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現実主義者と侍(?)

隊長、どうしたんだろ。

あのファンタジー部屋にいた時から、様子がおかしい。

心ここにあらずで、何か聞いても生返事のまま。

先程ナリアッテと出て行った時に何かあったのだろうか?

聞く気はないが…

それにしても歩き方まで変わってる。

訓練ではありだけど、実際見ると笑えるなんば歩きだ。

なんば歩きとは、かつて明治時代までされていた歩き方で、側型動作といわれる。

右足を前に出すと、同じ方向の手が前に出るという動きをする。

明治時代までは、この歩き方が主流だった。

この動作は、他国の武術の型にも見られる動きで、最近ではスポーツのトレーニング方法として用いられる事もある。

侍歩きともいうらしい。

この、侍歩きをしている今の隊長は冷静ではないと思う。

でも、隊長の今の職って(正確には騎士副団長らしい。隊長はあだ名)どんな時でも冷静になれないとまずいんじゃ。

という事で、思いっきり殺気を込めて隊長に念を送ってみた。

あ、ナリアッテがビビって固まってしまった。

ごめんごめん。

隊長は、さすがというかすぐに反応して、すかさず剣を抜き私の首筋に当てる。

「…っ!!この、馬鹿!怪我をしたらっどうする!」

あらら、怒らせすぎた。

とりあえず謝ろうか。

「ごめんね?」

すまなさそうに、隊長の顔を見ると、固まった。

なんだか、メモリがヤバ気なパソコンの動きみたいで面白い。

じーっと見てると、「~~~~!!もういい」と言って、拗ねた。

あらら。

ふと、ナリアッテを見ると、瞳から涙がはらはらと流れている。

「!!!!!な、ナリアッテ!?」

すぐに近寄って、謝罪する。

「怖い思いをさせたね。ごめんね。」

大粒の涙をドレスで拭ってやりながら、ぐっと抱きしめた。

役得。

「ルイ様がっ殺されてしまうかっとっ、おもっ、思いまっした。」

しゃくりあげながら言うナリアッテ。

「大丈夫だよ。例えさっきから隊長が変でも、きっと体が自動で動いてくれると思ったから。副団長様だよ?へましないって」

「…変!?」

「そうですね、例えっ変っでも、腐っても副団っ長ですものっね。」

「くさっても…。と、とにかくだ、ルイ!」

ん?

「何?隊長」

「何じゃない。宮内で今のような殺気は出すな。殺されても文句は言えんぞ」

ああ、そうだ。

ナリアッテから離れて、隊長に向き直る。

「すみません、隊長」

そして、頭を下げる。

そうだった。

ここは異世界の王宮。

気の緩みが、悲劇を生む事もあるのだ。

「そんなにしゅんとするな」

そう言って、隊長が下げていた頭に手を載せる。

その手が優しい。

「隊長…」

そう言ってソロっと顔をあげると、目があった。

目がそらせない。

なんて目力だ。

そのきれいな翡翠の目を、私はただじっと見つめるしかできなかった。

隊長の手が頭から私の頬に移動する。

隊長は、長い指に頬にかかった後れ毛をからめ、そっと私の耳にかけた。

そして、私の耳たぶをそっとなでる。

何度も。

慈しむ様に。

翡翠の光はやがて私の目から外れていき、徐々に熱を帯びながらゆっくりと鼻へそして唇へとその光は移動する。

「…。…ルイ」

え?

その呼び方が、どことなく掠れを帯びていてドキッとした。

「あ、いや、なんでもない。さて、目的地はあそこだ」

頬に沿っていた手を近くの扉に向けて、何かをごまかすようにして隊長が言う。

ナリアッテが意味あり気な視線を隊長に送っていたが、隊長は気付かなかった。


「お、俺は今何をしようとした!?」

と、小さくつぶやいたパニック中の隊長は、やはり侍歩きになっていた。

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