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第2話

リーン、私の仏壇の前で手を合わせたのは、瞳。

私が勤めていた美容室の後輩。

歳は同じ歳だった。負けん気の強い女。

必ずしも仲がよかったわけでない。


でも今回私が死んだことで、彼女にチーフになるチャンスは来たはずだ。

いや?実家が金持ちと言う彼女だから、この時期退職して

独立するというコースだってあり得るはずだ。


それは小森社長に対する反目を以前からもっていたから。

私がチーフに昇格したときも、露骨に不満な顔をして、

それをかくそうともしなかった。


『小森社長は、美咲をヒイキしている。』


何人かのスタッフに吹聴してたと、後輩から聞いたこともあるのだ。


予期せぬ突然の死で、それまで可愛がってくれた小森社長に

迷惑をかけたことに、心を痛めるが・・でもそれでも社会は回り続ける。


私の初七日に、小森社長は顔を見せてくれた以降は、

仕事に追われていると、俊二は聞いたらしい。


私が抜けた穴は、誰が埋めてくれたんだろう?


しかし・・・そんな心配は無用なように

瞳は鼻息荒く、まくし立てた。


『小森社長が、今度は君頼むよって言ったの。美咲の後は、君しか頼る人がいないって。』


俊二は、今更対して興味もないようなのに、瞳は尚も続ける。


『社長、やっと、私の価値を認めたのよ。遅すぎるわ。ね、俊二さんもそう思うでしょう?』


俊二は曖昧に頷く。


瞳には悪いが、私の顧客が瞳に満足すると思えなかった。

引継がうまくいかないと、大幅に客が減るケースだってあり得る。


自信満々の瞳の姿を見ると、小森社長の苦悩が想像できるが

それだって、単に自分がそう思うだけかもしれない。


チワワの自分が、店の前を通る術はないのが返って救いかもしれない。


自分がいなくても、なに不自由なく、店は回り続け、

苦労して守ってきた顧客を、難なく人に奪われるのを見るのは辛いものだ。


自分の存在すら、すぐさま忘れ去られてしまうのか・・と思うと

チワワの身であっても、切なくなったしまった。


そう俊二の膝で、感慨にふけっていると・・いきなり瞳の手が伸びてきた。

何をするかと思うと・・・俊二の手に手を重ねた。


『何かあったら、私、俊二さんの力になるわ。』

『ああ、ありがとう。でも・・』

『でも・・・なに?』

『僕なら心配いらない。君は、仕事に専念して欲しい。』

『・・・俊二さん、私の気持ちわかってるでしょう?』


(はあ?何を言うか)


私は腰を抜かしそうだった。瞳が俊二に好意を持っていたとは・・


俊二は、ただ曖昧に微笑む。


(コラ!はっきり拒否しろよ。俊二ったら。)


ワンワンワン〜、私は突如けたたましく吠え出す。


『アア、うるさい犬ね。今日は帰るわ。』と瞳は、顔をしかめて立ち上がった。


『いつでも電話してね。』まだ、しつこく未練がましく言う瞳に


私は執拗に吠え続けて、追い出したのである。







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