61「アンテオと有翼人」
おはようございます。
昨日の日中に60.5話を更新しています。
お気づきでない方はどうぞそちらから。
本日もよろしくお願い致します。
「アンテオ様、お覚悟を」
大剣に魔力を籠め、刀身に魔力で魔術陣を描きます。手元から剣先まで、描き終わったら大剣を地に突き立てます。
《光の檻》
魔術を発動。
突き立てた大剣から迸る無数の黒い光が、地を這うようにアンテオ様に殺到します。
あっという間にアンテオ様を包囲した黒い光が、触手を伸ばすように大地から飛び出しアンテオ様の頭上に集まりました。
「グゥァ、グルァァ」
キョロキョロと慌てるアンテオ様。容赦致しません。
「縛!!」
アンテオ様の皮膚に食い込むようにビシっと収束、そのまま地に縫い付けました。
ふぅ、なんとかなりました。
さすがのアンテオ様でも、コレは簡単には脱出できません。丸一日分の魔力を籠めていますからね。
先ほど、タロウが僕の背に手を触れて、預けていた僕の魔力を返してくれました。アレが無ければ、檻の強度は下がり、さらに今頃は魔力枯渇でヘロヘロでしたね。
「アンテオ様、落ち着かれましたか?」
『グルァァ! グゥァァァァァァ!』
全然落ち着いてませんね。どうしましょう。タロウのお陰でもう暫くは保ちますが、このまま檻で捕らえ続けるのは魔力的に無理です。
「ちっ! やっと見つけたぞ! 見つけたと思ったら、すでにヴァンに捕らえられてるだと!」
またなんか来ましたよ。
多分アレです。
最悪の展開です。
新たに現れた人は、頭上から現れました。魔法ではありません、自前の羽で飛んで来ました。
有翼人ですね。
「こんにちは、お久しぶりですね」
「ああ、久しぶりだぞ。元気だったか?」
初めて有翼人に会った夜の、三人の有翼人の一人はアギーさん、あとの二人の内の一人ですね。
「それなりに元気ですよ。貴方は?」
「あぁ、イギーも元気だぞ」
「イギーさんと仰るのですね」
「言ってなかったか? それは失礼したぞ。イギーだ。よろしくだぞ」
「ヴァンです。よろしく」
初めて会った夜と大きく異なる点があります。
「ねぇイギーさん。左腕はどうしたんですか?」
イギーさんの左腕が根元からありません。以前は確かにありましたが。
「ああ、これか。この竜にくれてやったんだぞ」
ツカツカとアンテオ様に近づくイギーさん。徐に僕の作った檻の隙間から、右手でアンテオ様を殴りました。グーで。
『ギャァァァン! グルァァァン!』
「うるさいぞ!」
「ギャァン! グルゥゥ……」
再度殴られたアンテオ様が静かに唸りました。
「この左腕はな、魔術の核に使ったんだぞ。ボクらがどうやって魔獣を使役しているか知っているか?」
「いえ、知りません」
「自分の魔力を籠めた肉体の一部にな、魔術陣を施して使役したい相手に食わすんだぞ。まぁ、普通は血液や、他には毛や爪なんかの生えてくる部分を使うんだぞ」
なるほど、ワギーさんのマヘンプクや、ナギーさんの腐ったマエンなど、そんな風にして操られていたんですね。
「ただな。見ろよこの竜。この強さだと、核もそれなりの物が必要だ。僕は左腕一本は必要だと考えたんだぞ」
「左腕一本では足りなかったということですね。アンテオ様は本領発揮には程遠いはずです。こんなに弱い筈がありません」
僕は推測にハッタリも交えて話してみました。
「ん? この竜が弱いのはコイツのせいだぞ。今は完全にボクが掌握した。次に戦えば負けるのはヴァン、オマエだぞ」
どういう事でしょうか。
「こいつらは竜の姿だと巨大化するだろう。竜化した時に食べた物は、人化した時に体の大きさに合わせて腹の中で小さくなる。そのせいで、魔術の核としたボクの左腕も小さくなってしまったから魔術の力が弱まってしまったんだ」
なるほど。竜化したせいで、また左腕がサイズアップ、魔術が完成してしまったんですか。
「オマエの魔術もなかなかだ。しかしまだまだ甘いぞ」
イギーさんが僕の作った檻に手を触れ、魔力を流し込んでいるようですね。
しかし、そんな事で破壊されるような檻ではありま――
ガシャァァン
――破壊されました。とほほ。
「な、まだまだだろ。立て! アンテオ!」
『グルゥゥゥゥァァン!』
アンテオ様がこちらへ顔を向けて口を開きます。
ブレスですか。やばいですね。
『ウワォォォン!』
ロボの霊力砲!
ドォンと音を立てて、アンテオ様の開いた口を直撃しました。
とにかくイギーさんを倒すのが先決です。口から煙を上げるアンテオ様は無視。アンテオ様の足下、イギーさんに突っ込みます。
「アンテオ!」
一歩動いただけで僕の前にアンテオ様が割り込みます。クソ!
ヒュッ――
そのアンテオ様の踏み出した膝に、今度はタロウの魔力を籠めた吹き矢が突き刺さりました。
みんなやってくれますね。
膝を撃ち抜かれたアンテオ様が、体を支え切れずに、僕の前を横切ってたたらを踏みます。
僕の目の前にはイギーさん、そのイギーさんから放たれる魔術の矢。
読んでいました。
魔力を籠めた大剣で叩き落し、イギーさんに肉迫します。
ガラ空きの胸へ大剣を突き入れ――
「アンテオ!」
――られません。
たたらを踏んだアンテオ様が闇雲に片腕を振り、ちょうど僕とイギーさんを同時に薙ぎ払い、二人まとめて吹き飛ばされました。
アンテオ様は腕を振った勢いを殺せずに、ズシィィンと大地を揺るがし地に落ちます。
同じ方向に吹き飛ぶ僕とイギーさん。
大剣を地に突き立て、吹き飛ぶ体を強引に留め、未だ宙にあるイギーさんへ大剣を振りますが、自前の羽により上空へ逃れられました。
「ダメだなこれは。アンテオの動きが鈍いんだぞ。それに連携が全く取れないんだぞ」
確かに二人の動きはちぐはぐです。このまま戦ってもなんとかなりそうな気がします。
「アンテオ! 退くぞ!」
『グルゥゥゥ……』
首を振って体を起こすアンテオ様に飛び込む一つの影。
「叔父上! 竜族の誇りを思い出させてくれる! 烈光迅雷突!」
錐揉みしながら飛び込むロップス殿。
技の名前はアレですが、余りの高速回転で刃の先端が輝いています!
『グギァァァァァァァン!!』
「叔父上! 目を覚まされ――グヌァァッ!」
アンテオ様の右眼を抉りましたが、アンテオ様の尾に弾かれたロップス殿がこちらへ飛ばされました。ロップス殿を受け止め、数歩分後退させられます。
「ロップス殿! ご無事でしたか!」
「すまんなヴァン殿、せっかく買ってもらった槍を折られてしまったわ」
『グルゥゥァァァァァ!』
ロップス殿に右眼を抉られたアンテオ様が雄叫びを上げています。
「アンテオ! うるさい!」
アンテオ様の肩に飛び乗ったイギーさんが一喝、途端に落ち着き払うアンテオ様。
「アンテオの掌握が甘い。貴様らの連携に対して僕らの連携が甘い。問題だらけだぞ。ここは退くぞ、アンテオ!」
アンテオ様がバサリと羽を広げ一打ち、瞬く間に飛び上がり、西の空へと飛び去ります。
「ヴァンよ! また会おうぅぅぅぅ……!」
タロウ達が森から出てきました。
「ドップラー効果っすか……」
どっぷらーこうか? なんでしょうかそれは。
タロウ達を飛び越す形でアンテオは飛び去ったようです。でないとドップラー効果が……。いや、ドップラーどうでも良いんすけど。
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