第3話 三人目の女
ある日、俊二と公園に散歩に来ていると、
フレンチドッグが近寄ってきた。
(おはよう!!)
ずいぶん馴れ馴れしい。
しかし、愛嬌の有る顔なので、俊二も警戒せず、頭をなでる。
『おはようございます。』
頭の上で声がした。
見上げると、声の主は女性。年齢は30代後半。朝の散歩なのに
バッチリ化粧。紫外線防止もばっちりだ。
最近、よく見かける女性。
フレンチドッグはオスのよう。年はまだ若そうだ。
(なあ、なんて名前?)とフレンチドッグ。
(私?ミッキーよ。)
(可愛い名前だな。俺は、ジョニー。)
(ジョニー?)
(アア。ご主人様が、アメリカの俳優のファンなのさ。)
ジョニーは、そう言うと形のいいお尻をプルンとゆらした。
そして、ちょっと小声で言うのだ。
(最近、この時間になると、ご主人様が散歩に行こうってうるさいんだ。)
(へえ〜、そうなの。)
(お前のご主人様目当てなのさ。)
(ふ〜ん???)
生前気付かなかったが、俊二は結構女性にモテるらしい。
相変わらず直子は、仕事を口実に週2回は来るし、
何のようだか、たまに瞳からも電話がある。
皆考えることは同じで、最愛?の妻を亡くした夫が気になるようだ。
まだ若い、ちょっといい男を、慰めたいという女心をくすぐるのかもしれない。
(あなたのご主人は独身?何やってる人?)
(アア、バツイチで女医だよ。)
(女医?何の?)
(心療内科。お前のご主人も一時期通ってたさ。俺、見たこと有るもん。)
(ええ〜???何で?)
(う〜、奥さんが死んで、ショックで、不眠症だったみたい。)
どうやら俊二は、私を事故で失ったショックで、一時不眠症であったようだ。
朝、いつものように出かけた妻が、その日のうちに
変わり果てた姿で戻ってきたら、それはショックだろう。
そしてこう言っては何だが、フリーで収入が安定しない彼が、
固定給を稼いでいた私を亡くせば、生活の先行きの不安が、
頭をかすめなかったとは思えない。
意外に俊二は金にはシビアで、倹約家でもあったのだ。
なので、俊二の動揺は計り知れないものがある。そう考えてると、頭の上で
女の声がした。
『最近は調子はどう?よく眠れてるの?』
『ええ・・。おかげさまで、ずいぶん落ち着きました。それに・・。』
『それに?』
『コイツのおかげで、ずいぶん癒されてると感じます。』
俊二はそう言うと、私をひょいと抱き上げた。
女は、私の頭をなでた。
『そう、可愛いものね。でも、あなたが来なくなって、私は寂しいわ。』
女は、医師である前に、私も女よと言わんばかりだ。
『でも・・先生。こうして、たまに散歩で会えるから、いいじゃないですか。』
『だけど・・大変なのよ。時間をやりくりするのが・・。』
女は俊二を軽くにらみつけ、苦笑した。
(私の気持ち、わかるでしょう?)と。
俊二はそれには答えず、またも曖昧に笑って、私を連れて帰ろうとした。
フレンチドッグのジョニーが吠える。
(おおい、また会おうな。ミッキー。)
(そうね、よろしく。ジョニー。)
最後にフレンチドックのジョニーは、また形のいいお尻をプルンと振った。




