現実主義者からみた不審人物の考察
「さて、話を戻すが、なぜ近衛三官が不審人物の監視をしている?」
キースが一瞬ヴォイドに目線を移しながら問う。
「手近なところに、監視できる人物がいなかったから。誰かに引き継いですぐに戻るって言っていたけど、あの様子じゃ戻れそうもないなぁ」
ヴォイドの様子を見て思わず「うーん」と唸る。
「ルイ、どうしてあの人物が不審だと思った?」
それについては私も疑問だ。
なぜおかしいと思ったのだろう。
まず、この大広間の2階の入り口に立った時に、私はいつもの癖で全体を見渡した。
出入り口のチェックと、その周辺にいる人物(特に警備関連)。
天井や柱の影。
別に何かを見つける為とかではなく、職業病みたいに癖付いているだけだけど。
こういう人がたくさんいる時は、周囲をざっと見る癖があるのだ私は。
そこでふと1階フロアの左壁方向の位置に立っている人物が目についた。
別段おかしい所は何もない。
特に目立った行動をしているわけでもなく、不審な動きをしているわけでもない。
あいにく表情までは判らなかったが、雰囲気に怪しい所も何もない。
なぜあの人物に目が行ったのか、その時には判らなかった。
フロアに降りて、アリーオさんやファインさんエイウェン嬢と会っている内に、その場所から少し離れた所にその人物が移動していた。
せっかく近くにいるのだから、エイウェン嬢と話しながらその人物の観察をしてみた。
まず、その人物のバランスの悪さが少し気になった。
例えばこの華々しい場所にいながら、ファッションが微妙に地味とにかく地味、目立ちたくないからという理由だけで服装を選びました的な、地味さ加減だ。
というか、これは地味を超えて、野暮くさいというかなんというか。
言うなれば、この場にそぐわない。
一歩間違えれば、悪目立ちしそうだ。
その人物の持つ雰囲気が、ぎりぎりでその一歩のところのラインを押し留めている、という感じなのだ。
どちらにせよ、目立ちたくないと言うならば、むしろ服装は周りに合わせるべきだ。
"木は森に"がセオリーというのに。
立ち姿も、周りにいる連中の様に気取った感じではなく、どちらかと言うと警備みたいな硬さを感じる。
まぁ、護衛任務に就く時TPOに合わせて私服になったりする事もあるので、この国でももしかするとそうかもしれない。
いわゆる私服警官ならぬ、私服警備官。
と思ったので、ヴォイドにその事を尋ねたら、警備は騎士礼服が基本だと言われた。
私服での出席は、プライベートで依頼された時か、個人で招待された場合に多いらしい。
なので、任務中の騎士は全員騎士の正装をしている。
んじゃあ、あれ誰よ?
潜りの一般人とか?
それはないなぁ、国王主催の夜会で身分低いの私ぐらいだし。
本当に誰も見た事も聞いた事もないというような人は、今日は招待されるはずがないんだとか。
それで、ヴォイドが監視する事になった。
と、ここまでの経緯をキースに話したら、何かを考える風にあごに手をやっている。
「キースは知ってる?あの人」
「いや、知らないな」
「そっか。まぁ、騒ぐのもなんだしなぁーと思って、こっそりヴォイドに監視してもらってるんだけど。変な噂もあるみたいだし。判断は現職さんに任せるよ」
私が首突っ込むのもなんだし。
あくまで情報提供だけにしておく。
「一応、今から隊長の耳に入れておく」
「あ、じゃあ、私も挨拶に行きたいから一緒に行こう」
本音は、1人で残されたら、又女の子にからまれそうだったからなんだけど。
うーん睨まれてるけどそこは我慢だね。
ちらっと不審人物に目をやってから、歩きだした。




