現実主義者に効果的な人物
ジョギングから帰って来ると、ナリアッテが待ち構えていた。
先程ヴォイドと、この部屋に入る前に色々話し、覚悟を決めてこの部屋に入った。
幸い、会話の内容は聞こえてなかったらしく、ナリアッテはにこにこ顔のままだった。
「ルイ様には朗報です。サロンのご用意はすぐにはできなくなりました」
聞こえてたー!!
やっぱり聞こえてたーー!!
恐る恐る、ナリアッテを見ると目が笑っていません。
その事を一切相手に気付かせない程、良くできた笑顔だ。
毎日会っているからこそ、判る変化だと思う。
「どうせ…私は腐った物体です」
拗ねた顔も可愛いが、そんな事よりも。
ナリアッテ、突っ込む所はそこなんだ。
「いや、ルイ様は、"食べたくなるほど美味しそうで、思わずお持ち帰りをしたくなる"とおっしゃっていたのです」
ヴォイド、それは、フォローになっているのかい?
そして、微妙に言い回しが違うのが気になる…
ヴォイド…それって実は願望?
私は、食べちゃいたいまでは言ってないんだが…
まぁ、若いっていいよねってことで、突っ込まないであげよう。
さて、ここら辺でナリアッテの話題に戻ろう。
「エーと、サロンがなくなったって?」
「はい。サロンがなくなったというより、どうせなら効果的な人物が揃ってからのほうがいいだろう、という話になったのです」
効果的な人物ねぇ?
人物像を少し思い描く。
レイの人物像を本格的に固めるのに、有効的な人間かぁ。
現在城内に流れている噂を本物にすり替えるだけの、影響力と発言力がある者。
となると、それなりの地位がある人物。
かつ、真昼間からサロンに顔を出せる時間的余裕のある者。
官僚・軍人は忙しそうだしサロンになんて来ないだろう。
てことは、ニートかリタイアかリクルートかってところ?
うーん。
噂好きなら女性かな?
女性ならどんな人でも顔を出しそうだ。
「どんな人物?」
「ルイ様。この王城に住まう限り、早かれ遅かれ必ずお会いする方です。会っておいて損はございませんわ。その方の心さえ掴めば、随分と王宮生活が楽になりますわよ」
つまり、機嫌を損なえば恐ろしい事態になると。
ますます会いたくなくなってきた。
「ロイミオ王女殿下には、一度お会いするべきです」
う、表情を読まれた。
「接点がないのなら尚更サロンに行くべきです。ただ、今はウェイルア学院におられるので、サロンデビューは殿下が戻られてからとなります」
ウェイルア学院とは、団長も通っていたエリート養成セレブ学院だ。
セレブ学院と言うのは少し語弊がある。
一般民の受け入れも行っており、この学園の10%は平民と聞いた。
さらに、人材確保の為、各国から援助資金が出ており、この学園の教育費はほぼ無償だ。
つまり、かなり家計に優しい教育機関なのである。
それでも平民の入学率が悪いのは、セレブと平民の間に横たわる、教育に対する意識格差によるものだ。
幼少期から教師に教育を施され、この学院を目指すセレブリティーと、勉強する位なら働けと物心がつく頃から教育される平民。
教育に対する考え方が180度違う。
この格差が、この10%という数字に現れているのだろう。
とはいえ、王族だろうと何だろうと水準を満たせない者は容赦なく落とすのが、完全実力主義のこの学院のモットーらしい。
過去この学院に入学・進学できなかった王族・貴族は枚挙に遑がない。
とまぁ、そんな学院に通う王女様は、時々王や王太子に会いに来るらしい。
さぼり?
それにしても、王女ってそんなに気軽に会えるものなのかな?
「ええ、王宮内にいる限りは結構簡単にお見かけする事が出来ますよ。よくサロンに出入りしたり、お茶会のお誘いがあればよく顔を出されますし。陛下によく似てらして、楽しい事が何よりお好きな方ですわ」
うわー、玩具にされそうだな。
ナリアッテとは気が合いそう。
「ちなみにル・レイ会のメンバーでもあります」
なんだって!?
玩具にされそうではなく、確実に玩具ではないか。
恐るべし、ル・レイ会。
この企画にかんでる奴の名簿一覧が欲しくなってきたよ。
ハはははは。
そんな時お腹がなる。
そう、朝食がまだなんだった。
取り敢えず、ごはん食べよう。




