side1.35...Last
陛下、王妃様、ジョエル王子、そして俺は
ぎょっとしてステファン王子に視線を向けた。
皆の視線を一斉に浴びたステファン王子は、ひっくひっくと泣きながら、ジョエル王子の横に立った。
「ス、ステファン?」
「あ、あにうえぇぇえ」
「なんだ!?いきなりどうした!?」
「私は!頭が残念で、執務もマトモに出来なくて、こないだまで全く真実の愛というものを理解していなかった兄上が大好きですから!」
そうだ・・・ステファン王子は無意識の毒舌だった。
「・・・お、おう・・・ありがとう?」
「学院で演劇を学んだ末に、舞台の仕事につけなくても!役者になれた所で大根役者になろうと!私は兄上が大好」
「ステフ、わかった。わかったからそれ以上抉らないでくれ・・・」
ステファン王子の『駄目な兄上大好き』発言で、部屋の空気が一気にいたたまれなくなった。
俺は生暖かい目で無関係を装っていたが、陛下にちょっと来いと手で合図された。
そして耳元で
「テイラー。お前は明日からこの毒舌を何とかしてくれ」
また面倒くさい指令を受けてしまった・・・。
視界の端ではステファン王子がジョエル王子に縋り付いて泣きながら、延々と毒を吐いている。
この一連の出来事で、一番迷惑を被ったのは俺なのではないかと、心から思った。
マジで。
-----------------------------
その後。
無事にステファンの立太子の儀が行われ、ジョエルはそれを見届けてからアスガールへと旅立った。
フィリップ王太子と結婚したセラフィーヌは王太子妃となり、二年後には王子を出産。
その後も、王女二人、王子一人を出産した。
夫婦仲もすこぶる良く、貴族、平民、皆に慕われた。
ジョエルは演劇の学院で、脚本家の勉強をして卒業。
卒業後は、ダメ過ぎる王子をネタにしたシリーズものの脚本で人気を博し、舞台は各国で公演された。
その舞台のヒロイン役は見目麗しい公爵家の婿だったそうだ。
王太子となったステファンはステファンが18になった年にプリシラと結婚。
王太子になった当初は、よく毒舌で周りを凍てつかせていたが、その毒舌もやがてなりを潜めた。
その王太子の側には常に疲れた顔の侍従がいたらしい。
短編のサイドストーリーとして書き始めたのですが、予想していた3倍くらいの長さになってしまいました。
最後まで読んでくださってありがとうございました!!




