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巨星墜つ

気付いたらランキングの順位が上がってましたーー!!(日間歴史ランキング)


いつか総合ランキングとかに顔を出せるようになりたいですね!

始皇帝は五度目の巡遊中に崩御する。


巡遊に出る前より体調を崩しがちであったが、巡遊に出てからいきなり容態が悪くなった。




当時、始皇帝は不老不死を本気で望んでいて、神仙術の方士(怪しさ最大)が調合した仙薬を服用していた。


神仙術の目的、到達点一つが(後に系統が分かれて錬金術とも錬丹術とも言われるが)、金丹や賢者の石とか呼ばれるものを探す、もしくは作ることである。


金丹は金以外の物質を金に変える霊薬とされて賢者の石と同じものと考えられている。


これを服用する事によって人間から仙人へ昇天でき、永遠の命を得ると信じられていた。


金丹を精製するレシピというのが実は今も残っていて、どんな材料を使っていたかが分かっている。


材料は丹砂(硫化水銀)、汞(水銀)、鉛などを使うとある。


出来上がった金丹には水銀化合物や砒素ひそ化合物が含まれ、当然だがそれらは強い毒性を持つ。


科学が発達していない時代、水銀が神秘的な物質に感じたのだろうか??


金を精錬する時に水銀を使う事から錬金術(金以外の物質から金を作り出す)として水銀は金を作るのに必要な素材とされていた。


始皇帝はその薬を飲んでいた。実際水銀中毒の症状が出ていたという。


秦の首都、咸陽に戻る途中で、不老不死を追い求めていた始皇帝もさすがに死期が近づいた事を悟ったのか遺言書をしたためた。


厳重に封がされ伝国の玉璽と共に宦官の趙高へと預けられる。


内容は


『長子の扶蘇ふそが咸陽に戻り葬儀を主催せよ。』


つまり扶蘇が跡継ぎで二世皇帝という事で喪主を務めろ、というわけである。


始皇帝が死んだ事に気づいたのは趙高一人だった。


趙高は宦官であるが始皇帝の寵愛を受け、始皇帝は趙高以外と誰ともほとんど会う事はなかった。


重臣が、例え丞相である李斯りしですら始皇帝に拝謁を望むとすれば、まず趙高を通さねばならない。


この時、趙高が


「陛下はお休み中ゆえ、謁見はなりませぬ。」


と言えば会う事はできない。


皇帝の決裁が必要な案件を選んでいるのも趙高である。


今や秦の政治は趙高が操作していると言っても良い状況だった。


趙高もいつしか自分自身が始皇帝のようなそんな錯覚を覚えていた。


なにしろ全ての重臣達は皇帝の代理である自分に対して頭を下げるのだから。



ある日、食事の時間に始皇帝へ配膳をしようと御車の中に入った趙高は、始皇帝がすでに死んでいる事を発見した。


趙高は一瞬呆然としてしまったが、すぐにこれは自分が秦の権力を牛耳るまたとない機会だと気付いた。


その為には協力者が必要である事を感じた趙高は、始皇帝の食事を自分で平らげると、側近に陛下が謁見するからと、丞相の李斯と、始皇帝の子供のうち今回の旅に唯一参加していた末子の胡亥こがいを呼ぶよう伝えた。


胡亥こがいは末子だが始皇帝から可愛がられていたので今回巡遊に同行していたのだ。


李斯と胡亥が御車に入ると趙高は二人に始皇帝が既に亡くなっていることを告げた。


二人は信じられないものを見たかのように固まってしまっている。


「お……おお……陛下……まさか、何という……」


「お父上様!嘘でござりましょう……!」


やがて遺体に近づき慟哭し始めた。





趙高は二人がある程度落ち着くまでそうしていたが、頃合を見計らってこう切り出した。


「臣は今はまだ陛下の崩御を伏せ、取り急ぎ咸陽へ急ぐべきかと。


咸陽に戻ってのち時期を見て崩御を発表すればよいでしょう。


陛下が統一をされてから十年、天下は今だ磐石とは言えず、崩御を公表すれば匈奴などにつけいる隙を与えます。」


「うむ、そうであるな。咸陽へ急ごう。


それまでは喪は伏せ、体制を整えるとしよう。」


と李斯。


「当面はこのまま何事もなく、陛下がご存命の様に振舞っていただきます。


食事やお薬湯もそのまま運ばせます。


陛下の代わりに臣が口をつけまする。


幸い、陛下の身の回りのお世話も臣が一手に引き受けておりましたので、周りに気付かれる事はございますまい。


ただ、今は夏ゆえ遺体が傷むのが早ようございます。それをどうするか…。」


「痛んでいくのを止める事はできん、何かで誤魔化すしか…。」


「臭ってきますからな。では魚を積んだ車で御車の周りを取り囲みましょう。


臭いはこれでまぎれるはず。」


「なるほど。

わかった、手配しよう。」


「後は陛下のご遺言の件ですが。」


「おお、そうであった。陛下は何と仰せられている?」


「はい、長子の扶蘇様が咸陽に戻り葬儀を執り行うように、との事でございます。」


「では跡継ぎは扶蘇様であるな?」


「ご遺言どおりであれば、その通りです。」


「では万里の長城におられる扶蘇様と蒙恬もうかつ将軍に早馬を出さねば。」


「その儀ですが、しばらく。」


「??」


「胡亥様、丞相。陛下が崩御された事を知る者は我々三人だけです。


そして陛下をしたためた遺言書と玉璽はそれがしが預かっております。」


「趙高、何が言いたい。」


「扶蘇様が二世皇帝でよろしいので??」


「よろしいも何もそう陛下がおっしゃっているではないか。」


「いえ、私が申し上げているのは扶蘇様が皇帝になられたら、我々は良くて失脚、最悪は死ぬことになりますな。」


「!!!!」


それは大いに考えられることである。


特に皇位継承権を持つ胡外は危ない。余計な争いが起きないようと消される可能性は高い。


胡亥は顔を真っ青にしている。


「しかし…それが陛下がお決めになった事であれば臣は従うのみ。」


「ですので遺言自体を、変えましょう。跡継ぎは胡亥様に。」


「!!!!!」


「!!!!!」


「臣は立場上陛下の代筆もしておりましたから、陛下と全く同じ筆跡で書けます。


そして玉璽がありますのでこれはもう本物の遺言書でございます。


真実を知る者は我ら3人のみ…。」


「趙高、そなたは何と…。」


李斯も胡亥も驚愕している。


だが、確かに扶蘇が皇帝になれば丞相の地位は蒙恬将軍になるだろう。


李斯は


「しばし考えたい…時間を…。」


そう言うだけで精一杯だった。


「はい。よくよくお考え下さいませ。我々の今後に関わる事ですからな。」


趙高は口の端が醜くゆがむのを押さえられなかった。




結局、李斯と胡亥は趙高の誘惑を受け入れた。


これによって秦という国家の運命は大きく変っていくのであった。





□□□□□□□□





喪を伏せたまま勅使が万里の長城へ走る。


始皇帝の命令であるとし、扶蘇に自害が命じられた。


後見役の蒙恬将軍も同時に捕らえられ獄へと繋がれた。


最大の政敵を取り除いた後、咸陽へ帰り着いた始皇帝一行はそこで喪を発表する。


喪主は末子の胡亥であると伝えられ葬儀を執り行った。


そのまま二世皇帝として胡亥が即位し、丞相は引き続き李斯が勤めることになった。


趙高も郎中令という役職になり実権を握る。


「とりあえず第一段階はこんなもんかのう。」


趙高はここまでは上手く行った事に安堵した。


だが趙高の計画はまだ始まったばかりだ。


「ふふ。優秀であると評判の高かった扶蘇様なら、わしの言うことなぞ聞いてくれん可能性が高かったからな。


担ぎやすい神輿は少々おつむが弱い方がいい。


その点胡亥様は合格じゃ。」


権力を全て自分が握るために次の策を練る趙高であった。


大きな時代のうねりがすぐそこまで来ていた。

誤字脱字ありましたら一報をお願いします。


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