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掃討戦とライブの報告書

 「いや、何このタイトル。」


 目の前にある報告書を机に叩きつけ、持ってきた持ち主を見返す。


 「えっ、報告書ですよ?」


 何を悪びれるでもなく、ルルセラが、あざとさをアピールしながら小首を傾げる。


 「はぁ、何でライブの報告書まであるの、というか、あの後ライブしてたのか。」


 手元に持つ2枚の報告書、1つはモンスターハウスのもの、もう1つには温泉ライブ大成功、その後には嬉しそうに音符記号まで書かれている。


 「あの後?あれ?支部長、掃討戦見に来てたんですか?」


 「あ、いや、言い間違いだよ、その後ねその後。」


 危うく口を滑らせる所だった。


 「まぁ、イレギュラーがあった割に、被害が無くて良かったよ。」


 「偶然居合わせて、偶然助けてくれた、S級冒険者の助力があったので、助かりました。」


 まさか、メルを味方に引き込んでいたとは思いもよらなかった、ラリスタファンクラブの人脈恐るべしか。


 「それで、何故ライブの報告書まであるのかな?」


 「えっ、それはやっぱり、出資者の支部長には少しだけでも臨場感を味わってもらいたくて、皆で意見出し合って仕上げた力作ですから、期待してくださいね。」


 報告書を眺め、ルルセラの言葉に耳を傾けていた俺の動きが止まる。


 「なんて言ったの?歳かな、ちょっと聞こえにくかったけど、出資者って聞こえたんだけど…」


 「言ったじゃないですか、費用は立て替えとくって、必要物資しっかり支部長名義で立て替えさせて頂きました。」


 「待て待て、掃討戦についての必要物資がどうしてライブの出資者に繋がる。」


 彼女の明後日の返しに頭が混乱する。


 どう考えても繋がらない必要経費の使い道、そして、胃がざわめきだす。


 「ちゃんと掃討戦の予備事項呼んでくださいよ。」


 「なになに、備考、ラリスタライブ開催前イベント掃討戦、後、ライブ開催特別依頼…新手の詐欺じゃねぇかぁぁぁ。」


 俺の怒鳴り声が東支部に響き渡る。


 「えぇ、ちゃんと支部長の承認印も貰ってますし、言質も取ってたので詐欺じゃないですよ。備考も後付けではありません。」


 「いや、招集依頼にこんなものは無かったはず。」


 確かに調査任務と招集依頼にはこの備考は無かった

、依頼を受諾したのだから間違いない。


 「招集依頼には無かったですよ。決行依頼にはしっかり書いてましたけど。」


 何やら可愛子ぶって舌をちろりと見せる彼女に青ざめる。


 突如として朝一番で決行された依頼、あの時急に受諾印を求められたのはこれが原因か、まさか、職員までもが俺を財布と思っているとは、誰も信じられないじゃないか。


 「なので、依頼に必要な補給物資、ライブに必要な資材物資の請求書です。」


 悪びれる様子もなく手渡してくる請求書、勿論宛名は俺名義、この世界で言葉の意味は重い、俺の名義を使えているという事は誓約の呪術の発動が可能な口約束と認められているからだ。


 「かぁぁ、折角稼いだのに…」


 「それでは、宜しくお願いしますね支部長。」


 頭を抱える俺に、いつの間にか、部屋から出ていたルルセラが、一言だけ残し出ていく。


 「くっ、流された。しかし、掃討依頼ならば経費として出るはず。流石にこの金額はいつも通り許容出来ないだろ。」


 請求書に示された金額に、もしもを考えれば、胃が痛み幻痛に腹を抑えてしまう。


 「その件なのですが。」


 「ひゃわっ!」


 ぬっと突如現れた白い細い腕がカップをデスクに置き、いつの間に居たのか分からないナーネルちゃんが背後に立っていた事に気づく。


 「また、斬新な驚き方をしますね。」


 「び、びっくりさせないで、何時から居たの…」


 「ルルセラさんと交代で入って来ていましたが、請求書に夢中でしたので。」


 真面目モードのナーネルちゃんはいつも通りの淡々とした口調で話す。


 「それよりも、請求書なのですが、本部から依頼とは無関係の資金が混ざっている為経費は落ちないとの通告書が届いています。」


 「またリアルタイムな報告が来てるんですね…えっ?駄目、なの?」


 油を挿し忘れた機械の様な動きで、背後にいる彼女へ顔を向ける俺。


 「他支部なら問題なかったとは思うのですが、うちは、あれですので。」


 彼女の言葉に、もう一度報告書へ目を通す、その中には冒険者1人1人に配られた支給品の分配数から使用数等事細かに1つ1つ細やかに明記されていた。


 「無駄に精密な報告が、こんな形で災いするとは…」


 他支部の報告は結構アバウトである、几帳面な者も居るが、冒険者には最低限の教養しかない者が多い、それに比べうちは報告書作成の為のノウハウを叩き込まれる。


 その為、識字率も高く正確な運営資金を算出出来るのだが、良い方に転んだ試しはない。


 「じゃあ、この請求書は?」


 「例の如く、支部長のお財布から出る事になりますね。」


 バタンッ!


 目の前が明滅し、途方もない金額の明記された請求書を片手に俺はデスクへ突っ伏すのであった。


 荒稼ぎした筈のへそくり銀行の残高が、副業前より減っていたのは言うまでもない。


 「たまには夢オチであってくれぇぇぇ。」


 週末に響く叫び声は今回もトレイヤ中を駆け巡るのだった。

ストレラは仕事をしている意味はあるのか作者が疑問に思い出しましたね。


毎週、金銭支出して、ドM気まわりないですよね。

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