49.ホワイトデー2 <リア充達の戯れ フェイズ2>
「よっしゃー、取れた!!」
「ふーん、よかったわね。あ、このキャラのスキン可愛らしいわね」
昼休みの部室に俺の歓声が響く、最近はまっているゲームのホワイトデースキンが取れたのだ。紅も少し興味があるのか、興味深そうに俺のスマホ画面を見ている。
「そうだろ、俺の推しキャラなんだけどホワイトデーイベント限定スキンなんだよ。このキャラは普段は闇の力を使う事もあって黒い服しかきないんだけど、このイベントだけはホワイトデーにちなんだ、白い服なんだ」
「神矢……早口なオタクみたいできもいわよ……でも、あんたこういうのが好きなの? なんかイメージがちがうんだけど……」
「ああ、普段とのギャップってよいよな」
「ふーん。白い服ねぇ……」
俺の言葉に紅は何かを考えながらつぶやく。あれ、もしかしてアニメキャラに嫉妬とかしていないよな? 確かに今回の衣装は白の清楚っぽいワンピースであり、黒や赤を好む紅の私服とは対極である。そしてこのキャラも普段はこんな服は着ないのだがホワイトデーのために特別に着るという背景があるのだ。
「そうだ……よかったら、今日の放課後プラネタリウムでも観に行かない?」
「悪い今日はちょっと予定があるんだ」
「あら、珍しいわね、、新しいプログラムだったから観にいきたかったんだけど……一人でいくのもなんだし、朱でも誘おうかしら……」
「ちょっと習い事をはじめてな……悪い、また誘ってくれ」
「へぇー習い事をって何を習ってるの? 魔女学なら私が教えられるけど?」
紅お手製のお弁当を食べ終わり雑談を開始すると、デートに誘われた。くっそなんでよりによって今日なんだよ。今日は例の料理教室である。紅にはサプライズなので言うわけにはいかない。というかさ……
「え、魔女学って何だ?」
「前の学校の部活で学んでたのよ。聞きたい?」
「聞きたい!!」
「仕方ないわねぇ……」
そういうと彼女は嬉しそうにしゃべり始めた。どんな部活だよ。むっちゃ面白そうじゃんと思いつつ俺は食いついた。魔女の騎士としては勉強すべきだろうし、あと普通に興味ある。そうして俺は紅から魔女の歴史に関して学ぶのであった。神矢の魔力が5上がった。なんてな。
放課後になり俺たちはカフェの近くのレンタルスぺース前にいた。沖田も誘ったのだが、用事があると断られてしまったのだ。そのかわりにといってだが一緒にきた友人に声をかける。
「赤坂さんにはばれていないだろうな? 一応サプライズなんだからな」
「ああ、もちろんだ。俺もあいつを喜ばせてあげたいからな」
安心院が当然とばかりに答える。こいつも赤坂さんに手作りチョコをもらったらしく、そのお礼を考えていたので声をかけたのだ。ちなみに赤坂さんのチョコは美味しかったが食べた後なぜか寝てしまったらしい。起きたら服が変な風になっていたらしいが何がおきたんだろうな? そこらへんはつっこむのがこわかったので特に聞かないことにした。
「それでははじめるわよ」
講師としてきたのはやたら、ごついがおねえっぽいしゃべり方の人だ。一条に聞いたところ彼があのカフェのケーキや焼き菓子を作っているらしい。安心院は不安がっていたが俺は知っている。ごつくておねえっぽいしゃべり方の人は強キャラに決まっているのだ。現にカフェのケーキは無茶苦茶うまいからな。そもそも見た目と料理の味は関係ない。
俺たちは講師の言うとおりに作る。彼? が目の前で実演してくれるのだが、いざ自分でやると全然うまくいかない。てか、小麦粉かき混ぜるのなんであんなにスムーズにいくの? おかしくない?
「料理って結構大変なんだな……いっそのこと適当に買ったクッキーくだいて手作りって言い張るか……」
俺と同様に苦戦している安心院がクズみたいなことを抜かす。しかし、自分で料理をしてみると紅は普段色々頑張ってくれていたんだなと思う。彼女は確かに料理がうまいが、それも練習した結果だし、いくら上達してもめんどくさいものはめんどくさいだろう。俺は日ごろのお弁当だったり、ハロウィンだったり、この前のバレンタインデーを思い出して改めて感謝をする。だからせめて、お返しくらいはがんばりたい。
「あらら、二人とも大丈夫?」
俺たちを見かねたのか講師の人が声をかけてきた。普段料理をしないこともあってか、ほかの人たちに比べてもペースが遅いので迷惑をかけているのかもしれない。
「すいません、俺たちのせいで授業が遅れてしまって……」
「ううん、いいのよ、できないことを習いに来てるんでしょう? 愛する人のために頑張る姿はかっこいいと思うわよ」
講師の人がウインクをして微笑む。ちょっとびっくりした。そして再度俺たちに丁寧に教えてくれる。
「二人の気持ち伝わるといいわね。あなたたちが渡す人はたぶん味が悪くても喜んでくれるでしょうけど、味が良ければもっと喜んでくれるわよ。ホワイトデーはね、ただプレゼントを返す日じゃないの、感謝を伝える日でもあるのよ」
「そうですよね、よっしゃ、俺の真の力をみせてやる!!」
「そうだな……ズルはいけないよな」
そうして俺たちは講師のおじさんに手取り足取り教えてもらってようやく完成にこぎつけた。そのパウンドケーキは確かに形はいびつだったけどすっごい美味しく感じたものだ。
「これは今日のレシピよ、持っていきなさい。あとあなたたちと同じ学校に私の娘がいるから、わからないことがあったら聞きなさい。あの子には話は通しておくから聞きにいくといいわ」
『なにからなにまでありがとうございます』
「うふふ、青春ね」
俺たちは声を合わせてお礼をいって頭を下げる、そうして俺帰宅する。帰宅しながら二人でかならずもっとおいしいものを作って見せると誓った。これからは自主練あるのみだ。魔女を陥落させる料理をつくってみせよう。
ホワイトデー編その二です。さあ、神矢たちは無事に美味しい料理をつくれるでしょうか?
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