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変装だああああ!

 その日がやってきた。奏が助っ人として野球の試合を行うその日が。

 朝早く真琴の家に集結した真琴、奏、未来の三人は奏の代わりを行う真琴についての会議を始めていた。


「さて、真琴ちゃんを奏ちゃんに変装させる計画なわけだけど……」


 そう言いながら、未来はカバンの中からウィッグを取り出した。


「じゃーん! 変装カツラでーす」


「カツラって言うな。ちょっと気分悪いだろうが」


 すでに女の子の姿になっている真琴は、未来を刺激しないように足を閉じて椅子に座っている。この間、大変なことになってしまったがための反省だった。

 未来はご機嫌に真琴の頭にウィッグを被せてご満悦に浸っていた。奏も、意外にも真琴の変装ぶりに驚いている。


「けっこう似てるものなのね」


「でしょでしょ? いやー、良かったね真琴ちゃん」


「あんまり嬉しくねー」


 まったく、こんな辱しめを受けるなんて最悪だ……。

 喜んでいる二人は良かったと真琴は思うが、やはり奏に成りすますということに少なからず抵抗を見せている。

 未来は、そんな憂いている真琴の表情にもウキウキしながら更なる変装を真琴に言い渡した。


「よし、では次の指令を与えよう」


「何だよ未来。そんな改まってよ」


「奏ちゃん、例のブツは持ってきたかい?」


「一応持ってきたけど……本当にやるの? 何もそこまでしなくても」


「いや、必要だよ奏ちゃん。正体がバレたら困るのは奏ちゃんなんだよ。ちゃんと完璧に変装しなきゃ」


「まあ……そうだけど」


 未来の言葉正しい。真琴のいない時に未来の目的を聞いた奏はしぶしぶ未来の言うことに従うことにしている。それでも、未来の案はおかしいと思っている奏だったが。

 一方の真琴は二人が話している意味が分からず困惑していた。一人だけ蚊帳の外な真琴は頭にハテナを浮かべていた。


「待て待て。俺には何の事だかさっぱりだぞ」


「ムフフ。奏ちゃん、出しちゃって」


 未来に言われて、奏は持ってきたバッグからセーラー服を取り出した。奏もセーラー服を着ていることから、予備のものなのだろう。しかし、真琴には不要の代物だった。なぜなら、真琴が女の子に転換すれば、制服もまた女の子用に転換されるからだ。

 わざわざ奏がセーラー服を取り出したのに、真琴は理解できなかった。

 未来の顔はすでに崩れかかっていて清楚だったかつての原型を留めていない。未来狂のクラスメートが見たら、昇天して未来に危害を加えてもおかしくないだろう。


「さあ、着れ真琴ちゃん! 奏ちゃんの制服を着るのだ!」


「……は?」


「嫌だな難聴主人公気取っちゃってさ。だから、奏ちゃんのセーラー服を着るの」


 いやいやいや! どうしてそこでそうなるんだよ!

 未来が言っている意味に真琴は顔をゆでダコのように赤くして必死に頭を左右に振って否定している。奏がいつも着ているセーラー服を着用する。それを想像するだけで、真琴の心臓は少しだけ、いや、大きく鼓動していた。それもそのはず、気になっている女の子の制服を着るのだから無理もない。

 それに対して、奏は上目遣いで恥ずかしそうに真琴に呟いた。


「未来が言うには……やっぱり、人って匂いに敏感だからバレないように私の制服を着た方がいいって言うのよ……。うん、まあ、理解は出来るんだけど……さ」


「真琴ちゃ~ん、どうして顔赤くしてんのかなあ? あ、まさか変態なことを考えてるんでしょう。やっらしー。変装のためなのにねー」


「バ……バカ言え! んなこと考えてねーよ……ってしまった!! 嵌められた!」


 ここで未来の言葉を否定すれば、それは制服を着る肯定となってしまう。辱めが無ければ、変装がバレないようにするために制服を着るという行為は正当化されてしまうからだ。

 真琴は未来の言葉に巧みに操られ、言質を取られてしまったということになる。自分がとってしまった行動に悶絶しつつ、真琴は未来の為すがままにされてしまうのだった。


「はーい、ニセ奏ちゃんの完成でーっす」


「……ううう。今日ほどこの能力が忌々しいと感じた日はない」


 未来のコーディネートが終わった。涙しながら、真琴は立ち上がって姿見で自分の姿を見た。まあまあ奏の風貌になっている。変装にしては上手くいっていると真琴は思った。しかし、変装しているのが自分でしかも対象が気になっている女の子だということで、恥ずかしさと悲しさで胸が溢れている。

 泣いている真琴を一生懸命フォローするかのように、奏は汗を垂らしながら真琴を励ました。


「に、似合ってるよ真琴くん。うん、すっごく素敵」


「ああ。お世辞でも嬉しいよ……」


 真琴は大きなため息をついて、未来と一緒に学校に行くことになった。奏は野球の試合があるため、最初から別行動になる。

 できれば、雨天中止になってくれないだろうか。真琴は心の底でそう思った。

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