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鉄腕ラリアット 第二部・咆哮篇  作者: 鳩野高嗣
第三十章 ミニ合宿・二日目
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ミニ合宿・二日目【Dパート】

 女子の入浴後、野球部はミーティングが開かれた。

 主な議題は初戦の相手となり()風布(ふうぷ)中と浦和(うらわ)元町(もとまち)学園のデータ解析だ。

 そのデータには三浦の知り合いの新聞社の記者たちが付けたスコアブックのコピーが使用された。


「風布中は豪打の四番、ピッチャーの田中のワンマンチームのようだ。

 田中が投げて打って競り勝つというスタイルだ。」


「先生、もし田中が全打席敬遠されていたら、風布は勝ち上がって‥‥。」


 土肥が三浦に質問した。


「まず県大会には進めなかっただろうな。

 だから、このミーティングは浦和元町学園に絞って対策を練る事にする。

 浦和元町はレギュラーのほぼ全員に脚があり、その機動力を活かした積極的な攻撃が武器のチームだ。

 なので、バント処理と牽制球に勝る松浦を先発とする。

 また、エースの黒鳥(くろとり)は球威のあるストレートと縦に落ちるスライダーが武器だ。」


「黒鳥さんの球速ってどれくらいですか?」


 直実が質問した。


「最速で百十八キロだが、八十キロ台の球と使い分けるそうだ。

 だから、実際のスピードよりも速く感じるだろう。」


「百十八キロってどうなの?」


 直実は左隣りに座る羽野に(たず)ねた。


「中学生のエースとしては速い部類じゃないかな。

 もっとも、今まで対戦してきたピッチャーから比べると見劣りするかもしれないけどね。」


 羽野の解説は的確だった。

 直実の百六十七キロというMAX.スピードは論外としても、松浦や八幡(やはた)の藤原は百四十キロ台を投げていた。


「リトルシニアのレベルから見たら可愛いもんだな。

 ちなみに先生、風布の田中ってヤツはどのくらいのを投げるんスか?」


 太刀川が質問を投げ掛けた。


「百二十五キロ前後といったところだ。」


「硬球握らせても百三十行くか行かないかってレベルか‥‥。

 そう考えると、やっぱ風布はねぇな。」


「ねえ、太刀川。

 硬球ってのを投げるとスピード上がんの?」


 直実が右隣りに座る太刀川に(たず)ねた。


「ああ、三、四キロは上がるんじゃねぇか。」


「じゃあ、私が投げたら百七十キロの大台に乗るかも!」


 直実は興奮して声が大きくなる。

 案の定、


「鷹ノ目、私語は慎め。」


 三浦から注意を受ける羽目となる。


 ● ● ●


 三浦は準決勝の本命、県南地区を一位通過した栄村(さかえむら)学院中等部にも言及した。


「俺からの話は以上だ。

 何か質問のあるヤツはいるか?」


 三浦の質問に、羽野が挙手した。


「何だ、羽野?」


「今、言う事じゃないかもしれませんが、一、二年の中にキャッチャーが出来る人が俺しかいないんです。

 これって、ちょっとマズいかなって思ったんですけど‥‥。」


「それは俺も感じていた。

 鷹ノ目の球は無理だとしても、一年の中からキャッチャーを育てるべきだと思っている。

 その人選は俺に任せてくれ。

 ――他にある者はいるか?」


 質問は特に出なかったので三浦は言葉を続けた。


「では、本日のミーティングは終了とする。

 明日も早いから、全員休息を取れ。」


「全員、起立!」


 松浦の掛け声で一斉に立ち上がる野球部員一同。


「したっ!」


 まず松浦が宮町中運動部伝統の挨拶で一礼をした後、


「したっ!」


 残りの部員が一礼し、各自の布団を敷き始めた。


 ● ● ●


「くすっ、あの闇鍋はホントにすごかったですよ、先輩。」


 希望が布団の中で思い出し笑いをした。


「えっ、なになに。

 野球部って、闇鍋したの?」


 裕子がずいっと身を乗り出してくる。


「まあ、料理が苦手というか、やった事ないメンバーが揃っちゃってさぁ。

 で、すっごくマズい料理が出来ちゃったんだよ。

 それをゴマかそうとして、闇鍋にしちゃえって思いついたワケ。」


「うんうん、それでそれで。」


「でも、味はマズいままじゃん?

 先生に食材を無駄にしたってんで、しこたま怒られちゃったよ~。

 あははは!」


 笑いながら直実は顛末(てんまつ)を裕子に話した。


「それで結局、先生のポケットマネーで宅配ピザを注文したんですよ。」


 希望がオチまで言うと、


「ぷぷぷっ‥‥。」


 という笑い声がどこからか聞こえてきた。

 見ると、掛け布団に潜っている長谷川の身体(からだ)が小刻みに震えている。


「ええーと、まあ、闇鍋の話はこれくらいにしない?」


 直実が提案した。


「じゃあ、何にします?」


「私、もっとユッコの恋バナが聞きたいな♪

 昨日は何かはぐらかされて終わっちゃったし。」


 屈託(くったく)のない笑みで直実が提案した。


「ええー、私の?

 本当にいないってば、付き合ってる人とかぁ。」


「じゃあ、好きな人はいんの?」


 ニマッと笑った直実の質問に裕子は頬を染めた。


「ああっ、その顔はいるなぁ~。

 誰、誰?」


 直実が言及していると、


「消灯時間です。

 皆さん、静かにお休みください。」


 黒縁眼鏡をはずし、髪を留めていない長谷川が壁の電源に指を伸ばした。

 すると直実はすかさず一言。


「闇鍋。」


 途端、長谷川は笑い始め、四角四面のキャラクターにヒビが入った。

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