ミールⅠ
ゴッチが洞窟の中に入って行ったのを見送り、俺はちょっとだけ考えてしまった。
この『アレス』という世界には様々なモンスターがいて、その中にはさっきの"ゴブリン"のような意思を交わせる種族も数多く存在している。
そういった者達を殺してカード化するのが、俺のカード使いという職業だ。
もちろんモンスターは、俺達ヒト(もちろんエルフやドワーフ等の全ての種族の事だ)と相容れない事が多い。
さっきの"ゴブリン"にしても、ヤツラはヒトを食う。
さっきの洞窟の奥にも"それらしい"ものが、チラチラみえた。(正直、怖くて調べられなかった)
実際最初に襲ってきたヤツラは、俺をディナーの一品にすべく襲ってきたのだろう。
そんなヤツラに気を使うつもりはないが、次にあのゴッチと戦った時、果たして俺はヤツを殺せるだろうか?
…たぶん無理デス。
ヤツの方はおそらく躊躇なく俺を殺しにくるだろうが、俺の方は出来ないかもしれない。
ほんの一時間程度、言葉を交わしただけだし、別に友情が芽生えたということでもない。
だがもう知らないヤツじゃあない。
これからもっと強力なモンスターが、俺の前に現れるだろう。
その中には俺のこのチートレベルでも、ヤバいヤツラは幾らでもいるだろう。
俺のレベルはとんでもないが、防御値は"アルラウネ"クラスの攻撃を10発もくらえば、"ゼロ"=死だ。
よく漫画で出てくるセリフ、「そんな甘ったるい考えをしてるヤツは死ぬぞ」というのが正にあり得る世界なんだ。
平和ボケした日本人の代表たる、凡人の俺にはキツイ世界だ。
…だがビビっていてもしかたがない。
俺はこの世界で生きることを選択したのだ。
戦いの事も、その時になって考えよう。
どーせ今悩んでも、結論は出ないのだ。
それに俺には目標がある。
相棒の『天輝竜』と再び会うという目標がある。
アイツがいる所は間違いなく、まともな所ではないはずだ。
ゲーム時代の知識から俺は、ヤツがいそうな候補地を幾つか考えている。
その全てが、超上級者用のイベント用地なのだ。
そう、俺達はもっともっと強くならなくてはならないのだ!
さて、それよりもっと身近な懸案から片付けよう。
俺のアタマは複数の事を一度に処理出来るほど、デキがよくない。
つまり"ミール"さんの事だ。
って、あれ?彼女がさっきの木ノ上に居ない
。
と思った時、俺の後ろの茂みから彼女が現れた。
俺は彼女を見て、言葉を失った…
「お願いニャ!助けてニャ!」
「喜んでっっ!!」
その時、俺の視界の右上に、"イベント発生フラグ"の旗がピコーン!と立ったのである…




