新しい世界へⅡ
まあ、ムフフなお楽しみもできたが、もうひとつ気がついた事がある。
「プリスはいないんですか?」
「プリス…ですか?えーと、ちょっと待って下さい~。」
そう言うと、キツネのにーさんは手元のパソコンを操作した。
「ああ、ナビゲーターの小妖精のことですね~。」
そう、プリスはゲームで一番最初からプレイヤーに常に付き添い、アドバイスや時にはトラブルをまきおこす、いわばもうひとりの"相棒"みたいな存在だった。
「えーと、このナビゲーターはありません~。
まあ、アナタのようなゲームをやりこんだ方には、ナビは必要ないでしょう~?」
…プリスはそれだけの存在じゃあなかったんだが、いないのなら仕方がない。
彼女の無鉄砲でお祭り好きで、情にもろいところが気に入ってたので、少し寂しいな。
そんな感傷にひたってると、
「おや、向こうでの受け入れ態勢が整ったようですね~。
それでは、そろそろ転生致しましょうか~。」
ちょっ、はやっ!
「ちょ、ちょっと待って下さい!
まだほとんど他の機能について、聞いてませんよ!」
「大丈夫ですよ~。アナタほどゲームを熟知している方なら、向こうでも問題ありませんよ~。」
ええ~、軽っ!
「ゲームでのシステムはほぼ同じですよ~。実際、先に転生したお二方も、数日で完璧に使いこなしていたそうです~。」
「ああ、転生が始まったようですね~。
それでは、新しい人生を楽しんで下さい~!」
そう言って、キツネのにーちゃんは手を振った。
同時にものすごい、眠気が襲ってきて、俺はそのまま気を失うように、眠ってしまった。