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9.ほんの少しお話を

事情聴取回です。色々と判明するのでじっくり読んでみてください。

「まずは珪呀さんから」

寒江と珪呀が向かい合って座る。

「えっと、昨日最後に鷹宮さんを見たのはいつですか?」

「そう、ですね。昨日のお昼。それこそ、手紙を開けたときでしょうか。

その時よりあとは鷹宮さんは、部屋に籠もってたような気がします」

「では、昨日は何をしていましたか?」

「手紙についての喧嘩があって、その後ここで咏人とご飯を食べました。

そのあと、午後一時位に咏人と部屋に戻ろうっていう話になって。

あ、帰るときに望月さんに会いました。そこで晩御飯はどうしますか?って。

その後、二階へ行って沢村さんと、神宮さんのお部屋へ行って晩御飯をどうするかを聞いていました」

「その時は、部屋の中に入りましたか?」

「いえ、外から扉越しに...。

そうしたら、神宮さんが出てきてくださって皆さんで食べませんか?と。

そのことを咏人と望月さんに伝えて、皆さんに聞いて回っていました。

鷹宮さんは、じゃんけんで負けた咏人が聞いて、僕は先に下に降りました」。

その後は皆さんで夕食を食べて、食べ終わったあと僕の部屋で咏人と喋っていました」

「食べ終わってからの二階へ上がる順番とかは...」

「あー、詳しくはわからないのですけど、沢村さんのあとでした」

「沢村さんが上がられてすぐですか?」

「いえ、10分ほど時間が空いてたと思います」

「なるほど、その後は何を?」

「その後は...上がったのが七時過ぎくらいでしたから、九時半には咏人が部屋へ戻って、

そこから、三十分ほど台本を読み込んでいました、なので寝たのは10頃だと思います」

「その間になにか、物音は...」

「咏人と話している間に他の人たちが上がってくる音は聞こえましたけど、呻き声とかは特に...」

「わかりました、最後になにか鷹宮さんとのご関係と、恨みを持っている人物の心当たりを」

「関係は...鷹宮さんの書かれた本を読んだことがあるくらいで...。実際に合うのは初めてです。

恨みは...わからないですね」

「そうですよね、ありがとうございます」

「いえ、こちらこそ。えっと次は...。咏人ー次だよ」

「ん?おぉわかった」

「よろしくお願いしますっす」

「はい、ではまず最後に鷹宮さんを見たのはいつですか?」

「最後っすか...。みてはないっすけど、昨日の夕方っすかね」

「それは、晩御飯のときの...」

「そうっす。扉をノックしたら、誰だ、って怒鳴られて。晩御飯どうするっすか?、って聞いたら

一人で食う、って」

「その時、なにか会話が食い違っていたり、違和感はありませんでしたか?」

「なかったっすね。普通、だったと思うっす。何かを叩く音とかも聴こえてたし」

「なるほど、では昨日全体を通して何をされてましたか?」

「えっと、昨日は朝珪呀に起こされて、閉じ込められたっていう話を聞いて。

その後はみなさんとずっと一緒にいたっすね。別れたのは、お昼ご飯をたべてからっすね。

その後は、珪呀と部屋で喋ってたっす。一時くらいかな?に望月さんと会って、晩御飯どうするっすかー、

みたいな話になったっす。その後は皆さんを呼びに行って、降りてきて、その後も晩御飯中は一緒だったすね」

「部屋に上がる順番は...」

「何番かはわかんないっすけど、沢村さんのあとだったっす」

「その後は、なにを?」

「その後は、珪呀の部屋で喋ってました。七時くらいから、九時半くらいまでっすね。

そしたら、自分の部屋に戻って特にすることなかったので、すぐ寝たっす」

「それまでになにか怪しい物音とかは...」

「なかったと思うっすけど、確証はないっすね」

「最後に鷹宮さんとのご関係や、恨みなどを持つ人物にお心あたりはありませんか?」

「関係は、特にないっすね。初対面で、珪呀は知ってたみたいっすけど、俺は知らなかったっす。

恨みは、わかんないっすね。でも、あんまし良いおっさんじゃない、っていう印象っすかね」

「ありがとうございました」

「次は、望月さんっすね。望月さん次っす」

「ん?わかった。ありがとう。よろしく、雪」

「はい。えっとまずは最後に鷹宮さんを見たときです」

「最後かー。最後は封筒を開けたときかな。それ以降は特に見てないと思う」

「なるほど、では昨日は何をされてましたか?」

「昨日は、朝起きて、封筒で喧嘩になって、その後は、雪達と一緒にご飯食べて。

途中一回お手洗いに、一階に降りたときに、南風さんと会って、その時に晩御飯どうするー?って」

「五分くらいでしたよね。一階に降りられていたの」

「そうだね。んで、雪達に晩御飯どうする?って。結局特に希望なかったし。

それを伝えに行ったら、一緒に食べませんか?って話になって、そのことを言いに部屋に戻ったね」

「基本的には一緒でしたね。途中誰かが外に出ることはあっても全て三分から五分くらいの期間でしたし」

「そうだね、だからお昼の間はアリバイ?はないね。んで、晩御飯食べて。

そっからは別々だね」

「部屋に上がった順番はわかりますか?」

「多分あたし一番じゃないかな。それより前に上がった人見てないし」

「なるほど。その後は?」

「その後は、八時くらいに部屋に戻って部屋に1時間半くらい本棚にあった本読んでたかな」

「その間に物音は?」

「誰かが二階に上がってくる音は聞こえたけど、それ以外は特には」

「なるほど、では最後に鷹宮さんとのご関係や、恨みを持つ人物を知っていますか?」

「うーん、すぐには思い出せないかも、そもそもあんまり友達っていう友達とか知り合いいないし。

関係は...初対面だけど、嫌いな奴って思ったくらいかな」

「ありがとうございます」

「次は...神宮さんかな。神宮さん次です」

「あら、ありがとう」

「神宮さんお願いします」

「お願いします」

「それでは、まずは最後に鷹宮さんを見られたタイミングをお伺いします」

「最後ねぇ...最後は昨日のお昼かしらね。そう、手紙を開けたときね」

「なるほど、では昨日全体を通して何をされてましたか?」

「昨日は...朝起きたら、土砂崩れでこの屋敷が塞がれた、って聞かされて。

その後は、皆さん集まって手紙を開けましたわ。その時までずっと皆さんと一緒だったと思うわ。

手紙を開けて、その後は自分の部屋でご飯を食べてたわ。

お昼すぎくらいだったかしら。南風さんが晩御飯はどうされますかー?って扉越しに」

「なるほど、それ以前に南風さんの声は聞こえましたか?」

「えぇ。私の前に一回。それともう一人二人くらいの声も聞こえたわね。

晩御飯どうするか、って聞かれて。皆さんで集まって食べましょうって言ったわ」

「それは、なぜ?」

「んー。なんとなく、と言ったら答えにならないわね。

その時すごくギスギスしていて、空気が重かったじゃない。

私そういうの苦手だから。折角何かの縁なんだし、と思ってね」

「なるほど。なんとなく、ですか」

「えぇ。本音を言えばなんとなく、よ」

「ありがとうございます。その後はご一緒でしたよね」

「そうね。ご飯を食べて、各々二階へ上がったわ」

「二階へ上がる順番は...」

「私食べるの遅かったから、最後だったと思うわ。八時半頃だったかしらね」

「その後は何を?」

「その後は、部屋で持ってきた本を読んでたわ。スマホを使おうにも何故か圏外だったから」

「そうだったのですね。その最中に物音とかは」

「なかったと思うわね。確証はないけれど。集中すると周りのこと見えなくなっちゃうタイプだから。

寝たのは九時半頃かしら」

「最後に、鷹宮さんにとのご関係や、恨みを持った人物を知っていますか?」

「関係ねぇ...。鷹宮さんの作家友達の編集をしてたことが昔あるくらいで。

濃い関係はないわね。鷹宮さんって、ほら。あんなのだから、相当の手練じゃないと担当は出来ないって

話だったわね」

「じゃあ、鷹宮さんの担当の方はご存知ですか?」

「さぁ。それこそうち(会社)の熟練の方だから。上司の上司みたいな存在になるわね。

そうなると、自然と私達、一般の編集は会うことはおろか、見ることすら滅多にないわね」

「なるほど。他には?」

「ほかは...。特に心当たりはないわね。今のところ」

「うーん。わかりました。ありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ。探偵さんの力になれると嬉しいわ」

貼り付けたような笑顔で接している。

「まぁ、どうやら犯人さん的には探偵は本谷さんみたいですけどね」

「そうよねぇ」

神宮がなにか考え込むような顔をする。

「次は、沢村さんでいいかしら?」

「はい。どなたでも」

「沢村さん次ですって」

「おぉ。やっと儂の番か」

「沢村さんお願いします」

「おぉ。こちらこそじゃ」

「ではまず。最後に鷹宮さんを見られたのはいつですか?」

「最後かのぉ...。最後は、昨日の昼、じゃろうか。儂とあの爺さんは同時に上がったからのぉ。

扉を強く締めたのを見たのが最後じゃ」

「なるほど。では昨日一日を通して何をされていましたか?」

「昨日は、朝起きて土砂崩れの話を聞いたわい。その後は、手紙の件があり、それまでは少なくとも

誰かとは一緒におったぞ。

一人になったのは...。昼飯の時じゃ。午後一時半くらいまで、飯を食ったり、部屋にある本を読んでおったわい。ほとんど既読じゃったがの。その後、扉を叩かれ若造が晩飯をどうするか?と聞いてきたから

特に希望はない、と伝えたわい。その十分程後じゃったかの、一緒に食べませんか?、と

聞かれたわい。特に断るほどの用事もなかったから、良いぞ、といっておいたわい。

その後は、皆で晩飯を食い、自室へ戻った」

「なるほど、二階へ上がる順番はわかりますか?」

「えぇっと。あの大きな娘のあとじゃ」

「なるほど何時頃に寝られましたか?また寝るまでなにか物音などは」

「寝たのは、9時頃じゃの。それまでにおかしな音は聞こえなかったはずじゃ。

まぁ、この脳みそもボケてきておるから、確実ではないがのぉ」

「では最後に、鷹宮さんとのご関係や、恨みを持った人物をご存知ですか?」

「関係は特にはないぞ。恨み、恨み...。思い当たる節はないのぉ。

このボケた脳みその思い出せる範囲では」

「ありがとうございました」

「ほっほっほ。小娘、お主もなかなか頭が切れるじゃろ?」

「はい。きっと人よりかは記憶力なんかはいいと思います」

「ふむ。優秀な探偵じゃのぉ」

「ありがとうございます」

「最後は...小さい小娘か」

「はい。では私が呼んできます。宮内さーん」

「あ、はい。お願いしましゅ」

「あはは、緊張しすぎ。私まで緊張ほぐれちゃった」

「ならよかったです」

「じゃあまず最後に鷹宮さんを見たのはいつ?」

「えっと、昨日のお昼ですね。封筒を開けたときです。それ以降は特に...」

「なるほど。では、昨日全体を通して何をされていましたか?」

「昨日は...朝六時ごろに目が覚めて、そこからベッドの上でに十分弱座っていました」

「えっと、それはなぜ?」

「あぁ、私貧血気味なので。朝は中々目が覚めなくて...。それに、すぐに立ったら立ち眩みを起こしてしまいますし」

「そうだったのですね」

「えっと、六時半頃にやっと完全に目が覚めて。そこから着替えて、執筆を進めようと思った

のですが、何故か圏外で...。七時頃まで文庫本を読んでいました。

七時頃に、扉がノックされて。そこから一階に皆さん集まりました。

その後は、皆さんと一緒だったと思います」

「そうですね。(ですが気になるのは圏外である点...)」

「お昼ごはんも寒江さんと一緒でしたよね。

途中で望月さんが下に降りられて、ご飯をどうしますか、と。

昨日は朝、夜以外は誰かと一緒にいました。二階へ上がったのは八時前、寒江さんのあとです。

それに昨日の夜は、二十分ほど寒江さんとお話しましたし。

結局寝たのは十時半頃ですね」

「そうですね。昨日の夜、九時半頃手洗いに立ったときに偶然一階会いましたもんね。

はい、なので私達にはアリバイがあります。ですがこのことは...」

「「内密に」」

「ですよね」

「はい、宮内さん。ここでアリバイがあること、なおかつそれが二人きりであり、目撃者及び証言者が

いないとなれば、疑われかねませんし」

「なにより、アリバイが信じてもらえたとして、他人からの選択肢が減った犯人は焦るでしょう。

それにより、手荒な真似...それこそ皆殺し、なんてことさえありえてしまいますからね」

「ではでは、えっと最後に鷹宮さんとのご関係や恨みを持つ人物をご存知ですか?」

「関係は...あこがれの先輩、といったところでしょうか。今までは。

私自身、同じミステリ小説家なので尊敬の思いはありましたし。

ですが、かなり横暴な方のようで...。ですが、数々のトリックを生み出す頭脳は確かなものなのでしょうが。恨みは...思い当たる節は特に。同業者(ミステリ作家)からの愚痴なんかにも出てきませんでしたし」

「ありがとうございます。今回の犯人は、一体誰なのでしょうか...。天才か、狂人か」

「島田清次郎の生涯...ポオの全集。このような小説があるくらいです。

There's a fine line between genius and insanity.(天才と狂気は紙一重)です。

今回の犯人だってどちらかなんてきっと犯人を当てるより難しいです」

「紙一重、コインの裏表のような感じなのでしょうか。だとしたら私達には手の加えようがありませんね」

「願うばかり、です。では南風さんを呼んできましょうか?」

「あぁ、私の番でしたね。お願いします」

「南風さーん」

「あぁ、はい。えっと僕が寒江さんに質問をすればいいのですね。

質問は、僕にしてくださったものと同じでよろしいですか?」

「はい。お願いします」

「こちらこそ、お願いします。なんだか緊張しますね」

「あはは。私はなんとなく二人きりで話を聞くのには慣れてますからね」

「さすがは探偵さん。ではでは、まず最後に鷹宮さんを見られたのはいつですか?」

「最後ですね。最後は手紙を開けたとき、皆さんとさほど差はありません」

「では、昨日は何を?」

「昨日は、五時半くらいでしょうか、に目が覚めて。

ベッドから身を起こしたのは五時くらいです。

五時半ごろにザザザーっと、大きな音がして、外を見ると土砂崩れが起こったみたいで。

一応外に出られるかの確認をしましたが、扉は動かず。

この一連を誰かに伝えようと思い、物音がしていた珪呀さんの部屋へ行きました」

「そんなに早くに目が覚めていたのですね」

「はい。ですが貧血で頭が冴えなかったり。

昨日の夜起こった頭痛がまだ少し痛くて。痛み止めを飲んでいました」

「なるほど」

珪呀は、顎に手を置き耳の前辺りを指で一定の間隔で叩いている。

考え事をしている際のクセなのかもしれない。

「その後は、みなさんと同じですね。

驚いて、手紙を開けて。バラバラになったのはそこからだと思います。

えっと、手紙を開けたあとは望月さん、宮内さんと一緒に部屋で昼食を取っていました。

そこから、夕食のタイミングまでずっと一緒でした。

途中望月さんが一階へ降りられて、夕食をどうするかと珪呀さんに尋ねられた、という時間が最も

長い、といっても十分程度ですけど、三人ではなくなったタイミングでしたね。

夕食を食べて、そこからは二階へ上がって、寝るまで一人でした」

「えっと、二階へ上がる順番は?」

「珪呀さんたちのあとです。ですが十四、五分ほど間が空いていましたが」

「寝るまでは何を?」

「部屋に上がったのが七時半?頃でしたかね。そこから八時半頃まで、なぜ手紙を送ったのか、

なぜここへ集めたのか、などを推理していました。これでも探偵ですから。

そこから十時頃まででしょうか、部屋にあった「羅生門の鍾乳石」を読んで寝ました」

「それまでに怪しい物音は?」

「なかったですね。特には」

「最後に、鷹宮さんとのご関係や、恨みを持つ人物をご存知ですか?」

「関係は、強いて言うならば、作家と読者、でしょうか。

狩連場さんの「羅場 生門(らば しょうもん)シリーズ」なんかをよく読んでましたね。

恨みは特には存じ上げません」

「ありがとうございました。これで全員終わりましたね」

「そうですね。ある程度のことがわかったので共有しましょう」

「にしてもまるで小説の中の世界に入り込んでしまったかのようです。

おかしな館に集められた、初対面同士の人々。そんな中、土砂崩れにより扉が塞がってしまう。

さらに殺人まで起こってしまって...。みたいな」

「そうですね。ただ一つ小説と違うところがあります。

それは、皆さんが「探偵」であるという点です」

「たしかに、本物の探偵が二人も。それに他の方々も優秀な頭脳をお持ちのようです。

全く、これではキャストミスですね。私達二人が見るに耐えないほどになってしまう。

咏人のどこに灰色の脳細胞があるのやら」

「そうです。ここに集められたメンバーについても昨日色々と思考を巡らせましたが、

これといった答えは見つからなかったです」

「なかなかの難問ですね」

「おぉ!終わった?珪呀」

「あぁ、咏人。終わったよ、ひとまず。これから集めた情報を共有しようかと」

「オッケー。じゃあみんな呼んでくるね」

「サンキュ」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「えっと、皆様お集まりいただきありがとうございます。

また、事情聴取のご協力にも感謝申し上げます。

さて、事情聴取によりいくつかわかったことがあります。

まず1つ目ですね。1つ目は大まかな犯行時刻に予想です。

本当に広いのですが、昨日の六時半頃〜今日の朝まで、です」

「かなり広いわね」

「そうです。根拠としては、昨日一日を通して、最後に鷹宮さんの目撃情報...

ではないですけれど、声を聞かれたのが昨日午後一時半頃です。

そこから、二時〜六時頃まで、鷹宮さんを除く全ての人達が一つの場所に集まっていました。

このことから、六時以前の犯行ではないと考えられます」

「でも、雪。本谷さんが訪ねたときに、あらかじめ録音していた音声を流したっていう可能性もあるよね?」

「そうです。しかし、それはないのではないかと思っています。

なぜなら、本谷さんの話曰く、それなりに会話はできていた、ということだそうなので、

あらかじめ録音された音声だと、角が立つのではないかと。

それに、このような特殊なシュチュエーションの場合に使う音声は、録音しようと頼む事にも多少

無理があるようにも思えます。最近ではAIが声色を似せるという技術もありますが、なにより

鷹宮さんご自身の反応からみても、みなさんは初対面だと思います。

なので、事前に音声を録音しておくことは難しいのではないかと」

「なるほど。ごもっともじゃ」

「え〜、次はなぜ六時頃〜二時までなのか。この期間の長さについての説明ですね。

六時頃からだという話を先程しましたが、六時すぎた頃からは皆さん自身がバラバラに行動

をしているわけなんです。

というのも、六時頃に夕食が終わりましたよね。

そこから、

望月さん→沢村さん→本谷さんと南風さん→私→宮内さん→神宮さん

の順番で二階へ上がられたそうです。個人個人の間は二十分〜三十分ほど空いていたので、

犯行は可能です。

しかし、皆さん怪しげな物音は聞いていないということから、

みなさんが寝たあと、午後九時半頃〜朝四時頃までが最もあり得る時間帯です。

つまり夜中ですね」

「じ、じゃあ昨日一番遅く寝た人が怪しくなるんじゃ...」

「そうですね。まだ決定というわけではないですが、チャンスは一番多いでしょう。

昨晩最後に寝たのは...」

「わ、私、ですね」

宮内がややためらいがちに手を挙げる。

「ですが、この仮説なんかも、全員が本当のことを話しているという前提で組み立てています。

きっと、嘘をついている犯人さんがいる限り、絶対のものとはなり得ませんから」

「続いて分かったこと...いえ新たに生まれた疑問でしょうか。

それは動機です。

皆さん鷹宮さんと深い関わりはなかったように思えます。

鷹宮さんご自身もこの中にご知り合いはおられなかったようですし」

「まぁでも、今、もしくは過去に鷹宮さんとあったタイミングで、普段の自分とは異なる見た目、

服や、髪の毛。最悪、顔や声なんかまで変えている可能性があるわけよね?」

「はい。その可能性も十二分にありえます。ただしそれを肯定する根拠も否定する根拠もないので

今はなんともいえないですね。今の段階では。

最後に、これはとても重要な問題です。

皆さん全員、不透明です。私も含めて」

「なるほど、全員にアリバイがないってことっすか。

でも俺は昨日...」

「咏人、それは内密にしておこう。僕達のためでもあるし、皆のためでもある」

「(よくわからないけど従おう)俺は、昨日、あー、その。俺は昨日は夜中ぐっすり寝てたから何も

わからないっす」

「なるほど。全員にアリバイがなく、動機もない。しかし、犯人はこの中にいる、ということですね」

「さしずめ、ここは列車でも孤島でもないからのぉ。救助が来るまで安静にしておくしかないわい」

「幸いなことに、ここにはヒステリックに叫ぶ人間も、部屋に閉じこもり新たな謎を生む人間も、

警察の到着をただ待つ刑事も、いません。ここにいるのは優秀な探偵のみですから」

「ほっほっほ。そうじゃのう。しかしここには、正体不明の部外者もおらんぞ?」

「なるほど、確かにだね。探偵のみのミステリ小説、か。特殊条件すぎじゃん」

「せいぜい一万部といった所かしらね」

「いや、百万部の大ベストセラーかもしれませんよ?

あぁごめんね咏人、わからなかったか」

ミステリ好きの探偵たちが談義を交わしている最中、咏人だけポカーンとしていた。

「ん?あぁ大丈夫だよ。それにしてもまだ実感というかそんなのが生まれないっすね」

「そうですね。ですが、人が殺され私達の中に犯人がいる。これは奇しくも揺るぎない事実に

なってしまったのです」

「そう、ですね。果たしてこれは私達だけで解決して良いのでしょうか。

いえ、解決できるのでしょうか」

「解決できる!といいたいところですが、五分五分といったところでしょうかね」

「儂ら全員が容疑者であり、探偵なんじゃからのぉ」

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寒江のメモ

望月→沢村 →珪呀→ 寒江 →神宮 →宮内

六時→六時半→七時→七時二十→八時前→八時半。全員アリバイなし

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「羅生門の鍾乳石」の「羅生門」はあの羅生門ではありません。鍾乳洞の羅生門です。

岡山県新見市にある天然の鍾乳洞だそうです。近い方はぜひ。

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