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最強の帰宅部〜曲拓人の憂鬱〜  作者: カナタ


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第参話:曲拓人は惑わされない

皆さんこんばんは。


早速ですが、皆さんは、モテの経験ありますか!?


え?私ですか?

ありますとも!


雌の蚊にやたら好かれ、

給食の時間には、やたらと銀蝿が……。


……あ?

え?

そういうことじゃない?

うん、そうですね。


多分、広義の意味で博愛主義者ってことにしておきましょうか。


(泣いてなんか、ないんだからね★)


さて。

私の話は置いておいて、拓人はどうやら今日も忙しいようです。

何に忙しいのかは……まあ、本編をご覧ください。


それでは、今日もよろしければ最後までお付き合いくださいませ。


あ、今日もどうか、楽〜な姿勢のままお読みいただければ幸いです。


 曲拓人は、街中のありとあらゆる女性を虜にする。


 ただし、それはロマンチックな意味での「モテ」ではない。


 あらゆる年齢、あらゆる属性の女性たちが、彼の圧倒的な「帰りたいという狂気」を前に勝手に狂い、勝手に狂い死んでいくという、もはや怪奇現象に近いものだった。


 放課後の校門。


 自校の女子生徒たちが、黄色い声をあげて群れをなしている。


「拓人くん! 私のために足を止めて!」


「お願い、連絡先を教えて! このままじゃ私、受験に落ちる!」


 拓人は音速のステップでその集団をすり抜けた。


「悪い、帰るから」


「冷たい! その冷徹な横顔がたまらないわぁぁぁッ!!」


 さらに一歩進むと、他校の女子高生がフェンスにしがみついて待ち構えていた。


「ねえ、噂の曲くんよね? 私と放課後のカフェで――」


「家で母親が待ってる」


「『母』発言!? 家族を大切にする一面まで完璧……好きいっ!!」


 もはや日本語を話しているだけで好意に変換されるバグが発生している。


 拓人は一切の減速をせず、時速四十キロのフォームを維持したまま市街地へと突入した。


 ◆


 商店街の角。


 少し気だるげな雰囲気をまとった、意味深な色香漂うアパレル系の女子大生が、看板にもたれかかりながら煙草(の代わりのペロペロキャンディ)をくわえていた。


「あら、高校生くん。そんなに急いで、どこ行くの? お姉さんとちょっと寄り道していかない……?」


 大人の色気で全方位を狂わせるその美貌を使い、拓人を罠に嵌めようと艶然と微笑む。


 しかし、拓人の網膜に映っているのは「この路地を抜ければ最短で横断歩道に出られる」というマップ情報だけである。


「すまない、母親から頼まれてた特売の卵が売り切れる」


「――っ……!?」


 女子大生は、その余計な飾りを一切削ぎ落とした真摯な「主婦目線の理由」に逆に射抜かれ、胸元を押さえてアスファルトに崩れ落ちた。


「なにそれ……シュールすぎて無理……尊い……」


 さらに、通勤途中のスーツ姿の女性――少し疲れたOLが、拓人のあまりの疾走感に目を奪われ、持っていたアイスコーヒーを盛大にこぼした。


「久しぶりに『生きてる』って感じの走り方見た気がする……なんか、体育祭のビデオ観て急に泣けてくるときの、あの感じ……」


 結局、彼女はその日、駅のホームで三度も反対方向の電車に乗りかけた。


 もはや社会の歯車すら狂わせる。


 そして、公園の砂場。


 幼稚園児の女の子が、砂の城を作りながら拓人の足元を見上げた。


「おにいちゃん、かっこいい! 大きくなったらヒマリのことおよめさんにして!」


「お断りする。俺は帰る」


「ふえぇん、フラれちゃったぁ……でもかっこいいー!すきぃ!」


 さらに、ベンチに腰掛けていた八十歳の老女――トメ(八十)に至っては、拓人の残像を見送りながら杖をついて震え上がった。


「おやまあ……あんな見事な足さばき、戦時中でも見たことねぇだ……。あんな若いもんに一目惚れさせられるなら、もう一回青春やり直してぇもんだねぇ……」


 幼女から老女まで。


 JK、女子大生、OL、マダム。


 あらゆる世代の女たちの情緒が、曲拓人という名の「帰宅部」の通過によって一斉に破壊され、阿鼻叫喚の渦と化していく。


 しかし、当の本人は一切の関心がない。


 彼の脳内にあるのは、ただ一点。


 ――家。


 ――冷蔵庫。


 ――そして、今日の夕飯のメニュー。


「どきやがれ、電信柱……!」


 凄まじい風圧を置き去りにし、拓人は今日も全方位の女たちの心を更地にしながら、一目散に我が家へ滑り込むのだった。

〜楽屋裏〜


次話も20時更新です。


さて。

今回は、モテ回でした。

ええ。誰が何と言おうとも、

モテ回です。


え?

……作者は?

と聞かれましても。


私の話は前書きでしましたので。

これ以上は掘らないでください。


拓人は今日も大変ですね。


女子高生に好かれ。

大学生に好かれ。

OLに好かれ。

幼女に好かれ。

果てはおばあちゃん(トメ)にまで好かれる。


……どうなってるんでしょうね、あの男。


一方、作者。

蚊と銀蝿。


この差は一体どこから生まれたのでしょうか。


まあ、いいんです。

きっと私は、虫界隈では大変な人気者なんでしょう。

そういうことにしておきます。


……誰ですか。

「それ、モテるって言わない」って言った人。


聞こえていますよ?


明日も20時。

また、あなたがうっかりこのページを開いてしまうことを願っております。


それでは。


チチンプイプイ★

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