表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
One's Summer  作者: 新増レン
二章「思い出の箱」
PR
10/41

-9- 『神社にて、戻る』

「あれ? お出かけするの?」

「少しな。すぐに帰るよ」

「ウチも一緒に行くよ!」

「これは個人的な用事なんだ。すまんが、一人で行かせてくれ」

「ぶー、わかったよ~~」

 頬を膨らませたが、納得してくれたようだ。

 俺は外に出ると、真っ先にあの場所を目指す。

 別に夢の中の声を信じるわけじゃない、ただ、あの声を無視することも出来なかった。


 この田舎に戻ってから、不自然なほど記憶が重ならない。


 自分もここにいたはずなのに、その余韻も、何も残っていない。

 残っていたのは友人たちの自分に対する記憶と、自分の彼らに対するわずかな記憶だけだ。しかし、それすら不安を感じていた。

「ここか」

 以前やって来た森に入り、神社を目指す。すぐにその無人の空間に辿り着き、何か変化を待ってみるものの、何も起こりはしなかった。

「……あほらし」


 三十分近く待って何もないところを見ると、アレはただの夢だったらしい。

 だが、そう思っても踵を返そうとしなかった。小さな境内の中を歩き、以前感じた違和感を探ろうとした。

 かつてこの場所には、何かがあったはずだ。

 それがなんだったのか、思い出せない。


「そうだ……」


 歩き回るうちに、何かに気付いた。自分と誰かがここにアレを埋めたはずだ。

「今も、あるとしたら……」

 位置を正確に憶えているわけではないが、何もしないで境内を散歩するより十分活力的だ。

 俺はすぐにアレを探し始めた。


 タイムカプセル。


 俺が提案して、誰かと一緒に埋めに来たはずだ。そんな記憶が蘇った。

 でも、誰と?

 肝心のそこだけ抜け落ちていたが、探し出せば何かがわかるかもしれない。

 俺はただ必死に、この変な違和感の正体を突き止めたい一心で捜索を続けた。

 そして陽が傾き始めた頃、木の根元を掘るとそれらしきものが出てきた。

「あった……」

 宝箱のようなそれは、間違いなく目的のものだった。記憶がそう言っている。

 しかし、それを見た途端――頭痛が走った。

「ッ……なんだ、頭が!」

 締め付ける様に、解き放つ様に、脳が伸縮するかのような感覚の中、俺は膝をついた。

 ぐらりと世界が揺れるようで、気持ちが悪い。

「はぁ……はぁ……」

 おまけに悪寒まで走る有様だ。

 どうしようもない。

 ただ、這うように痛みに耐えた。

 すると何かが湧きでてくるように、頭の中で抜け落ちた記憶の正体が埋まっていった。

 それは、このタイムカプセルを一緒に埋めた相手が、かつていたこと。


 そして、彼女の名前が「雛町ひなまち千歳ちとせ」であることだ。


「千歳……そうだ。どうしてあいつのことを今まで、忘れていた」

 俺達の中でリーダーシップを発揮し、四人をまとめ上げていたのは彼女だ。

 普段は大人しいのだが、やる時はやるといったタイプだった。

 しかし、千歳はいない。何故だ。

 つまりそれは、彼女が死んだからだ……。

 すぐにわかった。

「――っ!」

 一気にすべてを思い出していく。

 辛い記憶も痛い記憶も、悲しい記憶も……なにもかも、この宝箱を見た瞬間に湧き出てくるのは、千歳に関する記憶ばかりだ。

 そうだ。あれはこのタイムカプセルを埋めた後だったはずだ。

 断片的に失っていた記憶が、蘇ってくる。

 俺は昔、大きな事故に巻き込まれた。一人ではない。誰かと一緒に。

 その記憶は確かにあった。しかし、誰と一緒に事故に巻き込まれたのか、その辺が曖昧だった。今、それが明らかとなる。


 一緒に巻き込まれたのは、千歳だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ