ハロウィンパーティー1 (吸血姫と従者の祭典 フェイズ1)
ハロウィンに間に合わなかった……
「なあ、如月、町内会のハロウィンパーティーに参加しないか?」
始まりは安心院のその一言だった。俺が紅からのラインをみてにやにやしているといきなりそんなことを言い始めたのだ。ちなみに紅のラインは彼女の家でのハロウィンデートの時にどんな服がいいかという質問だった。吸血鬼っぽい衣装に小悪魔っぽい衣装、蝙蝠っぽい衣装、王道な魔女っぽい衣装である。待ってほしい……くっそ、全部可愛い!! はにかんだ笑顔と言い、それぞれそのキャラっぽいポーズに、そのキャラの細かい設定なども書いておりすごいテンションが上がる。全部似合うんだが……これを選ぶのは中々難問じゃないか?
「如月聞いてるのか?」
「うーん、よくわからないけどいいんじゃないか?」
「オッケー、赤坂と話していて二人だとハロウィンパーティーはちょっと寂しいかなって思っていたんだ。助かるわ。あとで詳細も送るからな」
紅への返信で色々考えていた俺はなんかうるさい安心院へ適当に返事をするのだった。俺はそのことを後悔する。でもさ、しょうがなくないか? 俺達の様な黒竜の騎士や黄泉の魔女である闇の人間にはハロウィンは特別なんだよ。
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「なあ、紅そろそろ機嫌を直してほしいだが……」
「……」
ハロウィンパーティーの当日、俺は紅の家まで迎えに来たのだが彼女は機嫌悪そうに唇を尖らせていた。なんでだろう。ちなみにハロウィンパーティーと言っても、そんな大げさなものではなく、ハロウィンっぽいコスプレをして街の商店街を歩く程度である。ちょっとした文化祭の延長みたいな感じで楽しいなとおもっていたんだが……もちろん、ハロウィンの当日はちゃんと二人で一緒に過ごすという約束はしている。
「ハロウィンパーティーはそもそも古代ケルト民族のドゥルイド教で行われていたサウィン祭が起源よ。コスプレして騒ぐだけのイベントじゃないの。なのに渋谷といい、ただコスプレして騒ぐだけなんて……みんな堕落しているわ」
「ああ、だが、そんな堕落した奴らに本物を見せて正しいハロウィンを教えてやるのも黄泉の魔女と、魔女の騎士の役目じゃないか?」
「そうね……あなたの言う通りよ。本当はね、私だって、みんなで騒ぐのが嫌いなわけじゃないのよ。クリスマスの様にこういうイベントが大衆化するにつれて意味合いが変わってるのはわかってるしね……」
ならば彼女はなんで機嫌が悪いのだろう。俺は彼女の言葉を黙って待つと、少し恥ずかしそうにもじもじとしながら口を開いた。
「今回のあなたの衣装は私が用意したでしょう。吸血鬼たる私の守護者にふさわしい騎士の姿よ。絶対似合うに決まってるの。そんな特別な神矢を他の人に見られるとちょっと複雑なのよ」
「え? そんな事で怒っていたのか……」
予想外の返答に俺は思わず間の抜けた声を上げてしまった。もしかして、変な恰好でもさせられるんだろうか。でも、紅はそういう冗談はしないはずだ。その姿が不満だったのか紅は俺を睨みつけて言った。
「そんなことって何よ!! それで、他の女の子があなたに惚れたらどうするのよ!! あなたは私の騎士なんだから、浮気とかしたら許さないんだからね」
俺はため息をつくと、ありえないことをいう紅の手を俺は握りしめる。彼女の手が一瞬抵抗するかのようにびくっとしたがやがて握り返してきた。
「何を言ってるんだよ、俺がお前以外に心奪われるはずないだろ。俺はもうお前のものだっていう契約をしたんだからさ。むしろ俺の方が心配だよ。お前はその……可愛いからさ……」
途中で言っていて恥ずかしくなってので俺は言葉を濁したが、言いたいことは伝わったらしく、彼女は顔を真っ赤にしながら俺の手を強く握りしめてくる。
「さっきの言葉をそのまま返すわ。私があなた以外に心惹かれるわけないでしょう」
そう言って俺達は会場へと向かうのであった。ちなみにそんなに心配するならば、仮装の手抜きをすればいいんじゃないかって? こういうのは本気でやるから楽しいんだよ。
というわけで番外編です。
話の途中なのにすいません……でも厨二的にこのイベントは外せないかなって……
また新作を始めました。幼馴染とのいちゃらぶものです。よろしくお願いいたします。
『催眠ごっこで結ばれるラブコメ ~初恋の幼なじみの催眠術にかかった振りしたらムチャクチャ甘えてくるんだけど』
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