現実主義者の入団テスト(2日目)
試験1日目を終え、あのファンタジー部屋に戻った。
そうしたら、部屋で夕食をとった後、ナリアッテに寝るように強要された。
というわけで、昨日は何もせずに寝た。
で、相も変わらず6時に目が覚める。
取り敢えず、身支度をするため無駄にでかいクローゼットに行き、男物の服をチョイス。
これからの為に、ナリアッテが用意してくれていた私服だ。
昨日はうっかり、ジョギングに隊服を着てしまったが、今日は私服にする。
万が一隊員に見られてもいいようにだが、あのコースには結構顔馴染みの人もいるので、意味がないだろう。
もし合格したとして、その事について何か聞かれたら、副団長にでも聞いてくれといって、かわすしかないよなぁ。
取り敢えず、私服を着用し、朝の日課となっているジョギングをするべく訓練コースへと向かう。
隊長から入団試験の話を聞いてから、レイと琉生を使い分けている。
せっかくここでのIDもらったのだから、使い分けないとというのは建前で、来るべき時が来た時の保険に。
どちらかの名前が社会的に抹殺された場合に備えて、使い分けたほうがいいだろう。
なので、その事を知る人間は少ない方がいい。
という事で、レイモードの時は従業員通路を歩く。
その方が目立たなくて済むし、都合がいいのだ。
で、コースに出たら、ヴォイド(変装済)に呼び止められた。
「おはようございます。ルイ様。」
「おはようございます。アンヴォイド=クォイア=ジェウェレイ=ジャミニ近衛三官。いいお天気でございますね。と言いたいところですがその前に、今は対等に話さないと悪目立ちしますよ?」
主に私が。
ちらっと視線を横に動かしたら、つられたようにヴォイドも視線を動かす。
こちらを気にする人はいないが、それでもちらほら人数がいる事に気付いたみたいだ。
「え、あ。すみませ…すまん」
「あはは、取り敢えず走ろうか?」
と言って、私は走りだした。
しばらく走っていると、ヴォイドが口を開いた。
「前から疑問に思っていたんだが、ルィ…レイさ…レイが本気で走ったら、このコースを1周するのにどれ位かかるんだ?」
「そうだな、もし私が本気で走ったら、昨日は10位以内には入っていたかもしれない。でも、このコースにあの池がある限り、本気で走っても結果は同じかも。」
レイモードの時は一応口調も変えておく。
オネエっぽくなるから。
そのキャラで行くのも面白かったかもしれないが…
「池?」
「そう、池。ここから40分、あぁ、40ウェル位のところにある池。そこで、つい足がゆるむんだよ。きれいだから思わず」
ちらっとヴォイドを見ると、納得したようなしてないような顔をしている。
「俺のペースに合わせてゆっくり走ってた、とかではなく?」
あ、やっぱりそこ気にしてたか。
「あー、ないない。初めの2日位だけだよ、ペース合わせてたの。ヴォイドはもともと基礎体力があるから、慣れてきてたでしょ?途中から。だからほとんど自分のペースで走ってた。第一、普段からそんなに速く走ったりしないしね。持久力をつけるなら、速く走る事より、より時間を長く走る事の方が意味があるし」
納得してくれるかどうかわからない言い訳をしてみたが、どうだろう?
「そうか」
「うん。あ、そうだ。今日の試験って実践形式?」
「どういう意味だ?」
「いや、思わず相手の顔殴ったりしたら、それは反則になってしまうのかな?とか思って」
すごく今更な質問してるなぁ、私。
「ああ、いやルール自体がないから、殺さなければいいと思うが。それより、勝つつもりでいるのか?相手は隊長クラスだぞ」
なんて大雑把なルールだ。
「いや、勝つどころか負ける気満々だけど?でも、負けるにしても相手を納得させなきゃならないし。じゃあ、その基準はどこにあるのかと思ってね?特に型にこだわっていてその形以外は脱落とかじゃシャレにならないなぁとか。それに相手の体殴ったり蹴ったりするのが違反だったら、脱落確実だなぁとか。」
「ああ、それはないな。心配ない」
「そうか、それはよかった」
剣術のみとかだったら、見込み無しって言われるかもしれないから、ちょっと心配だったんだよね。
殺しさえしなければ何でもありという事なら、何とかなるだろう。
うん。
なんか色々話しながら走っていたら、いつの間にか1周してた。
今日は時間経つのが早かった気がする。
「…お前、らは、ば…化け物だ…」
後ろから付いてきていた隊員の誰かが、そう言い捨てて去って行った。
化け物はひどい。
少し傷ついた。
さて、いったん部屋に戻って、ごはん食べる。
相変わらずパンがおいしい。
今日はなんだかいつもより品数が多い?
ナリアッテが気を使ってくれたのだろうか?
ちらっと見ると、天使の微笑み。
ああ、癒される。
どうせなら一緒に食事がしたい。
レイの姿だったら許されるだろうか?
いや、今度はこっちが身分低くなるから無理か。
等と考えていると、ノックがあった。
ナリアッテが応じてくれた。
どうやら隊長らしい。
「食事中か、すまん。出直してくる」
「や、いいですよ。構いません。隊長も食べます?」
言いながら、隊長に前の席を勧める。
「いや、俺は先に食べた」
「そうですか。それで?何か問題でもありました?」
「ああ、いや。たんに激励というか忠告に来た」
「・・・・・?」
「死ぬなよ」
え?
どんな試験なんだ。
ただ、実力見る為のテストじゃないのか?
死にそうな目に会うのだろうか?
「今日のテストに、少し加減を知らない審査官の参加が決まった。昨日急な変更が入って、1日目の結果の上位者を担当するそうだ。もしかすると、その方とお前が当たるかもしれない」
ええ~やだなぁ。
怪我とかしたらまずいし。
いや、未知ウィルス問題は、私という被検体で検証済みなのでいいんだけど、女だって速攻でばれるのもねぇ。
隊長権限で何とかならないのだろうか?
とか思ってたら、無理だと言われた。
ちっ。
「どんな性格の人ですか?人の話聞かずに突っ走るガテン系ですか?」
「いや、冷静沈着で、聞かなくていい話まで聞く人だ、普段は。だが、剣を持たせると人格が変わる」
「ああ、居ますねそんな人。」
「だから、気をつけろ」
「まぁ、気を付けてどうこうなるものでもありませんが、念頭に置いておきます」
「そうしろ」
そう言って隊長は出て行った。
隊長がその人物に敬語を使っていたという事は、相手は身分が高いのか。
う~ん、なんか厄介事に巻き込まれる気配がする。




