第10話 秋が来て冬支度
実りの秋だ。
木の実は保存食に向いている。どのようなものが有るのか、森の中やブッシュの中を探した。
今日はリスさんの気分で、木登りもいとわない。
えぇっ!、うさぎちゃん、のぼれるの?
当然、気持ちだよ。きもち!
(なあんだ、登れないじゃん。あたりまえだよこのお腹が邪魔してね。
えぇ、そこじゃなくて。)
あるある。
さて、栗、くるみ、あけび、椎の実、栃の実、ヤマボウシの実、ブルーベリー、リンゴもあったよ。
リンゴは美味しい。
この後ろ脚は伊達じゃないよ。ぴょーんと跳ねると、最大5メートルは高く飛べるのだ。木の実もぴょーんとやれば手に入る。
保存食用に、たくさん取った。仕分けしながら、籠に入れて、持ち帰った。
しかし、ここで問題に気が付いた。この星には、ねずみが居るのだ。
対策を考えねば。
再び廃ビルにやってきた。前回スプーンなどがあった、厨房跡だ。
ここで、ステンレス系の網目状のものか、容器を探す。クラフトで成型すれば良いので、これはと思うものを持ち帰った。
早速、保管庫を作成する。
一人だからというのも、保存する量がどのくらいなのかわからない。ので、縦横1メートル、深さ50センチメートルで上に蓋を付けた。
よし、これでネズ候対策はばっちりだ。
この世界にもネズ候様がいる。
人類が住むところには、ネズ候とゴキブリには事欠かない。
この世界のネズ候は、2種類居る。体長30センチメートルほどで子犬ぐらいのものと、もっと小さくて体長5センチメートルぐらいのもの。それに角がある。結構な攻撃力を持っている。ただし、肉はうまい。幸いなことに病原菌は持っていない。
ゴキブリは、体長3センチメートルほどで、黒光りでカサコソと忙しく動く。
この世界にもいるのだ。ひょっとしたら宇宙で一番繁栄しているのこいつか!。
ゴッキーは大嫌いだ。
見かけ次第、鉄槌を下すのだ。
取ってきた木の実などを、次々と入れてゆく。
リスになった気分だ。
干し肉や干し魚も入れてっ!と思ったが、木の実に匂いが移ったら美味しくなくなる。
干物用には、別の保管庫を用意することにした。
サバイバルの基本。まず、食料の調達だよ。
冬が来た
「寒いよー・・・・」
僕は、もともと全身白い毛に覆われているが、アンダーコートが薄いので、寒いのはたまらん。
ウサギの皮をつなぎ合わせて、防寒着を作った。毛を挟む形で厚さと保温機能をアップさせた。靴も同様に暖かくした。
耳はどうしよう?。このままでは凍ってしまうよ。
長い耳がすっぽり入る帽子を作ろうか、それとも耳だけ靴下のようなものでカバーするとか。
そうだ、耳の形をした帽子を作れば良いんだ。
外を窺うと雪が降ってきた。
手で受けると、さらさらの雪だ。明日の朝が楽しみだね。
うぅぅ・・。寒いので、もう寝よう。
朝起きたら、付近一帯が真っ白で20センチメートルほど雪が積もっていた。
サクサクと雪を踏みしめながらも、今日も散歩を欠かせない。
雪には、うさぎの足跡が点々と残されており、シロのものと思われる大きな足跡もあった。
これから、僕の足跡も付けるよ。
サクサク。
遠くまで見渡せる、青の道にやってきた。
白い世界は、遠く海の方まで続いている。東の方はまだ緑色の部分が見える。
吐く息も白い。そして、いつの間にか横にシロが立っていた。
これは、横から見たら、とてもいい被写体だ。
”勇者とその従者シロ”。恥ずかしい・・・。
しばらく、景色を堪能して家に帰った。
雪が深くて、遠くには出かけられない。野菜も育たない。
ウサギの罠を作ったり、雪の下から野菜を掘り出して、塩漬けを試してみたりと、毎日を過ごした。
シロが時々大きな獲物を咥えてきては、料理しろと言ってくる。
シロの気持ちは、わかるよ。バーベキューは美味しいよ。塩をフルだけ、だけどね
小屋の前の雪を横に除けて、バーベキュー用の網と土台を寄せてくる。そして、ぶつ切りにした肉を置いてゆく。野菜も忘れないよ。
塩をふって、さあぁ食べごろだよ。
シロ用の器に、肉を置くと、ふがふがと嬉しそうに食べた。
冬の一日は長い。
最近はシロが我が家に常駐している。
暖炉の火を見つめてまどろんでいる。まあいいか。
ふっと、昔読んだ小説に『内職』と言うものが有った。
家の中でできるもの。話の中では、籠や人形、敷物などが出てきた。
さて、クラフトの能力でやってみよう。後々近隣の村との交易に使えそうな物を。何といっても、女性向けのアクセサリが良い儲けになるが、村人向けは?だ。
廃ビルで拾った銀や金。それと川で拾ったルビーなどで、イヤリングやネックレスを作って行く。もと商人の僕は、その手の意匠知識は豊富だ。
これらのアクセサリーは、後に交易品として高価で取引された。
村人用に、籠やトートバッグ、鍬、鎌などを作ってみた。鍬や鎌は、きっと木製のはずだから、鉄製のこれらも高値で取引できそうだ。材料はタダ。加工費もタダ。利益率100%だよ。
冬の夜は長い。
やることがない。
内職ばかりじゃ飽きるよ。
ひいらぎの魔導書も何度も読み返している。
シロを相手に自慢話を始めると、シロが大きなあくびを連発する。
(もう、聞き飽きた)
寝よう。