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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第三十六章 打開策
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打開策【Cパート】

「ストライーク! バッターアウト!」


 四回裏。二番の廣瀬(ひろせ)、三番の福島と三球三振に取った直実(なをみ)は、四番の酒巻と二度目の対決を迎えた。


(コースが見え見えなんだよな、お嬢さん。)


 余裕を持って右打席に入った酒巻は次の瞬間、驚愕(きょうがく)する。

 直実は両目を(つぶ)っていた。


(何を考えてるんだ、あいつは!?)


 羽野と三浦以外は皆、度肝を抜かれていた。

 そして目を瞑ったまま大きく振りかぶる直実。


(俺だって目を瞑ったままサンドバッグに鉄腕ラリアットを命中させた時には驚いたよ。)


 羽野はど真ん中にミットを構えながら、旧技術工作室前での特訓を思い出していた。


「うおおおおおっ!」


 直実が吠えると鉄腕ラリアットから放たれた軟球が唸りを上げる。

 その直後、


 バス――――ン!


 羽野のミットに軟球が納まる。

 その球速、百六十キロ。

 酒巻は自分の打てる球速でありながら手が出せなかった。


「ストライーク!」


 主審のコールと同時に目を開く直実。

 そして羽野からの返球を受け取ると再び目を瞑る。


「へえー、こいつは驚いた。」


 天才は独り言をつぶやいた。


(本当に常識外なヤツだよ、あのお嬢さんは。)


 天才は天才を知るという言葉がある。

 まさに、この対決はそれを地で行くものだった。


「うおおおおおっ!」


 二球目の鉄腕ラリアットが放たれる。


「てりゃあああああっ!」


 酒巻は見切り発車でバットを振る。


 フォン!

 バス――――ン!


 またしてもど真ん中。

 そして、その球速、百六十三キロ。


「ストライーク、ツーっ!」


 判定を耳にして目を開ける直実。

 しかし、直実が目にしたものは口端(くちは)を上げた酒巻の顔だった。


「何がおかしいの?」


 直実がマウンド上から酒巻に問う。


「おかしいんじゃないよ、楽しいんだ。

 キミとの対決が。

 こんなゾクゾク‥‥いやワクワクしたのは初めてだよ。」


「そりゃどうも。」


 直実も口端(くちは)を上げる。

 そして愛嬌のあるタレ目が鋭く変わるや否や、三度、両目を閉じる。

 大きく振りかぶる直実。


「うおおおおおっ!」


 酒巻に対し三球目の鉄腕ラリアットを唸らせる。


「てりゃあああああっ!」


 酒巻も見切り発車でバットを振る。

 コースはど真ん中。


 ガッ!


 再び酒巻の木製バットの真芯に鉄腕ラリアットが捉えられる。

 そして前と同様、酒巻は後方へ軽くステップする。

 だが、今度の球速は百六十一キロ、ほんの少し、振り遅れていた。


 ――フォン!


 着地と同時にバットを思い切り振り切るものの、先程のような飛距離は出ない。

 打球はセンター前へポトリと落ちた。



「両目を瞑って投げるとは、キミの発想力には驚かされたよ。」


 一塁(ファースト)ベース上から酒巻が直実に語り掛けた。


「あんたンとこのピッチャーを見て気付いたんだよ。

 瞳の中にキャッチャーが映ってるって事に。

 だから、きっとあんたも私の目を見て何かを判断してるんじゃないかってね。」


「まさか、こんなに早く気付かれるとはね。

 確かに俺はキミの瞳の位置でコースを読んでいた。

 ――でもキミ、目を瞑って投げられんの、ど真ん中だけじゃない?」


「うっ!?」


 図星だった。

 目を瞑って投げたのは鉄腕ラリアットを生み出したあの日以来なのだから。


「まあ、今回は打ち損ないだった訳だし、引き分けだね。

 だから、次の打席で決着をつけるって事でどう?」


「望むところだ!」


 と、そこまで喋ったところで


「君たち、私語は慎みなさい。

 でないと退場処分にするよ?」


 一塁塁審からお叱りの言葉を頂く二人であった。

感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。

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