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side???再び

 シルシをつけた子が王都に近づいている。


 移動禁止が付いていたはずなのに、こちらに向かっているということは何か命令されたな。

 時期的にみて御前試合に乗じての陛下暗殺……か。

 自分の息のかかった者を側に置くための側近の排除か。

 大穴狙いで妃殿下を狙っているかもしれない。


 カクタス国は実力主義。異世界の力を持たない女が魔王陛下の伴侶という事に反発しているアホ共がいるしな。

 文句があるなら直接魔王陛下に進言すればいいものを。


 まあ、そんなことはどうでもいい。


 精霊を通じてあの子のことは知っているが、大きくなった姿を見てみたい。


 迎えに行くか。


 準備をしていると結界に揺らぎが生じた。

 結界内に入れるのは俺が認めた者と一部の精霊だけ。


「ご主人様。お嬢様が騎士団に捕らえられました。さっさとなんとかしてください」


 ふわりと姿を現したのは青碧(せいへき)色の髪をひとつにまとめた侍女だった。

 あの子から身体を作ってもらったと聞いてはいたが、人型かよ。また難易度の高いものから挑戦したもんだ。


「よぉ。美人に作ってもらったな。名前はエマだったか」

「あちらの世界で人々の願いを神に届ける重要な役目を負った神聖な名前でございます」


 目を細め自慢気に語る。


「その名前気に入ってるみたいだな」

「気に入っているのではありません。特別お気に入りなのです。ああ、遅くなりましたが、お久しぶりでございます。薄情なご主人様」

「薄情とはひどくねぇか?」


 エマは吹雪を起こせそうなほど冷たい目で俺を見据え、軽く溜め息をついた。


「十年間このエマに指示を出すだけで、一度たりともお嬢様に会おうとなさらなかった方を薄情と言わず何とお呼びすれば良いのでしょうか」


 周囲の温度も下がっている気がする。


「大層落ち込んでおられたんですからね。お可哀想に」

「仕方ねぇだろ。地位のある役職についたばっかりに味方からは護衛と言う名の監視。敵からは牽制と言う名の監視。下手に動けなかったんだ」

「それに、魔術書やドレスを送るだけ送ってご主人様からだとわからないようにしろだなんて、無茶な命令ばかり」

「それは……」


 万が一服が気に入らないなんて報告されたらしばらく立ち直れない。

 俺が送った魔術書のおかげでこいつは身体を作ってもらったんだから少しは感謝してほしいくらいだ。


「しかも、お嬢様を誤魔化すのも心苦しいですが、何より本邸の奴ら(あいつら)から隠すのが大変だったんですから」


 途中から愚痴になってないか? こいつ意外とおしゃべりだったんだな。


「お手紙の一つでもと何度も進言いたしましたのに、いっこうにございませんでしたね」

「二百も年齢が離れているのに何を書けと言うんだ」

「素直な気持ちを書けばよろしいのですよ。精霊に指摘される時点でおかしいと思いませんか」

「……悪かった」

「謝罪は直接お嬢様にどうぞ」

「…………善処しよう」


 愚痴から説教に移行してきた。長くなりそうだ。乳母も怒ると長いんだよ。

 精霊なのに人間くさくなっている気がする。


「それより騎士団に捕まったとは? 詳しく」

「あ、そうでした。実は……」


 よし。こういう時は話題をすり替えるに限るな。








 あのテッポードクガエルを殴るとは全然変わってないようで安心した。しかし無茶をする。


「わかった。これから迎えに行こうと思ってた所だ。一緒に来るか?」

「お嬢様を心配なさっている方がいるのでそちらに行ってから合流いたします」


 心配している奴がいるだと?


「……男か?」


 自分で思っている以上に低い声が出た。


「馬車に乗っていた方々全員ですが、特に心配していたのは女性ですよ。嫉妬もほどほどになさいませ」


 これが嫉妬か。嬉しくない感情に気付いちまったな。

 嫉妬……?

 俺が?

 どういう意味で?


 元々気に入ったのは前世持ちで魔力が高く、俺の部下に育て上げたら役に立つ。何よりあの子の態度が面白かった。

 そんな理由だったはずだ。


 だが、呪われていて自由に移動できなかった。

 俺も王都を離れられない。

 だから契約精霊に側にいて守るよう指示を出し、魔術書を与えた。

 強くなれば死ぬ確率が減る。

 隣国の奴らはいい練習相手だ。


 魔術書だけでは味気ないと思い、ドレスなどの衣服も一緒に送った。

 いつからかドレスのついでに魔術書を添える程度になっていたがな。


 あの子の緋い瞳に合うドレスを選ぶのは楽しかったから仕方ない。


 だいたい身体を作ってもらったと聞いてはいたが、人型とは聞いてはいない。女型でよかった。もし男型だったら……精霊といえどすぐ引き離していたな。



 俺以外の男が側にいることが許せない。

 あの輝く美しい緋い瞳に俺以外映さないようにしてみようか。




「今のうちに今まで集めた証拠をお渡しして置きます」


 仄暗い思考に陥りかけたとき、エマが記録用の魔石や書類を次々と出してきた。


 これはあとで確認するとして、早くあの子に会いに行くとしよう。


 きっとこの気持ちは娘を思う親心に近いものなのだろう。

 自分の気づきかけた感情に無理矢理名前をつけて蓋をした。



???さん

ロリコン疑惑。嫉妬深い←New そしてうっすらヤンデレという文字が浮かび上がってきそう。

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