特S級の指名依頼
冒険者のS級とは、国家に匹敵する力を持ち、個として強大な力を持つ者に与えられる称号である。
強力な破壊力を持つ力を有する者、人智を超えた魔法を使用出来る者、欠損した部位すらも直してしまう治癒魔法を使える者。
S級冒険者と言われている者達は、特別なスキルを保有する者が多い。
そんな彼等、殆どが戦闘狂である事が多いが、何事にも例外がある。
先にあげた治療魔法保持者もその1人であるが、冒険者になり20年余り、討伐依頼達成回数0と一際異質なE級冒険者にもS級の称号が与えられていたりする。
「西側にグリフォンの番の目撃情報ねぇ。何でまたうちに?」
本部からの定期会合から戻るなり、1つの案件をナーネルが支部長室へと運んでくる。
その指示書を、軽く流し見しながらストレラが疑問を投げかける。
「幻獣種のグリフォンなら、A級冒険者でも討伐は可能だろ、わざわざうちに頼む必要無いじゃないか、他地区にやると面倒事が増えるのに。」
「討伐なら回って来なかったでしょうが、依頼内容は、グリフォンの羽の定期収集の確立だそうです。」
その言葉に彼はもう一度指示書を読み返す。
「好評の羽毛布団販売を事業化する為、グリフォンの羽の収集を確立されたし。なお、拒否する場合、東支部における特権を凍結する…」
ストレラの書類を持つ手が震え、今にも怒りが爆発しそうな様相を醸し出すということは無い。。
「ナーネルちゃん、どうしよ、受けないと副業出来なくなるとか、俺の生命線ぶった切りに来たよ、あの銭ゲバ達。」
小心者である彼が、上に逆らう事など出来ようはずもない、それが出来る豪胆さがあるならば、彼が常日頃、胃の痛みに悩まされる事も無い。
「受けるしか道が無いのは、あちらも分かっての通達でしょう。」
「無理難題と切り捨てられないのが困りものだね。」
他から見ればグリフォンを捕獲し、手懐けろと解釈できる依頼、普通に考えれば相当高難度依頼なのだが、ここ、東支部には宛がある。
「あれに頼むしか無いのか、ヤダなぁ。」
「そうも言ってられないでしょう。」
項垂れるストレラ、それをナーネルが溜息をこぼし、駄々をこねる子供を見るような生暖かな視線を向けて見つめる。
「仕方ないか…指名依頼の依頼書作成頼める?」
「分かりました、依頼書は奥サマーズへ渡せば宜しいですか?」
「あぁ、そうだった。護衛依頼と共に渡しといて、彼処は絶対着いていくからね、把握する為には彼女達巻き込んどいた方が楽だしね。」
―――――
指名依頼を出して2日後。
何時もの賑わいを見せるギルド支部に、突如赤い薔薇が咲き誇る。
咲き誇ると言っても幻視なのだが、彼が現れた瞬間、背後に赤い薔薇の幻視が見えるのだ。
大多数の冒険者達は、その異様な光景に視線を向けざる負えない。
何故ならば、その男の後に続く女性達の黄色い声が聞こえてしまうから。
「シュウ、今日も素敵。」
「シュウ様、カッコイイ〜。」
シュウと呼ばれる彼、数少ないS級の称号を持つ類まれなる存在なのだが、それを知る冒険者は少ない。
目立つ業績もなければ、頻繁に依頼を受けるわけでもない彼。
白いタキシードにはキラキラとラメが入り、光沢に光るほど磨かれた革靴が光を反射する、冒険者と言うよりホストな出で立ち。
綺麗にセットされた髪は艶もあり、女性が羨むほどにキメ細やか、目元はキリッと鼻も高くパーツ的には整ってはいる。
パーツだけならではあるが、バランスを崩壊させる顔のデカさがと五等身で全てを崩壊させる。
異質な東支部ギルドでも、彼はより一層異質な雰囲気を纏う存在となっている。
新人冒険者のグループは、彼に熱い視線と声を投げかける冒険者装備を身に纏う後ろが気になるようだ。
身なりは冒険者の女性だが、武器の代わりに台所用品を持つ彼女等、あれをどう使うのか、若い彼等の興味はそちらに向く。
「ナーネルさん、今日も美しいね、それで、支部長の所へ行けば良いのかな。」
デカデカとした顔を、受付に顕に迫られるナーネルも、その圧力に1歩後ずさるが、誰にも悟られない程度である。
「はい、支部長室に居られるので、其方で詳しいお話を聞いていただければ。」
「そうだった、これ、休憩の時に皆さんで召し上がって下さい、貴婦人から頂いたのですが、僕一人では食べきれなくてね。」
「ご丁寧にどうも。」
暑苦しい顔面の圧力に、表情をピクリともさせない彼女のプロ意識には賞賛せざる負えない。
「それでは奥様方、僕は少し席を外す。待っていてくれたまえ。」
自身の後を着いてきたグループに背景に薔薇の花弁を舞散らせ、その場を後に2階の支部長室へとシュウは向かう。
後には、黄色い声を響かせる奥様方のグループ、プレゼントの中身の高級菓子に目を輝かせる受付嬢。
そして、嵐の様な存在が居なくなった事により、何時もの様相を取り戻す冒険者達が残された。




