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現実主義者の護衛が消えたわけ

案の定というかなんと言うか、昼食後にはナリアッテ他、侍女さん'sが勢揃いしていた。

何か若干メンバーが増えているような。

「ルイ様、そろそろ御支度を」

ナリアッテがそう私を促す。

そして、皆さん物凄くいい笑顔で、じわじわとにじり寄ってきた。

ひーっ。

うう、又なのね?

侍女の1人が私の左肩に手を置く。

「っつ」

思わず眉を顰める。

先程脱臼した左肩だ。

下手に肩を入れてしまったらしく、実は先程から少し痛かった。

1人になった時に、何とかしようと思っていたけど、陛下の使者が来たりしてなかなか治せずにいたのだ。

「ルイ様!?やはりその左肩、お怪我なさっているのではなくて!?」

ナリアッテが血相を変えている。

「あ、いや。大丈夫だから」

心配をかけたくないので、ことさらに平気だということをアピールする。

「どこが大丈夫だというんですの。医師を呼ばなくては…」

ナリアッテが、慌てて部屋を出て行こうとするので、私は止めに入った。

「ナリアッテ、自分で治せるから、落ち着いて」

「落ち着いてなんかいられませんわ。ああ、どうして先ほど気づかなかったのでしょう。ルイ様の事ですもの、自分から傷を負うような真似はなさりませんのに。その肩は、どなたかに怪我をさせられたのですね?」

す、鋭い。

「そ、それは…」

と言いかけたところで、扉のノックがなる。

「ジャミニ近衛3官がお越しになりました」

扉の外にいる衛兵が告げる。

助け舟キター。

「入ってもらって」

私がそういうと、すがすがしい顔をしてヴォイドが入ってくる。

すると「誰ですの!?」とヴォイドが入ってくるなり、詰め寄るナリアッテ。

ちょっとヴォイドが面喰っている。

いきなり誰と言われても、答えようがないよなぁ。

「ルイ様を傷物にしたのはどこのどなた?答えなさい、ジャミニ近衛3官」

ナリアッテがさらに、ヴォイドを詰める。

その時に垣間見えた、ナリアッテの歪んだ笑顔が非常に怖かった。

「ウィロアイド=リジェン=ケウェオ=ケナンヴェマだ」

彼女に気押されたのか、あっさり答えるヴォイド。

その答えを聞いて、大輪の花を咲かせたように笑うナリアッテ。

「ふふふふふ、身の程知らずもいたものだわね」

な、ナリアッテさん?

「ふふ、ケナンヴェマね。ケナンヴェマ。ああ、ウェインヴィさん?確かこの間、楽しいお話を聞かせて下さいましたわよね?」

ナリアッテが、侍女さん'sの誰かに話しかけると返答があった。

「ナリアッテ様、最も効率よく報復をする為の助言と技術の話でしょうか?それとも、最も復讐効果を得る為の5つの法則の話でしょうか?」

どこのHow To本だよそれ。

しかも何で、仕返し系?

彼女の過去には一体何が…

「両方ですわ、ウェインヴィさん。後ほど詳しく、ご教授いただけるかしら?」

リ、両方かよ。

「畏まりました。では、効率よく報復する為の助言と技術からお話しいたしましょう」

「ふふふふふ、楽しみね」

ナリアッテが笑うと、侍女さんたちがくすくす笑い出す。

すみません、ごめんなさい、本当に申し訳ありません。

心の中でウィロアイドに謝り倒しておく。

あなたは今、とっても危機にさらされているかもしれません。

ここにいる、侍女さんを敵に回してしまったかもしれません。

謝っただけでは済まないかもしれない。

「ふむ、そういう事か。なら君らは何もする必要はない」

ウィロアイド、よかったね。

君にとっての救いの神が現れたみたいだよ。

よく言った。

思わず褒めてやりたくなった。

さすが、ヴォイド。

「私が責任もって対処した」

そうそう、社会人はやっぱり責任を持って何事にも対処…

ん?

対処した?

対処したって、言った?今。

対処しようではなくて、対処した?

待て待て待て。

なにゆえ過去形?

思い出そう。

えーと、確かヴォイドは忘れ物をしたんだっけ。

そして、寄宿舎の部屋に戻って行ったんだっけ。

ご丁寧にも、外に衛兵までつけさせてたし?

これって、長く席外すから?

あ、嫌な予感。

私が、この部屋に入ってから40分、ヴォイドは戻ってこなかったんだった。

そう言えば、いやにさっぱりして帰ってきてたし?

ますます、嫌な予感

私がナリアッテと会話して、陛下の使者と会って、昼食食べ終わるまでの間に、寄宿舎でいったい何が…

「今頃奴は夢の中だろう」

そうか、昼寝の手伝いをしたのか、えらいねぇヴォイド。

だからぁ、現実逃避なんてできないんだって、私は。

恐る恐るヴォイドを見る。

何 を し に 行 っ た の?

「ルイ様、どうかされましたか?そのような顔をされて。思わず…いえ、何でもありません。ああ、寄宿舎での事をお聞きになりたいのですね?心配は御無用です。あの下種頭に、掟というものをたっぷりと叩き込んできましたので。もう、あのような事態にはならないはずです。断言します。二度と触らせてたまるか。え?いえ、なんでもありません。そんな!!殺しだなんて、ルイ様、何をおっしゃっているんですか。そんな事をこの俺がすると思いますか?しませんよ。ただ、胴体部分の見えない所を中心に、軽く蹴りを数か所入れてきただけです。ええ!?そこまではしてません。本当に軽くですから、大丈夫なはずです。たぶん。ルイ様がご心配なさる事ではありませんよ。ですから、そのような顔をなさらないで下さい」

ヴォイドが、寄宿舎での出来事を話してくれた。

軽く蹴ったというのは、絶対にウソだ。

夢の中にいざなう程度の事はしてきたのだろう。

相当怒ってたんだな。

それにしても、あの時なぜすぐに助けてくれなかったのだろうか?

いやいや、何を人に頼ろうとしているんだ。

あの状態から動けないという事自体がすでに問題であって、人に頼っている時点でアウトだ。

寝技から抜ける方法を未だに見いだせていないという、自分の成長の無さに泣けてくる。

今度ヴォイドに、寝技をかけられた時の脱出法を習ってみようか?

まぁ、ヴォイドでなくてもいいんだけど。

「よく殺って下さいましたわ。ジャミニ近衛3官」

ナリアッテがヴォイドに言う。

あれ?

一部翻訳が間違っている気がする。

そうか、この便利な翻訳機能にも限界があるんだなぁ。

てことは、私が話している言葉もうまく伝わってなかったりするのだろうか?

「ルイ様の事を心身ともにお守りするのが、私の務めですから」

ヴォイドがにこやかに答える。

護衛って、対象の心までは守らなくてもいいと思う。

そういうのは、恋人だけで十分だ。

「ええ、その調子でルイ様をしっかり守って下さい。ああ、いけないですわ。早く医師をお呼びしないと」

ナリアッテは言うがはやいか、すごいスピードでで部屋を出て行った。

今度は止める事が出来なかった。

「だから、私に医者はいらないのに」

私の言葉がむなしく部屋に響く。

「医者?まさか」

じっと、ヴォイドがこちらを向く。

そして肩の方に視線を移すやいなや、小さく「チッ」っと舌打ちをし、気付いた時には今にも駆け出さんとする態勢に入っていた。

あー、待って、ヴォイド待って!

君まで駆けだそうとしないで。

身を翻そうとしたヴォイドの体を、私は思わず掴んでしまった。

左手で…


あっ。

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