ハロウィンパーティー3 (吸血姫と従者の祭典 フェイズ3)
「トリックオアトリート」
「ふふ、素敵な小悪魔さんにいたずらをされたら困りますからね。これをどうぞ」
悪魔の角をつけた小さい子供に話しかけられた紅が満面の笑顔を浮かべてお菓子を渡している。なんだかんだ子供好きなんだよなぁ……俺は微笑ましい気持ちで見ていると子供が無邪気な質問をした。
「わーい、吸血鬼のお姉ちゃんありがとう。二人は夫婦なのー? 二人とも衣装が似てて仲良しさんだね」
「夫婦って言われちゃいましたね……私たちの関係ははたから見るとどうみえているんでしょうね」
紅がちょっと顔を赤くしながら聞いてきたので俺は彼女に期待に答えるように返事をする。付き合いも長くなってきたからな。こういう時は本音を言えばいいんだ。
「姫と騎士であり、恋人かな」
「馬鹿……子供の前で何をいっているのよ。でも、いつかそうなれたら良いわね」
俺の言葉は正解だったらしく、紅はにやにやと笑った顔を隠すように、顔をうつむいた。ちょっと動揺しているのか口調も素に戻っている。やはり可愛い……
「あいつらどこでもいちゃついてんな……」
「ねえ、真広……私たちはまわりからどんな風に見えてるのかしらね」
紅と同様に赤坂さんが顔を真っ赤にして安心院に問いかけるがあいつは相も変わらず空気の読めない発言をするのであった。
「鬼舞辻無惨と部下の鬼じゃねーかな」
「そこはカップルって言ってよ」
「これ、俺が悪いのか!? だから俺は衛宮士郎と遠坂凛で行こうっていっただろ!!」
「だって……」
俺達が子供に手を振っていると後ろでちょっとしたもめているようだ。安心院のやる気のない返事に赤坂さんが不満そうな顔をしている。俺と紅は二人で顔を合わせて二人に話しかける。赤坂さんは安心院がどれだけ好きなのかを知っているし、安心院もまんざらではないのも知っている。だから二人には仲良くなってやっていてほしいのだ。
「せっかくだし、屋台とかあるみたいだから行こうぜ」
「そうですよ、そういえばお二人にはまだ渡してませんでしたね。このチョコは私の手作り何です。お二人も食べてください」
「ああ、ありがとう……」
「悪いわね」
俺達が声をかけると安心院と赤坂さんは助かったとばかりにこちらへとやってきた。やっぱりさ、付き合い始めって色々あるよな。
「よっしゃ、遊ぶぞ!! 輪投げあるじゃん。勝負しようぜ!! 俺と赤坂と如月と田中さんのペアな。お前バレー部だからこういうの得意じゃないか?」
「いや、バレー要素がかけらもないんだけど……でも、がんばるわね」
「俺達も行くか。闇の眷属の力をみせてやろう。幸子大丈夫か? 輪投げのわっか持てる?」
「舐めてますか? さすがの私だって持てますし今は吸血鬼の力がありますからね。余裕ですよ」
安心院の言葉に俺達は続く。なんだかんだ頼られて赤坂さんもまんざらではないようだ。俺と紅もそれについていく。輪投げの景品はたぶん商店街のお店のあまりもの程度だとは思うが、中々いい。綺麗めなアクセサリーとか大きいぬいぐるみにゲーム機がある。ふと裾が引っ張られたかと思うと蝙蝠の可愛らしいぬいぐるみを紅が指さしていた。
「ねえ…神矢」
「ああ、あれが欲しいんだな。安心院よ、とりあえず景品を取った方の勝ちでいいな?」
「もちろんだ、勝った方がそこのタコ焼きをおごりな」
「じゃあ、私からやるわね」
そういって赤坂さんが投げると驚くほど綺麗に棒へと入っていった。すっげえぇぇぇぇぇ。紅の方はどうだろうと思っていると、わっかは明後日の方向へと飛んでいった。やっぱりへっぽこだな……と思っていると頬を膨らましながらこちらをにらんできた。やっべぇ思考が読まれた。
「じゃあ、神矢がやってみてくださいよ」
「任せてくださいお姫様」
紅からわっかをもらった俺はさっと狙いを定める。ふっ、屋台などは大好きなのでこういうゲームは熟知しているのだ。
「我が名に従え欲望の円環」
「この男無駄に器用ね……」
俺が投げたリングも赤坂さん同様綺麗に棒に入る。するとなぜか紅はちょっと悔しそうに頬を膨らませた。
「全然入らない!! くっそ、お前らなんでこんなにうまいんだよ!!」
「安心院……」
「ひぇっ!? 無惨様、がんばりますから俺を殺さないで!!」
「別に怒ってないわよ……別に殺さないし……こうやるのよ」
無様な姿を見せている安心院に赤坂さんはため息をつきながら近づく。それをみて安心院は情けない悲鳴を上げていた。安心院はかんちがいをしているが、赤坂さんは安心院を処刑しようとしているんじゃない。いや、日常生活で彼氏を処刑ってあり得ないんだけどな。
「ねえ、あれって……」
「ああ、俺達もはたからみるとこうみえるのかな……」
俺と紅が見守っていると赤坂さんが安心の手をとって投げ方を教えている。その手は少し震えながらも安心院の手に触れていて……ああ、赤坂さん緊張しているんだなぁ思う。
「安心院こうやるのよ。力はそんなに入れないで」
「うーん、難しいな……あ、でも入った!! ありがとう赤坂」
「別に負けたくないだけだから……」
赤坂さんの指導による輪投げで無事棒にはいったのをみた安心院が、満面の笑みを浮かべると赤坂さんは顔を真っ赤にしてそらしてしまう。くっそ、可愛いけど、恰好が鬼舞辻無惨と部下の鬼なんだよな。でも、二人はもう大丈夫そうだ。
「あ、紅これやるよ」
「え、いいの?」
俺が景品の蝙蝠のぬいぐるみを渡すと紅は本当に嬉しそうに笑ってくれた。俺達はちょっといい感じになりながら、出ようとするとへんなこえが聞こえる。
「リア充(鬼)を許すな!! 生殺与奪の権を他人に握らせるな!!」
「そうだそうだー、ハロウィンだからってみんなイチャイチャしてずるいぞー!!」
聞き覚えがある声が響いてきた。