中間テストに潜む魔物【Aパート】
この作品は『エンターブレインえんため大賞(ファミ通文庫部門)』の最終選考まで残ったものを20余年の時を経てリライトしたものの続編となります。
「来週から中間テストだ。
知っている者もいるかと思うが、明日からテストが終わるまでは部活は休みとなる。」
その日の部活終了後、三浦は野球部員たちに説明をした。
「で、中間テストだが、くれぐれも赤点など取らないように。」
「先生、赤点って何ですか?」
新入部員の一人、多田が挙手して質問する。
「各科目、三十点以下の点数の事だ。
これを取った者には追試‥‥要するに再テストが待っている。
当然、その間も部活は参加できない。
そして、地区大会にもその者は出場できない。
特に、鷹ノ目! 太刀川! 金森!
――いいな?」
「はぁーい‥‥。」
名指しをされた三人は力なく返事をした。
● ● ●
「へえ~、そんな事があったんだ。」
翌日、明美が沈み込んでいる直実から事情を聞いた。
「そりゃあ、私は赤点常習犯だけどさ、何も名指しで言わなくったっていいじゃない。」
「どーどーどー、落ち着いてナココ。
要はぁ、全科目三十一点取ればステージクリア~な訳だし、この際、得意科目はほっといて、苦手科目に集中すればいいんじゃない?」
「英語はそこそこいい点取れるけど、他が壊滅的なんだよねー、私。」
「うん、知ってる。」
「アケ~、そこはフォロー入れるところでしょ!?」
直実のサイドヘッドロックが明美に極まった。
「あはは、ごめんごめん。
私、現国と古文なら教えられるからさ、一緒に勉強会するってのはどうよ?」
「勉強会、いいね!
あと、理数系が得意な子がいるといいんだけど。」
直実は技を解いた。
「理数系ねぇ‥‥。
学年は違うけど、卓球部の長谷川部長は数学がトップクラスって聞いたけど。」
「どのツラ下げて頼めって言うのよ?」
「だよねぇ。」
● ● ●
「という訳で、皆さんのお力をお借りたく存じ上げ奉る次第でございますー。」
明美が掻き集めて来た戦力に直実は頭を下げた。
「何語よ、ナココ。」
現国と古文担当の明美がツッコミを入れた。
「事情はわかったよ、理科系なら任せて。」
女子テニス部の門倉奈留が明るく自己アピールする。
明美と直実とは同じ小学校で旧知の仲。
ショートカットがよく似合う、活発系女子を絵にしたような娘だ。
「歴史なら教えられるかなぁ、と。」
日本史担当は同じクラスの桐原史香だ。
長い黒髪を三つ編みにした地味系の歴女で、おっとりふんわりした性格がオーラとして滲み出ている。
「数学は私だよ。」
女子卓球部で一緒だった神長裕子が名乗りをあげてくれた。
明るめの髪をツインテールにしている、ちょっと天然が入った才女という感じだ。
「ありがとう、四人揃えば百人力だよ!」
「‥‥自分は勘定に入れてないんだ。」
明美が直実にツッコミを入れた。
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