現実主義者の初めてのお使い
私が、ここに滞在してから、毎朝1時間走って、朝食食べて、前日に教えてもらった文字を復習しつつ暇そうなアンヴォイドさんにこの国のあれやこれやを教えてもらう事が日課になった。
そうやって、過ごす日々が5日間続いた。
不思議な事にあの日から、隊長や、キース、ファインさん、宗谷英規と会わない。
それぞれみんな忙しいんだろうな?
と思いつつ、今日も日課のジョギングをしようと訓練コースに向かっていた。
すると、突然声をかけられた。
「おい、そこの。悪いが、これをアリオイエのとこまで持っていってくれないか?」
と言って、目の前の男に、いきなり何か渡される。
何やら忙しそうだ。
アンヴォイドさんが、何か言おうと一歩前に出た。
すると、男はアンヴォイドさんにようやく気が付いたのか、急に姿勢を正した。
「こ、これは!!失礼しました。ジャミニ近衛三官!」
といって、敬礼。
ここの敬礼は、胸に当てる式かぁ。
そして、アンヴォイドさんはやっぱりエリート君かぁ。
アンヴォイドさんが口を開こうとしたので、目で制す。
ここで、私の事言われると何か居辛くなりそうだし、ここは黙っててもらおう。
それに、このまま勘違いさせておけば、ここの一般兵として働き口を確保出来るかもしれない。
働けなくても、コネができるかもしれない。
打算がいっぱいです、今の私。
「あの、こちらをアリオイエ様のところへお持ちすればいいのですね?」
と、私が言うとアンヴォイドさんがちょっと焦っている。
何やら反対しそうなので、目でけん制する。
目の前の人物が「頼む」と言ったが、何か気付いたのだろうハッとなって慌ててアンヴォイドさんを見る。
恐らく彼は、私が何か別の用事をアンヴォイドさんから受けている最中ではないか?とでも思っているのだろう。
彼の気が変わられても困るので、立て続けに質問する。
「では、アリオイエ様が今どちらにいらっしゃるのか、教えて頂けますか?」
というと、目の前の彼に妙な顔をされた。
「申し訳ありません。私はまだ不慣れなもので」
うん、嘘は言ってない。
「ああ、副団長の部屋で書類の整理をしてるはずだ。それを持っていって、ただ渡すだけでいい」
「了解しました」
と、見よう見まねの敬礼もしてみる。
すると彼は、「頼んだ」と言い残して走り去ってしまった。
では、早速ミッションスタートと行きましょうか。
って言っても、単なるパシリですが。
「ということで、アンヴォイドさん、副団長の部屋ってどこですか?」
と聞いたら、盛大に溜息をつかれた。
「あの、どうして受けてしまわれたんです?」
「うん色々興味があったから。まずかった?」
「ルイ様の行動の自由は保障されていますので、俺では止められませんが…」
お?一人称が俺になった。
だいぶ馴染んできたのかな?
「取り敢えず、ヴォクィッツ騎士団補佐官の所まで案内します」
どうやら、アリオイエさんは、騎士団の補佐官をしている人らしい。
「頼んだよ、ジェミニ近衛三官」
と、おどけてみたら、ため息交じりにアンヴォイドでいいですと言うので、
「長いから、アンヴィーかヴォイドかイドって呼ぶけど、どれがいい?」
と聞いてみた。
即答でヴォイドと言われた。
イドって呼んでみたかったんだけどなぁ?
「わかった。ヴォイド、それじゃあ行きましょうか?」




