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向日葵の見上げる頃①

登場人物

月渡つきわた 咲弥さくや 主人公

桜木さくらぎ まい 現生徒会長

水上みなかみ 蓮乃はすの 咲夜のルームメイト

日向菊ひなぎく あおい 生徒会書記 舞の親友

彩木さいき かえで 演劇部副部長 椛と双子

彩木さいき もみじ 演劇部部長 楓と双子

巻多まきた 永華えいか 生徒会副会長

鷲黒わしぐろ 朱音あかね 元生徒会長

月渡つきわた 照海てるみ 咲弥の姉

金木かねき 根子ねこ 生徒会会計

「行ってくるね」


朗読劇の初日の練習日、体操着という指定だったので着替えて気合いを入れて自室のドアに手をかける。


「いてらさい」


ずっと絵を書き続けながらの蓮乃の気の無い見送りを背に受けた。


楓先輩は既に演劇部の準備等で先に部屋を出ている。


まだ学園に入ってクラスメイトと話したりはするけど、他のクラスの人とはあまり交流を持ったことは無い。


ドキドキと練習が行われる講堂に向かう最中に不安と緊張がマーブル模様を作ってお腹でグルグルする。


でも、いつまでもそんな弱いままではいられない。


もう、両親も姉さんもいないのだから。


それに、舞のことを静さんからお願いされたんだから。


蘇るのは夕陽の中でぐしゃぐしゃの顔を作った舞の顔。


「ふぅ〜、落ち着け〜落ち着け〜……」


講堂に入る前にドアの前で深呼吸をする。


「あら、子羊さん、ドアの前で決意を固めているようだけど、大丈夫かしら?」


「ひゃっ……!!」


ビクッ!!


肩に手を掛けられて、舞の声でそんな事を言われた日にはあの日がフラッシュバックして身構えてしまう。


「あら、そんなに驚いてどうしたの?」


「い、いえ……」


振り返るととてもニコニコしてる生徒会長様の姿があった。


全部分かってやってる顔だ。


「後ろから手をかけられて話しかけられたら誰でも驚くでしょうに」


葵先輩も横にいて、ため息をついてる。


「大丈夫?」


葵先輩が心配そうに顔を覗き込んでくる。


「は、はい、大丈夫です……」


動悸はまだ治まらないけど。


「あら、会長さん、咲弥ちゃんを虐めちゃダ〜メ、ですよ」


後ろからふわりと抱きしめられると共に頭に柔らかな重量がかかる。


「も、椛先輩。別に虐めてなんかいませんよ」


あ、椛先輩か。


「驚かしてはいましたけど」


「あ、葵ちゃん……!?」


「あらあら、イジワル会長さんですか?」


「と、とりあえず中に入れてください……」


何か不穏な空気を察してとりあえず逃げよう試みる。


「はーい、じゃあ咲弥ちゃんはこっちね」


「ちょ、歩きづらいですよ」


後ろから抱きつかれたまま誘導される。


「ほら、私達も座るわよ」


「うん」


何か視線が刺さってる気がする。


桜木会長だ、椛先輩に後ろからとか羨ましい、というヒソヒソ声が渦巻く。


カオスかな。


目立たず過ごしたいのに……。



その後、演劇部主導で演劇部でもやっている基礎練習をする。


何人かの班に分けられて使われていない教室に別れさせられる。


夏休みなのでほとんどの教室は使われていないが、机と椅子は教室の後ろ側に既に寄せられていた。


部活で使う場合は使って戻しておくこと、ということらしいが、今回は演劇部の人が先に下げておいてくれたらしい。


その代わり、終わった時は全員で戻す、とのこと。


「腹式呼吸は大きく吸って少しで良いので、一定で長く吐いてください」


「すぅー、ふぅーーーー〜〜〜〜」


「息が震えるのを抑えてください」


ストレッチを軽く行った後、窓の方を向いて横一列に並んで、腹式呼吸の練習。


む、難しい。


今まで意識してやったことがないのでイマイチ感覚が分からない。


息を吸えば胸が膨らむものじゃない?


周りの子達も同じ素人組なので息が長く続かない。


演劇部の新入生の子達は普段からやっているからか、ボクよりは長く息を吐き続けてる。


この差は何?


うーん……。


「はい、もう一度、吸ってー」


「すぅー……」


「ストップ」


「お手伝い下さる方はそのまま少し待っててね。フォローお願い。できてる方だけ続けます。」


「じゃあ咲弥姫は私が見るかな」


椛先輩の横にいた楓先輩が歩み寄ってくる。


手伝いの人は少なからず楓先輩や椛先輩目当てだったりするんだろうから、周りの視線が痛くなるので辞めて頂きたい。


言いたいけど、息を吸って止めてるので話せない。


案の定、視線が左右から突き刺さるけど、他の子も別の先輩部員が着くと視線は無くなった。


「ふむふむ」


「…………?」


「ほー、なるほど」


「…………っ!?」


楓先輩はボクの周りをクルクルとしている。


そんな事より、なにか教えてくださいよ!息が続かないよ!


アピールするけど無視される。


もう、限界……!


「プはっ……」


「そのまま出し切って」


「ふぐっ」


息を吐いた途端、後ろ抱きすくめられるようにお腹を圧迫される。


とりあえず言われるがままに息を吐けるだけ吐く。


「吐ききったら今度は鼻からゆっくり息を吸い込んで」


鼻から、ゆっくり……。


「そうそう、上手いよ」


イケメン風ボイスで耳元で囁かないでください!


くすぐったい……!


「ほら、私の腕をお腹が押し返してるの分かる?そのまま目一杯息を吸いながら私の腕を押し返して」


言われたことを意識して息を吸っていく。


「うん、咲夜姫が私との子供を身篭っていくようだ」


何言ってんだ、この人。


「真面目にやりなさい」


椛先輩が楓先輩を小突く。


「ちぇっ……」


「はい、ではお手伝いの皆さんも今の指導を意識しながら、もう一度やっていきましょう」


「すぅ……ふぅーーーーーー」


お、お腹が膨らむという感覚が何となく分かってきた。


そして息も吐くのではなく、お腹を凹ましていくようにすれば肺も苦しくなりにくい。


なるほど、腹式呼吸ってこういうことだったんだ。



ひとしきり腹式呼吸を練習し、希望の役を考慮しながら役を回しつつ何回か台本を読み合わせた。


その後、1度休憩ということで、教室を出てトイレに向かう。


まだ呂律が上手く回らず噛み噛みになっちゃうな〜。


用を足した後手を洗い、鏡に映る自分の顔を眺めながら口を開けて頬をムニムニして解してみる。


演劇部の人の声はスッとハッキリ聞こえるのに何が違うんだろう。


「あら、何してるの?変顔の練習?」


椛先輩が個室から出てきて隣に並んで手を洗う。


なんで変顔の練習?


「いえ、噛み噛みになっちゃうから解してみてます」


「フフッ、面白いことしてるのね」


「そうですか?」


「えいっ」


「ふぁ、はひふふんへふは(な、なにするんですか)?」


手を拭いていたと思ったら、両手で頬を掴まれた。


「あのね、口を大きく開く、て言うけどね。顎を動かす訳じゃないの」


頬を掴んでいる手を上に上げる。


「こうやって、口角をあげるように意識するのよ。そうすると、口も自然と開くから」


「はふほほ(なるほど)」


口角を意識するのか。よくスマーイル、て姉さんも言ってたけどそういう事だったのかな。


それはそれとして、


『ムニムニムニムニ』


いつまで頬をつままれてれば良いのだろうか。


「はほ、ほひひへふはひ(あの、椛先輩)……」


「あ、ご、ごめんなさい。あまりにも感触が良くて……!」


やっと頬が解放されて、触れられていたところがちょっとヒンヤリした。




口角を上げる、口角を上げる、そして腹式呼吸。


その後の練習はとにかくその事を意識した。


口角をあげると確かに発音とかもだいぶしやすくなった。


椛先輩に今度改めてお礼を言わないと。


朗読劇の練習後はそのまま演劇部は演劇部の部活動があるみたいで、そのまま帰されたから。


「ただいま〜」


「おかえ……り?」


蓮乃がこちらを振り返って首を傾げている。


「どうかした?」


「なんで、そんなニコニコしてるの?」


「え?」


ドア横の鏡を見ると口角が上がったままになっていた。


これはこれで頬が固まっちゃったかー。


「いや、朗読劇の練習で口角を上げた方が良いって教えて貰って、意識してたらそのままかたまっちゃったみたいでーー」


とりあえず一息ついて頬をほぐそうとしたら、


『カシャカシャカシャカシャ』


「なんで写真撮ってるの?」


しかも連射で。


「珍しいから」


「やめてよー!」


「もう遅い」


「消してー!」


蓮乃とスマホの取り合いの攻防が繰り広げるが、結局こちらが泣く泣く引き下がるしかなかった。


その後、頬も解して夏休みの宿題をしていると、


「ただいま、子猫ちゃん達!」


颯爽と帰ってきた楓先輩をおかえりなさい、と2人で迎える。


「見たまえ、蓮乃、このキュートな写真を」


「ん?」


今日は抱きつきアタックではなく、珍しくスマホをかざしながら蓮乃に歩み寄る。


「ほほぅ、これはこれは」


蓮乃は意味深に写真を見ながら頷く。


「何の写真ですか?」


「姫には秘密さっ」


覗こうとしたら背の高さを活かして隠される。


く、この大きい胸も邪魔して余計に掲げられた手が遠く感じる。


「なんで、です、かー?」


ぴょんぴょんジャンプするが華麗に躱された。


「こちらも良いショットありますぜ、旦那」


蓮乃が何故か芝居がかった台詞を言ってスマホを楓先輩に見せる。


「ほほぅ、お主もなかなかやりよる。そのままの状態で戻ってきちゃったのかー、可愛すぎる……!」


「うん?」


何となく話が読めた。


「あんたもかーーー!?」


「いや、私は直接教えてたから撮っていないよ。瞳に焼き付けてはいたけど」


瞳に焼き付けられるのもそれはそれで嫌だけど。


「じゃあ、誰が?」


「椛から送られてきたのさ」


「椛先輩ー!!!」


椛先輩いつの間に……!


いつ撮られてたのか全然気づかなかった。


この時は知らなかったけど、まだボクの写真がもう1人回ってたことは後日知ることになった……。

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