現実主義者が至る先は
就職活動の事はもちろん、誰にも相談していない。
言えば、反対されるか、体のいい閑職を言い渡される事だろう。
反対されるだけならばまだいい。
体のいい閑職に回された時、果して私はここにいる事を許されるだろうか?
例えば、異世界人を政治の中枢に住まわせておくメリットを考える。
先人の言があって異世界人の保護が約束されていたとしても、それはあくまでも400年前の話だ。
400年前の人間の言葉を、この国自身が守る必要があるだろうか?
ましてや、異世界の事は一部の人間しか知らないという状況で。
法律化されていたり、文書で残されているならばファインさんは会った時必ず言っていただろう。
言わなかったという事は、文書化されていないか、故意に隠されているかのどちらかなのだ。
どちらにせよ、この国の王の意向如何で、異世界人である私などどうにでも出来ると考えられているはずだ。
つまり、そのどうでもいい存在が中央に住み着いている。
大人しくしているだけならば監視を置くだけですむし、会う人物もある程度ならコントロールすることができる。
そういう意味では、私が中央にいた方がこの国にはメリットがある。
しかし、メリットはただそれだけだ。
異世界人は400年前の人物の子孫だけでいい。
私という存在は、ただお荷物なだけだ。
下手に動かれると、デメリットの方が大きいだろう。
少しでも、デメリットがあるならば、どうにかする方向で上では話がまとまっているはずだ。
つまり、放逐か監禁か死。
取り敢えず、そう判断されるまでに自分の立ち位置を確保しなければならない。
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転職の際には、なぜ転職するのかという明確な理由が必要だ。
転職理由としては、給与や待遇の向上、職種や仕事内容の満足度、人間関係や社風、会社の将来性、スキルアップの可能性、などがあげられる。
ただしこれらは、断片的な情報に過ぎず、具体的に掘り下げておく必要性がある。
そして何よりも忘れてはならないのが、面接の際に必ずといっていいほど転職希望の理由を聞いてくる事だ。
ポジティブな理由になるように、事前に整理しておかねばならない。
例えば、給与に不満があり転職を希望していたとする。
単に、「以前勤めていた先の給料が安かったからです」では、まず落とされる。
「私は、自分の実力のバロメーターが現れやすいのは給与だと考えています。年功序列ではなく、実力に基ずく成果主義を採用されている御社を希望いたしました」というように、整理をしておく事が肝要だ。
それに、転職の理由を掘り下げて考えておく事で、会社選びの基準とする事が出来る。
何故辞めるのか、どうしてその会社でなければならないのか、明確に自分の中で把握しておかなければならない。
以上を踏まえて、がんばれ私。
自己アピールが再就職への道だ。
うん。
姿勢を正す。
正面を見る。
相手の顔を見る。
「ローアム=フォンジッニ=デラ=ウナオイア王国騎士団副団長。私レイ=タダノ=オカシズキー=ド=ジャポンは、王国騎士団への入団を希望したく存じます」
おお、2人とも驚いてる驚いてる。
「何を考えているんだ…」
呆れたように言う隊長。
「私には職が必要です。どのような職でも本当はかまわないのですが、文字もろくに解らず、身元を保証する者もいない今の状態での働き口は、限られています。そうなると、必然的にナリアッテ様か副団長の下で働くのが1番だという事になります。しかしながら、王宮内で仕事をするには、貴族からの推薦が少なくとも複数いると、お伺いしました。その条件を当てはめるのならば、ナリアッテ様を頼るのは無理があると判断いたしました。一方、騎士団が一般公募もされているという話もお伺いしました。それにより、私が働くとするのなら、必然的に騎士団内になるだろうという結論に達しました」
「大人しくしているという選択肢もある」
隊長が言う。
「ええ、私が既存の存在であるならば」
隊長は、ハッとして私を見た。
「お気づきのように、私は異質すぎます。何もせず、止まるだけの存在ならばいずれ排除されるでしょう。そうならない為にも、予防線を張っておきたいのです」
そこで行ったん言葉を切る。
目を伏せ、改めて隊長の目を見る。
「今、頼れるのはローアム=フォンジッニ=デラ=ウナオイア王国騎士団副団長、あなただけなのです」
我ながら、ずるい言い方だ。
そんな事を言ってもどうにもならないものはどうにもならないのにと、頭の片隅で考えた。
しばし考え込んでから、隊長が口を開いた。
「先に断っておく。騎士団に女はいない。周りは男ばかりだ。よって、性別は隠してもらう事になる。」
隊長の前向きな言葉に思わず目を見開いた。
80%断るだろうと思っていたからだ。
この流れだと、どうやらうまくいきそうだ。
「初めは訓練にも参加してもらう。それでもいいか?」
訓練でも何でもどんとこい。
私には耐えきれる自信が少しだけあった。
それは、私の幼少期の経験と、前の職場の特殊性に基づくものだ。
よし、なんでも来い。
「ありがとうございます!!」
そう言って、私は勢いよく頭を下げた。
「まだはやい。入団できるかは、その訓練後に決める。到底女の身には耐えられるとは思わないけどな」
そう隊長は言うが、耐えなければ後がないのは目に見えている。
取り敢えず、これで足場固めが4割くらい済んだ。
今はその事に安堵する。




