現実主義者の逃げの一手
結局ましな案が出ずに行き詰ったので、偽13番に話しかけて見る事にした。
「あ、エーと、偽物13番さん。い、いったい私に何のご用でしょうか?」
ああどうか、いきなり切りかかるという人種ではありませんように。
「ああ、悪いな。連れ出して」
「いえ」
私は首を横に振った。
「アレイの奴と、まともに戦える新人がいるとは思わなくて、少し興味がわいて話してみたくなったんだ」
アレイとは、団長の事だ。
確か、アナレイ=ジャレイア=ジェン=ジアヴァイエとかいう長い名前だったな。
「興味、ですか?」
うう、嫌な方向に話がいきそうだ。
相手に気付かれないよう、徐々に体を横にずらしていく。
とにかく、いつでも逃げれる体勢を整えておこう。
「ああ、試合中お前のやってた剣の型だが、あれは一体何だ?」
何だと聞かれても困る。
太極剣とか、どうやって説明すればいいのやら。
中国発祥の古代拳闘術の一種と言うと、中国の説明をしなければならないし、生まれ故郷の隣国で発祥した古代拳闘術と言うと、生まれ故郷の説明をしなきゃならない。
どこで発祥したか判らない謎の古代拳闘術と説明すると、なんだか怪しい感じがするし。
うーん。
「あれは何だと言われてもですね、説明が難しいです。どこの発祥だとか、そういった詳しい事を知っているわけではないですし…」
異世界発祥ですとか言えないしな、ここは有耶無耶で。
「とにかく、私が小さい時に出会った方に、教えていただいた剣の型なんです」
これは本当の事だ。
10歳位の時に出会った楊師に、護身用として太極拳を教わった。
たった数年しか教わらなかったが、これのおかげで今の私がある。
言葉で適当にさっきの型について説明をしつつ、体を徐々に横にずらして行く事をしていった。
うん、後もう少し。
「ふーん?じゃあさ、今からその型もう一度見せてくれない?」
偽13番が、いきなり剣を抜く。
他国の宮城で剣を抜くって、おいおいおい。
なんですか、御乱心ですか?
思わずホールドアップをする。
うわ~、なんかこっち注目されてますが…
主に要人警護の方々の視線が痛いです、はい。
「一体何の冗談のおつもりですか?他国で、しかも宮城敷地内で剣を抜くなどと。国際問題に発展しかねませんよ?」
と、一応もっともらしい事を言ってみる。
さらに、横にじりじりと移動。
「そんな事にはならないから安心しろ。だからその剣を抜いてさっきの技を見せろ」
あー、ヤバい。
相手が苛立っている。
仕方ないので、こちらも剣を抜く。
はー、結局怪我コースじゃないか。
団長戦の時でさえ、怪我しなかったのに!!
適当に合わせて、逃げようか?
逃げきれるかな?
いや、逃げなきゃまずい感じがするし。
護衛の方も、ちょっと尋常じゃない空気出してるし。
一応逃走用に、この位置キープしたし。
まぁ、相手も気づいてるかもしれないけど。
そして、集中し始めた時に、救いの神が現れた。




