姫が舞台を所狭しと飛び跳ねる。

 先ほどまでの息苦しい踊りを止め、解放された……解き放たれた小鳥のようにレニーラは舞台の上を舞う。


 軽快なステップは止まることを知らずに続く。

 滑らかな足の動きは踊り子を志す者が見れば震え上がった。

 どれもが高等な技術であり、それが絶えず繰り出されるのだ。


 止まらない。


 良く息が続くものだと感心し、途中から恐怖すら覚える。

 どれほど舞姫のステップが続くのか……固唾を飲んで観客は見守る。


 と、曲調が変わった。

 軽やかなステップがようやく止まり、ゆったりとした動きへと変化した。


 自由を満喫していた小鳥が成長し、成鳥となった鳥が優雅に舞う。

 子供から大人へ。娘から女性へ……見ている者はその踊りから理解した。


 またも音が変わる。


 弾むように響き渡る曲調に、舞台上では緊張感が生まれる。

 自由を満喫していた女性は不安げに辺りを見渡す。何かが周りに居るような恐怖を見せた。


 舞台上に影が舞う。明かりで作られたただの影絵だが、その影は何処かドラゴンにも見える。

 化け物のアギトが開き女性を狙う。必死に回避する女性は少しずつ舞台の隅へと追いやられた。


 逃げ場がない。もう逃れられない。


 その時だ。女性の手を取り白い影が走る。

 2人は駆けながら影を交わして舞台中央へと戻った。


 片方は全身が白く見える目麗しい若き騎士だ。

 もう片方の女性もまた影の隙間を過ぎる間に衣装を変えドレス姿に変化していた。


 化け物の影を回避し、騎士が剣を振るうように腕を動かす。

 女性を守るように騎士が腕を振るう。


 いつしか影は消え……舞台上には2人だけが残った。




 観客席からのため息が止まらない。

 天才レニーラの動きに決して劣らないノイエの踊りに皆が驚いて居る。


 かく言う僕もこっそりと腰を抜かしかけていた。ノイエってあんなに動けるんだ。


 普段のノイエは直線的にドラゴンを粉砕している気がするのです。

 全力で拳を振るって血しぶき製造メーカーな動きだ。

 でも今日のノイエは違う。男装の麗人と化し、踊り子として舞台の上を舞っている。


「ねえセシリーン」

「……はい」


 演技中に話すのはマナー違反な気もするが、それでも話したくなった。


「ノイエって本当にレニーラの弟子だったんだね」


 師匠の凄さは僕だって分かる。その師に劣らない舞いをノイエは見せていた。


「ええ。そうです」


 静かにセシリーンの声が僕の耳を打つ。


「あの子は本当に優れた弟子なのですよ」


 そっと僕に背中を預けセシリーンは言葉を続ける。


「誰よりも優れた私たちの弟子です」




 王都内・とある屋敷の屋根



「あら凄い」


 上空に浮かぶ映像を小柄なメイドは屋根の上に寝っ転がって見ていた。


 特等席だ。

 周りには人が居なく雑音もない。

 舞台から近いから楽団の曲も耳に届く。


 唯一不満があるとすれば、口寂しいくらいだ。出来たらポテチと炭酸水が欲しい。

 無い物を強請っても仕方がないので魔女はエプロンの裏から飴玉を取り出し口に含んだ。

 コロッと口の中で転がし、味わってからペロッと唇を舐める。


「ありきたりなシナリオでも演者の質が抜け出ているとこうも変わるのね」


 笑えてしまうぐらいに舞台上の2人の踊りは止まらない。


 これを見ている踊り子志望の者たちは心を折られてしまうだろう。

 恐ろしいほどに暴力的な実力を披露しているからだ。


「舞姫が凄いのは分かるんだけど……あの子も凄いわね」


 普段何を考えているのか分からずアホ毛を揺らしているあの姉が、無表情のままに踊りを続けている。必死に師である舞姫の踊りに食らいついている。

 最強のドラゴンスレイヤーだからこそ可能な必死さだろう。普通の弟子ならもう挫折している。


「ああ凄い」


 体を起こし魔女は空を見ながら座り直した。


「長生きはするものね。本当に」


 クスリと笑い魔女は目を細める。

 この世界に来てからもう数百年……自分は破壊ばかりを繰り返し、創造からは目を背けていた。

少しは物作りをしてきたが、それは自分の興味を満たすためだ。


《挙句に最後の戦いとばかりにユーアとの決着を望んでいる》


 一度だけ目を閉じ、魔女は空に向かい微笑んだ。


「本当に私ってば馬鹿な女よね。きっと良い死に方をしないわね」


 苦笑してまた寝っ転がる。


 そろそろ限界だ。もう十分だろう。


「頑張ったわね。我が弟子も」


 空に向かい言葉を綴る。向けるべき相手は右目に居るのだが。


「そろそろ限界よね? これ以上無理をしたら……戻れなくなるし」


 ゆっくりと目を閉じて魔女は笑う。




 鎮魂祭会場・舞台観客席



 フッと音を立てずにセシリーンが消えた。僕の腕の中に居たはずなのに奇麗に消えた。

 突然すぎて驚くことよりも焦った。ビックリし過ぎて心臓が止まるかと思ったよ?


「……」


 ただこうなると僕としてはリアクションが取れない。


 説明役も居ないし……心を落ち着け呼吸も整える。

 やはり何が起きたのか説明ぐらい欲しいな。マジで。




「ノイエも~レニーラも~楽し~そう~だよ~」


 フワフワと揺れながらシュシュはノイエの視界を介して外を見ていた。


 現在魔眼の中枢には現在シュシュとリグの2人しか居ない。

 主だった者の内半数は行動不能となり、残りもこの場所には来ていない。

 魔法を使える者は術式の魔女が作り出した魔法を使いこの様子を見ていることだろう。


 本当に凄い。


 舞姫と呼ばれていたレニーラの本気だ。全力だ。

 普段魔眼の中で踊っている物が練習だと言う意味が良く分かった。

 格が違うのだ。


「凄いね~。リグ~」

「ああ」


 普段なら横になって寝ているであろうリグですら起きて見つめていた。

 興奮の余りに胸を大きく振るわせ体も振るわせている。


 本当に凄い。語彙力がどんどん消失していくが言葉を飾るよりもただ一言『凄い』が最高の誉め言葉だとシュシュは思っていた。


「あっ」

「ほへ~?」


 頭上から声がしてシュシュの目の前にそれが落ちて来た。

 彼の所に居るはずのセシリーンだ。

 無様なまでに全身を床に叩きつけ……ピクピクと動く歌姫にシュシュは言いようの無い目を向けた。


 外ではあのレニーラが舞姫の称号に似合う仕事をしている。その対となる歌姫は……哀れだ。


「セシリーン。平気?」

「ありがとうリグ。……リグ?」


 床に伏していた歌姫に手を貸し座らせたリグは、そのまま彼女の太ももを枕にする。

 リグが寝っ転がっていない理由は枕が無かったからだとシュシュは理解した。


 何が違う?

 自分の太ももはそんなに寂しいのかとシュシュは自然と自分の太ももを触っていた。


 それは良い。今度彼と話し合い確認すれば良い。


「セシリーン。どうして~戻って~来たの~?」

「分からないの」


 太ももをリグの枕にされたセシリーンは複雑な表情を浮かべて彼女の頭を撫でる。


「舞台を見ていたら、急にここに」

「ふ~ん」


 良く分からないがシュシュは頷いた。

 たぶんそんなことが出来るのは、あの魔女だけだ。だから魔女が動いたのだろう。


「で~。セシリーン~」

「何かしら?」

「旦那ちゃんと存分に楽しんだ感想は?」


 フワフワを止めて真顔で問うてくる相手にセシリーンはリグを撫でることで心を落ち着ける。

 だが気のせいか撫でている相手からも睨まれている気がして……セシリーンはゴクリと唾を飲んだ。


「良かったわよ。悪い?」

「悪いわ~!」

「悪い」


 開き直ったセシリーンに憤慨した2人が飛び掛かった。




 舞台上の2人は止まらない。

 だが手を取り合い幸せな時を過ごす2人に……ゆっくりと影が差しだしていた。




(C) 2021 甲斐八雲

 その昔作者はとある作品を完結させたときに心に誓ったことがあります。『踊りと歌のキャラは二度と出さない』と!

 今回書いててその誓いを破った自分に大後悔してます。


 刻印さんが何やら動いてセシリーンが魔眼の中に。何が起きた?

 少なくとも歌姫さんの身には嫉妬交じりの不幸が訪れましたがねw

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