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現実主義者の世話人めぐり(第1世話人)

二階入り口付近から、ヴォイドに手を引いてもらって階段を下りる。

うわー、これはきついな。

何というか、視線恐怖症1歩寸前。

注目浴びてますよ。

ヴォイドだけが注目浴びてるのかと思ったら、どうやら私も対象に入っているらしい。

謎の客人として、私の噂が宮中に広まっていたみたいだ。

その正体が今日明かされるというのだから、皆注目するわな。

この階段降り切ったらきっと囲まれるだろうなぁ。

質問したくてうずうずしている記者団のようだ。

で、長い階段を下りている途中、フロア全体をざっと見る。

右手前方に、団長と隊長改め副団長が、女性にとっつかまってるのが見えた。

そこから離れた後方の場所で、キースが男性と話しているのを女性が遠巻きに囲んで見ている。

反対側に視線を移すと、女の子の集団があると思ったら、中心にはファインさんがいた。

あれでは動けんだろうな、お気の毒に。

そして宗谷永輝はなぜか男に囲まれている。

がよく観察すると、あからさまに集まりはしないが、女性が話す機会をうかがっているのが判る。

アイオンさんが、会場の警護の為壁に張り付いており、その隣には、先日私にアリオイエさん宛ての荷物を頼んだ人もいた。

で、視線を正面に戻すと、アリオイエさんの姿が見えて目があった。

にっこり微笑まれた。

あれ?

琉生としては、初対面だったはずだが。

気付かれてる?

副団長辺りが話したのだろうか。

ま、いっか。

心持ち首をかしげながら微笑んでおく。

そして、とうとうフロアに着地。

一歩進むごとに、包囲網が完成していく。

来るぞ来るぞ、質問タイム。

これは、あれだな、あれに似ている。

転校初日の休み時間の光景。

こぞって質問攻めにされる、あの休み時間の一場面。

もしくは、疑惑をもたれている政治家に集まる記者団。

どちらも、質問される方は大変だ。

ちょっと緊張していたら、ヴォイドがフォローするから大丈夫と言ってくれた。

何とも頼もしい言葉だ。

気合を入れて、笑顔を張り付けて顔をあげると、目の前にアリオイエさんがいた。

「ヴォイド、今日は美しい花を伴っているね。君にしては珍しい。」

アリオイエさんが、親しげにヴォイドの話しかける。

「アリーオ。先日ぶりだな。紹介するよ、本日エスコートをする事になった、ルイ=タダ様だ。ルイ様、こいつはヴォクィッツ騎士団補佐官です。主に、騎士団関連の雑用係みたいな仕事してます」

ヴォイドが、まるで初対面だというように紹介を始める。

「こいつって。しかも雑用係とはひどいな。まぁ否めない部分もあるが。あぁ、はじめまして、アイエネイル・ルイ=タダ。こうしてお会いできた事を嬉しく思います」

アイエネイルは単体で使うと"お嬢様"とかになるが、女性の名前の前に付けると敬称になる。

いわゆる、儀礼称号だ。

主に身分が確定していない女性に、この国では使用している。

「はじめまして、ヴォクィッツ騎士団補佐官。私もお会いできて光栄です」

そう言って、礼をする。

「いやはや、噂に違わぬ女性のようだ。よければ私の事は、アリーオとお呼び下さい。アイエネイル・タダ」

噂…いったいどんな噂が立っていたのか怖いな。

「まぁ、どんな噂か恐ろしいですわ。後からどのような事を尋ねられるのかしら」

わざと身震いする。

おほほ、とか言っている自分が一番恐ろしいのだが。

「貴女の顔(かんばせ)が、神秘的で美しいともっぱらの噂ですよ」

変わった顔で珍しいという噂なんだろうな。

言葉の表現はいくらでも変えられるいい例だな。

「まぁ、お世辞の御上手な事。おだてても何も出ませんのに。私(わたくし)の事はルイとお呼び下さいませ、アリーオ様」

ふふっと微笑みながら言う。

ほぼナリアッテの真似だ。

「…。この朴念仁のお相手ばかりでは勿体無い。アイエネイル・ルイ、私と是非1曲踊っていただけませんか?」

「朴念仁…アリーオ、もうちょっと言い方があるだろう。ルイ様、こいつの誘いに乗っては駄目ですよ。絶対後で後悔しますから。こいつと踊る位なら、私にしておいた方が幾分かましです」

ここは、ヴォイドの言葉に乗っておく。

アリーオさんはきっと、人から情報を引き出すのがうまい人だ。

踊ってる間中根掘り葉掘り聞かれる様な気がする。

「ふふ、私のエスコートがそう言ってますわ。アリーオ様、申し訳ありませんがダンスは又の機会に」

「それは残念だ。まぁ、近いうちにお会いする機会もあるでしょう。その時はもっとゆっくりお話ししましょう」

フはは、これはばれてる。

絶対、レイと琉生ばれてる。

最後の方の言葉のニュアンスが、確信持ってるよって言ってた。

しかも満足気に言っている。

以前、ヴォイドの変装に駄目出ししたけれど、私の方の変装も考察の余地があるみたいだ。

変装に関しては、結構自信あったのに。

「それでは、よい夜を」

「はい、アリーオ様もよい夜を」

そう言って、アリーオさんとは別れた。

一応、ここで世話になるだろう相手と挨拶はすませておきたい。

次のターゲットは…副団長かファインさんだな。

どちらか近い方から回ろう。

こうして、世話人めぐりが始まった。

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